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142.未知の連続


「戦いが得意じゃないって……それは冒険者としてはキツいんじゃねぇか?」


「ああ、大丈夫っす。ゆきの分の戦いは俺が全部受け持つんで。」


「なおさら冒険者になる意味がねぇ……説教するつもりじゃねぇんだけどよ、冒険者ってそんな甘いもんじゃねぇぞ?」


「俺の覚悟もそんな甘いもんじゃないんで、大丈夫っす。」


「そうか……それなら俺から言えるとは何もねぇよ……よし、これで全員の冒険者登録は完了だ。さっそく何か依頼でも受けてくか?」


「そうだね……それじゃあエレメントベア以下のモンスターの討伐系の依頼とかないですか?」


「あー……だとしたらゴブリンやらデモントード、エレメントガルムなんかだな。討伐系はあまり人気がねぇから残ってんじゃねえか? 今日の依頼はそこのクエストボードに貼り出してあるからちょっと見てきてみな。」



 そう言ってブラッドが指し示すのは先ほどまで冒険者達が群がっていた掲示板のような場所だった。冒険者登録を済ませている間に彼らは望みの依頼を取ったのか、もうほとんど人はいなかった。



「ありがとうございます。見てきますね。」


「おう、それとその敬語って奴は使わないでくれ。ややこしくて俺苦手なんだわ。」


「わかり……わかったよブラッドさん。ありがとう。」


「おう、気に入った依頼があれば依頼書をちぎってギルドのやつに伝えてくれ。それで説明を受けて始めて依頼の受領が承認される。」



 ブラッドに礼を告げてクエストボードを見てみると、そこにはいくつかの依頼が張り出されていた。いくつか剥ぎ取られた後はあるものの、それでもまだ数十近い依頼書が張り出されている。しかし……



「……読めねぇな。」


「読めないね。」



 もちろんそこに書かれている文字は翔太達に読むことはできなかった。



「アンナ先生! お願いします!」


「お願いしゃぁっす!」


「しょうがないな……どれどれ、『ゴブリンの巣潰し450エリス』『魔石集め、一つにつき30エリスから』『王都までの護衛一週間、食事なし、700エリス』『学園までの護衛1〜2日、食事付き180エリス』……こんなところだな。あとは家の掃除とか害虫駆除とかしか残ってねぇ。」


「とりあえずゴブリンはダメだな。俺あいつら超嫌い。」


「トラウマになるのもわかるけど……拘束期間と報酬的に考えたら良い方じゃないかな?」


「嫌だね。またゴブリンキングとか出てきたらどーすんだよ。俺あいつに10回くらい殺されかけたんだぞ。」


「あんなの何回も出てくるようなものじゃないって。でも私も正直他のに興味があるかな。アンナ、魔石って何?」


「魔石ってのは魔物の持つ魔力の塊みたいなもんだ。だいたいは魔物の心臓付近にあるはずだよ。ちなみにグリモリアの魔物にもこれはあったぞ。意気揚々と集めてギルドに持って行ったらこんなゴミ買い取れませんって突っ返されたことがある。」


「エピソードせつなっ。」


「へー……それならゴブリン駆除と並行して進めれるじゃないか! さあ翔太さん! ゴブリン駆除だ!」


「それやるくらいなら俺はエレメントベアを狩りまくるから。」



 サリアの誘いを翔太はすげなく断る。その返事を聞いて面白いことを閃いたというふうな顔でサリアが提案する。



「意地悪いなぁ……あ! じゃあ二手に分かれて依頼を受けようよ! ゴブリン駆除班とそれ以外で魔石を集める班。どっちが多く集められるかってのは?」


「えー……俺は学園ってのに興味があるから護衛の方受けてみたいんだけど。もちろんゆき連れて。」


「えー……魔石集めやろーよー。大量に集めてブラッドさんを驚かせてやろーよー。」


「じゃあ俺がやるっす! 師匠! 勝負っすよ!」



 話の流れを無視しグレンが翔太に勝負を持ちかけるが、翔太はそれでも勝負を受けようとはしなかった。



「だから俺やらないって。サリアとグレンが勝負すりゃ良いじゃん。俺は学園行くから。3手に分かれるってことで。学園行くやつこの指とーまれ!」



 翔太が無理やり話を切り上げ人差し指を突き立てるも誰も食いついてこない。



「……あれ? 俺って思ってる以上に嫌われてんの?」


「別にそれは否定しないけれどもどちらかというと話がいきなりすぎてついていけないという方が正確ね。」


「否定しないのな……じゃあ一日待つから全員やりたい依頼を選んでくれよ。選んだ以来の数だけ別れれば良いんじゃねーの? どの依頼を選んでも4日後くらいにまたあの宿に再集合するってことで。」


「一日待つったって……じゃあ今日はどうするのさ?」



 宿の代金は払っているとはいえ、未だ無一文であることに変わりはない。当然のサリアの心配に、しかし翔太は呆れたように答える。



「金もそうだけど何よりまず一番重要なのは言葉だろ。チーム分けするならなおさらな。アンナがいないチームは誰とも何も話せないってことになっちまうだろうが。」


「魔物狩るだけでしょ? それなのに言葉なんていらないんじゃないかな?」


「俺は学園に行くからいるんだって。とりあえず1日丸々使って簡単な単語だけでの会話だけでもできるようになりたい。」


「……いいよ。ただそれやる場合はここにいる全員まとめてだ。1日丸ごと教えるのを何回もやりたくないからな。1日で大体の単語は教える。それで一回教えたことは基本的に覚えてるものとして進めていくから、ついてこれなくても知らない。」



 少し前まで学生だった勇者たちにとってそれがどれだけ難しいことなのかがよく分かる。学生だった頃何度も教えてもらった英語でさえ、教えてもらった単語全てを覚えているものはいない。それなのにまったく知らない言語を覚えなければならない。



「……わかった。それで構わない。アンナ、悪いけど大量の紙と人数分のペンを……って金がねぇな。」


「それなら残ってる宿の宿泊期間を買い取ってもらおうか? 最初の説明できいたんだが2日分の宿泊期間を売ることで1日分の代金を返却してくれるそうだ。」


「おっ、それいいな。んじゃいくらか売って紙とペンを買ってきてくれないか?」


「オーケーわかった。ならあんたらは宿のどこかの部屋に集まっててくれ。」

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