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155.シュヴァインの苦労

もはや(遅筆について)言うことはあるまい


「やりすぎた……」



 あの槍男は俺の行動の一部始終を見ていたようだ。彼もどこかの偉い家の人間のようで、貴族としてのあり方とか人の上に立つものの義務とかを語られた。まあ殴られすぎてあんまり何言ってたか覚えてないけど。



[おうおかえり……って何だその顔。血だらけじゃねぇか。]



 ボロボロの体を引きずってシュヴァインたちを探し当てた頃にはもう外の日が落ちかけている頃だった。ただの夕暮れだというのにこんなに綺麗なのはこの世界が異世界なのか、それとも元の世界でも綺麗だったのか、もうあまり覚えていない。



[ちょっと天罰降っちゃって。それよりどう? ゆきと暴虐姫さん仲良くしてる?]


[暴虐姫って……お前それお嬢様の前で言うなよ。お嬢様その言葉聞いたら怒り狂うんだよ……]


[そん時は俺にそのあだ名教えたやつを生贄にする。それで、どう?]


[……正直後1日延長してほしいくらいには仲良くしてるな。今日1日だけで俺1年分くらいのお嬢様の笑顔見た気がする。]


[……マジ? ゆきのコミュ力どうなってんの?]



 俺あんなワガママだらけのお嬢様と一日一緒にいても好感度どころかストレスしか溜まらないと思うんだけど……



[カミシロもそうだがカガワとも意外と楽しそうにしてるな。まだ言葉はわからないのかアンナに仲介してもらってだがそれでも仲良く話してるよ。]


[あの二人が? あんな水と油みたいな二人が何を仲良く話すんだ?]


[いや、仲良くってのは言いすぎた。普通に言い争ってるけどお互いにはっきり言い合う性格だからな、気楽に言い争ってるって感じだ。]



 するとシュヴァインの視線の先にゆきたち四人が現れる。そこにはゆきと笑顔で話す暴虐姫と、その側で憎まれ口を叩く香川、それをわざわざ通訳するアンナ達は、たしかに言い争ってたりはするが側から見れば仲良し四人組に見えるのは間違いない。



[へー……確かにいい感じだな。]


[そうなんだよ、だからさ……お前ら一週間後までに帰ればいいんだろ? 帰り道早馬飛ばして送るからもう少しお嬢様の相手してもらえねえかな?]


[んー……]



 正直これ以上ここに止まる理由はない。むしろさっさと王都に向かって転移魔法の使い手を探したい。



[まあいいか。ゆきが楽しくしてることが一番大事だし。]


[そう言ってもらえて助かるよ。しかしまさかお嬢様と本当に仲良くできる子が現れるとはなぁ……]


[いい家の娘なら取り巻きとかいたりしねぇの?]


[いつ爆発するかわからない地雷抱えるのは嫌みたいでな。だれもいなくなっちまった]


[おいシュウ! 今からヒュデアの店に行く! 早く予約するのじゃ!]



 シュヴァインを見つけたシャルロッテはその場から大声でシュヴァインに命令する。その命令を聞いてシュヴァインは流麗な動作でシャルロッテの元に跪く。



[はいお嬢様。5人でよろしいでしょうか?]


[4人じゃ! じょしかいというものをするのじゃ! 女だけの食事じゃ! お主達は付いてくるでないぞ!]


[……は?]


[だから! お主達は付いてくるでない! 妾達4人だけで行くのじゃ! もし付いてきたりしたら許さんからの!]


[し……しかしそれでは護衛が……]


[そんなもの要らぬ! 良いからさっさと予約だけしろっ!]



 慌てるシュヴァインを怒鳴りつけるようにシャルロッテが命令する。すげぇな。社会人ってこんな理不尽な指示も聞かないといけないのか。



[……かしこまりました。それでは魔導列車の席を確保しますのでご準備を。]


[うむ! 行くぞユキ!]


[うん! ありがとう! すごい楽しみ!]


「私らを忘れんなよ! どんだけ神城さん好きなんだあんた!」


[だから貴様何をいってるのかわからんのじゃ! 妾にもわかるように話せ!]


[ショウタ……代わって……この通訳すごいしんどい……]



 アンナがすっげえやつれてる。もう無視したいと思いながらも放って置いたら喧嘩を始めそうなシャルロッテと香川の圧に耐えられず通訳を勤めてしまう。正直かわいそう。リリアがこういうタイプじゃなくて本当に良かった。



[すまない……お嬢様の護衛に気づかれないように女性兵をつけてくれないか? 時間は……あと三十分以内で頼む。なんとかそれまでは間を持たせる。]



 近くにいた護衛仲間にそう告げるシュヴァイン。…………ほんとこいつも大変そうだな。


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