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17.お金

おれさまのサボり癖が…

「というわけで俺に金を貸してくれ」


「すまん……どういうわけだ?」



 俺は坂本の部屋に駆け込み、坂本に金を貸してくれるように頼み込んだ。

 やっぱり説明しないとダメか……クソッ、時間がないってのに……



「実はかくかくしかじかでな

金が必要なんだ」


「お前それでなんでも伝わると思うなよ」


「チッ」



 なんで察しの悪いやつなんだ。流れ的にこれでもうわかって金をぼっろんぼっろん出す流れだろ。



「舌打ちしてんじゃねぇよ。

……まぁどうせ神城とデートとかそんなとこだろ?」


「わかってんなら最初から金貸せや」


「お前ぶん殴るぞ」


「じゃあどうしたらいいんだよ!

土下座か! 土下座すればいいのか!」



 そう言い俺は靴を脱いで床に跪く。

 いいだろう。焼き土下座だ。

鉄板を持てぇい!



「待て待て待て待て。極端すぎるだろ。

わかった! わかったから落ち着け!

頭を地面に擦り付けるんじゃない!」



 そう言い坂本は土下座する俺を持ち上げる。

ふ……勝ったな。土下座はしたが勝ったのは俺だ。勝負に負けて試合に勝ったと言ったところか。



「本当にお前は……ちょっと待ってろ」



 そう言い坂本は机の引き出しから皮袋のようなものを取り出し、その中から金色のコイン……金貨のようなものを俺に投げ渡してくれる。



「これが……かねなのか?

金貨ってやつか?」


「ん? ああ、お前見たことなかったのか

それがこの世界の諭吉さんこと金貨だ」


「ふーん……こんな小さいのがねぇ……」



 大きさとしては500円玉程度だ。大した重みもなく、とても価値があるものとは思えない。



「せっかくだから優しい坂本さんがお前にこの世界のかねの仕組みを教えてやる。」


「おう、頼む

ってかなんでお前はそんな詳しいわけ?」


「ガイラスさんがこの世界の常識として教えてくれたんだよ。いいか、この世界には5つの貨幣が存在する」



 あのおっさん俺には教えてくれなかったくせに……

 まあ外に出られない俺に教える必要はないって思ってたんだろうと無理やり納得することにする。そうでもなければ殴りたくなる



「まず一番価値の低いものから……これだ

銅貨。日本で言うところの10円玉だな」



 そう言い坂本は日本での10円とほとんど同じくらいの大きさの赤銅色のコインを見せてくれた。表面にはこの世界の偉人と思われる老人が書かれている。……ん? 一番価値が低い?



「1円はないのか?」


「ない、というのも1円を作ろうとしても貨幣の制作費だけでその価値を超えちまうらしい。まあそれは日本でも同じだったらしいがな」


「ふーん……」



  そう考えると日本の一円玉って頭おかしかったんだな。価値を付与させる物質の本質的な費用が付与させる価格を変えるって……本末転倒もいいところだ。



「次に銀貨、これは日本で言うところの1000円だ。銅貨100枚とイコールとして使われる。やっぱり買い物とかだとこれが一番よく使われるな。」



 次に坂本が見せてくれたのは銅貨よりも一回り大きい銀色のコインだ。こちらにもこの世界の偉人と思われる別の老人の顔が書かれている

 鈍く光っており、市場によく流通していると感じられる古さだ。



「そして金貨、これは1万円だな。

銀貨10枚と同等。お前に渡したやつだ」


「そんでその上が白金貨、王国符おうこくふとある。白金貨は100万円、王国符はそれ以上の金額の取引で国が発行する……まあ小切手みたいなもんだ。この二つは俺も見たことがない」


「その辺は俺も関わりなさそうだな。

そういえばお前はなんで金持ってんだ?

皆が買い物をしてるって聞いた時から疑問だったんだが……」


「あー……実は遠征の後王様に呼び出されてな……その時に自由外出の許可と金貨を10枚ずつもらったんだよ。」



 王様が関わってたか。なるほどな

 だとしてもクラスメイト全員に10万って……

気前がいいようにも感じるが国を救う勇者への報酬としては少なくも感じる。

 おそらく貨幣価値が分からないうちに少ない価格でごまかしたんだろう。多分坂本は気づいてたけど気づかないふりをしたんだろう。そういう奴だ、こいつは。



「俺は外出禁止らしいから

金を渡す必要もなかったってか。まぁそれが完全な善意かどうかはわからないけど」


「そんな悪い人じゃないんだ

悪く思わないであげてほしい。」


「わかってるよ、城から追い出さないでいてくれてるだけで十分感謝してる。」



 本当に。俺みたいな役立たずを叩き出すこともせず最高級の食客としてもてなしてくれるのはありがたいと思ってる。誘拐犯じゃなければな。



「ってかデートってことは外出るんだよな?」


「ああ、そのつもりだけど」


「だったら俺が外に出るのに協力してやろうか?」


「いや、そこまでは迷惑かけられねぇよ。幸いもう脱出手段はあるんだ。気持ちだけありがたく受け取っておくよ。」


「そうか、ならよかった

じゃあ俺は訓練に行くよ」



 すると坂本は部屋着から訓練用の服に着替え、部屋を出て行こうとする。



「もうそんな時間か、その……いろいろ悪かったな。」


「金のことなら気にすんな。俺もまだ結構残ってたからな。それでも気にするってんならまたいつか返してくれよ。」


「それだけじゃなくてだな……えっと……」


「なんだ?」


「遠征の時のこととか……いろいろ悪かった。お前には本当に感謝してるよ」



 坂本は一瞬驚いたような顔をするが、すぐに笑顔となる。



「…………おう、気にすんな

友達だろ?」



 そう言い残し坂本は部屋を出ていく。心なしかその足取りは軽いように感じられた。



「本当……最高の親友だよ……」



 ドアが閉まる音がした後、坂本の居なくなった部屋で俺は一人小さく呟く。





白金貨一枚=金貨百枚=銀貨千枚=銅貨10万枚です

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