16.ゆきおこぷんぷん丸
「ほんっとすみませんでした!」
俺は今、ゆきの部屋前で土下座をしている。
俺がゆきの着替えを覗いてしまった後、ゆきは部屋に閉じこもったままなのだ。怒られないのが余計に辛い。
いっそ思いっきり殴られたい。
いや、マゾじゃないけどさ
「本当に、わざととかじゃなくてですね
一刻も早くゆきに会いたいと思って、ゆきの部屋に駆けつけただけなんですよ。
本当、やましい気持ちとかこれっぽっちも……」
な……くはなかったけど……
「でも見たでしょ?」
ゆきは冷たい声で扉越しに言い放つ。
あ、これあかんヤツや。声がマジですもん。
「……はい」
「ひどいよ翔太……そりゃ翔太のことは大好きだけどそういうのはよくないよ。
あんな……あんな格好を…………」
「本当に……本当にごめん!」
もうこうなってしまっては俺は謝るしかできない。俺に女の子の機嫌を直す技術なんてあるわけがない。しょうがないだろ! DTなんだから!
「……本当にわざとじゃない?」
数分経ってゆきが縋るように問いかける。もちろん答えは決まっている。
「違う。正直見れて嬉しかったけどもあんな卑怯な真似は絶対にしない」
「…………今回だけだからね」
そう言いゆきは扉を開けてくれる
よかった……こんなことして嫌われたらもう首を吊るしかなくなるところだった。
ラッキースケベって実際に起きると命の危機だな。こんなん何回も発生させるラブコメの主人公には敬意を表するわ。少なくとも俺だったら罪悪感と気まずさで死ねる。
「それで、何しに来たの?」
ゆきは扉を全部開けてはくれず、半分開けたままそこからこちらを覗き込んで問いかけてくる。まるで不審者への対応だ。
くぅ……辛い
あっ、でもよく見るとほのかに顔が赤い。かわいい
「実は午後から一緒に城の外で買い物でもどうかな〜って……ほら、お詫びに何か奢るしさ!」
「…………」
反応がない。ほとんど顔見えないので表情がどうなっているのかすらわからない。
「ほ……ほら、俺たち最近全然会えないしいろいろあれだしここらでその……デート、みたいなことしてみないかな〜って」
やばい、何言ってんのかわかんなくなって来た
「…………………」
「だめ……かな……?」
「……いいよ、じゃあ訓練が終わって1時間後に翔太の部屋に行くから」
「あ……ありがとうゆき!」
すると勢いよく扉が閉められる。やっぱり怒ってる……これ挽回できるのか……
ま、まあデートに備えて準備しなきゃ
服……は制服でいいか。予期せぬ形で制服デートになったな。異世界で制服デートとか予想外すぎる。あとは髪を整えて……あっ……!
金がない!
やばい! どうしよう! 今から稼ぐ……? だめだ外出許可すら出てないし働き口すらない! 異世界とはいえ最初から全額ゆきに出させるなんてヒモまっしぐらじゃねぇか! 他に何か……おっさん……はどこにいるのかわからない! くっそう役に立たないおっさんめ! となるともう頼れるのはあいつしか……
次回はみなさんお待ちかねのあいつが!