22.決闘
「やぁ、結局逃げずに来たんだね」
朝、中庭に向かうと瀬川に出迎えられる。いや……ここ本当に中庭か?
俺の知ってる中庭は静かで落ち着いた雰囲気な場所なのに今日の中庭は多くの観客が埋め尽くしている。しかも俺の知っている中庭には赤いカーペットなんて敷かれていなかった。
さらに言えば玉座なんて存在しなかった。
何で王様まで見に来てんだよ。仕事してろよ。
「逃げるわけねぇだろ
ゆきがかかってんだ。勝たせてもらう」
ゆきは王様の隣に座らされていた。心配そうな目で俺を見ている。
待ってろ、すぐに開放してやるからな。
俺がそう言うと観客達から爆笑が巻き起こる。明らかに俺に勝ち目はないと思っているんだろう。
まあ俺のステータスは割れてる上、レベルは1のままだからな。俺のステータスは完璧に平均。ミスターアベレージ。
そんな実力で剣のみとはいえ勇者と戦うなんて無謀と思われているのだろう
「ははっ、それは怖いな
どうぞお手柔らかに頼むよ」
瀬川がそう言うとさらに笑い声が強くなる。
何が面白いのか。そんなに俺がボコボコにされるのが楽しいのか。
絶対やられてやるもんか。
「静まれ!」
王様がそう叫ぶと、観客達の笑い声がピタリと止まる。
「それでは決闘のルールを説明する!
この決闘はワシが立ち会う。
武器は木剣のみ、魔法の使用は禁止、
どちらかが気絶するか負けを認めるまで試合は続行される。」
心を落ち着ける
大丈夫だ……今までの修行を思い出せ
おっさん、俺に勇気をくれ。
観客を見回すがおっさんは居ない。
薄情者め。俺が勝つのを信じてるってか?
似合わねぇっての。
「敗者は二度と勇者カミシロに関わらないこと。お互い正々堂々勝負するように」
大丈夫だ。何のために修行してきた……
ゆきの方を見る。心配するような表情で俺の方を見ている。大丈夫だゆき。待ってろ。
今全力を出さなきゃ何の意味もない
体が砕けようと心が折られようと……勝つ!
「では……始めっ!」
王様の始まりの合図と同時に、俺は駆け出しつつ、瀬川に向かって横薙ぎの一閃を繰り出す
しかし瀬川はそれを予見していたかのように、俺の剣を軽々と弾いてしまう
「なっ……」
「ふふ……君は知らないだろうから教えてあげるよ。レベルが上がるとね、すべての身体能力が上がるんだ。例えば……反射神経とかもね!」
そこから瀬川が俺の頭に剣を振り下ろす。
型も何もあったものじゃないが、凄まじい速さで剣が振り下ろされてくる。
速い……けど、
「お……るぁ!」
おっさんほどじゃない! この程度なら対応できる!
俺は瀬川の剣を敢えて自分の剣で受け止める。すごい力だ、受け止めるだけで全身の力が削がれる。が、勢いを殺せれば問題はない。剣を滑らせ、相手の剣を受け流し、その勢いを利用してがら相手の胴体に向かって攻撃を繰り出す。
剣道の返し胴と呼ばれる技だ。
攻撃は見事命中、瀬川は衝撃で1メートルほど吹き飛ぶ。
その隙を逃すまいと俺は瀬川に追撃を加えようと瀬川との距離を詰める。観客から悲鳴が聞こえてきた。いける!
その瞬間俺は勝利を確信した。
が、次の瞬間嫌な予感がした。
第六感というやつだろう、根拠など何もないけどこのままではまずいと本能が伝えている。おっさんとの戦いで嫌という程思い知ったこの感覚を信じ、追撃を止める。
俺は咄嗟に立ち止まり距離を取る。すると瀬川が立ち上がり、袈裟懸けに剣を振り下ろす。
瀬川の剣は先ほど俺が居た空間を切り裂いた。
あっぶな……あと数センチで当たってた。
先ほどまでとは速度が違う。速さだけならおっさんの剣をも上回る速さだ。
そして立ち上がった瀬川は薄い光に包まれていた。
あの光……俺のボコボコにした時の身体強化魔法か! 汚ねぇ
あの野郎! 魔法使いやがったな!
「反則だ! お前それ身体強化の魔法だろ! この勝負は魔法なしじゃねぇのか!」
「ふふふ……何を言ってるんだい?
言いがかりはよしてくれよ
僕は魔法なんて使ってないよ」
「テメェ……」
俺は王様の方に目線を向け抗議するが、王様は困ったように首を振るだけだった
チッ……本当ロクな奴がいねぇ!
「じゃあ……今度は僕から行くよ!」
そう言うと瀬川は急に俺の目の前に現れる。速っ……
俺はまたも瀬川から距離を取る。しかし今度はその選択が仇となった。距離を取ったことで近すぎた間合いが瀬川にとって丁度良い間合いへと変化してしまう。瀬川はその隙を見逃さず俺の腹に向かって横薙ぎに剣を振るった。
その衝撃は凄まじいものだった。
骨が何本も折れる音がする。体はくの字に曲がり10メートルほど吹き飛ばされる。地面を数回跳ねまわり、無様に地面を転がされる。
何度も視界が回転し、意識が飛びそうになる。しかし地面に叩きつけられるたびその衝撃で現実に引き戻される。
ようやく止まったかと思うと、目の前に剣が突きつけられていた。瀬川だ。どれほどの速度で距離を詰めたのか、そんなことを考えさせられる。
瀬川の剣が俺の目の前に突きつけられる。
その瞬間観客達からはち切れんばかりの大きな歓声が沸き起こった。
「僕の勝ちだね」
ムカつくくらいイケメンな笑顔で、
こいつはそう言った。
今回結構書いたなぁ→投稿→1500文字
泣きそうになる




