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141.ドレークの勇者達


「いやー青春だなー。ひっさしぶりにそういうの見たけどやっぱいいなー」


「そう? 私は大宮が受け身すぎてあんまり好きじゃないわ。男なら神城さんを抱き寄せて惚れ直させるくらいのことしなさいよ。」


「人の青春覗き見ないでもらえる?」



 あの後、周りに聞かれていたことに気がついた翔太とは赤面した。ゆきは最初はわかっていないような顔をしていたが、自分がしたことを公開告白のようなものだと受け止められていると知り、途端に顔を真っ赤にしてしゃがみこんだ。



「いいじゃないいいじゃない。神城さん可愛かったんだから。ありゃ守ってあげたくなるわ。」


「ゆきちん良かったよ。これ見れただけで早起きした甲斐があった。」


「やぁ〜……もうやめて……恥ずかしい……」


「はいはい、イチャついてないでさっさと行くよ。」


「「イチャついてない」です!」



 二人の全力の否定をサリアは鼻で笑ってギルドへ向かって歩を進める。その間に翔太と

ゆきの空気に当てられて勇者達はクラスメイトとして昔のような会話に花を咲かせた。



「いーなぁ……俺たちの憧れだった神城さんを射止めやがって。『翔太君』なんて明らかに別格扱いじゃん。俺も彼女ほしーなぁ!」



 もはや何度目かになる多田の羨ましいと言う言葉に、香川が嘲笑うように言葉を返す。



「あんたみたいな騒がしいだけの男に彼女だなんて笑わせるわね。女に相手にしてもらいたかったら瀬川君の爪の垢でも煎じて飲むことね。」


「キッツイこと言うな香川は……ってかさてかさ! 翔太達以外にうちのクラスに彼氏彼女持ちっていねーの? 実はこいつと付き合ってます的な!」


「私は瀬川君以外眼中にないわ。」



 即答で帰ってきた香川の返答に、多田は香川らしいと苦笑いする。そしてこんな世界に来たのだからと向こうでは聞けなかったような人にも聞いてみることにした。



「はいはい……んじゃ尾崎さんは? けっこーモテてたしそーゆーのいないの?」


「いないわ。私に告白してきた人は誰一人として興味が湧かなかったのよ。多田君、あなた含めてね」


「ちょっちょちょちょ! 尾崎さん! ストップストップ!」


「えっ多田お前尾崎さんに告白したのか!?」


「ええ、去年の夏に告白されたのよ。確か告白のセリフは……」


「ヘーイ! この話終わり! サリアさんサリアさん! サリアさんは彼氏とかいないんっすか!」


「話題の逸らし方が下手ね、多田君。」


「いーからいーから! ほらここは異世界だよ! 異世界の美人さんの恋模様を聞こうぜ!」



 そう言って問われたサリアは小さく多田に笑いかける。そして唇に指を当て、悪戯っぽく言った。



「内緒だよ。でも一つ言うなら私も多田君みたいにおしゃべりな人はタイプじゃないかな。」


「静かにするっす!」



 多田が口をふさぐも、他の勇者達は構わず互いに会話をし、笑い合う。これじゃ意味なかったなと思うも、後ろで必死に静かにしようとしている多田を見てサリアが軽く笑う。


 そしてサリア達がギルドの前までたどり着くと、まだギルドは開いていないようで数人の冒険者と思われる人たちがギルドの前に並んでいた。



「まだ開いてないっぽいな。どうする? 並ぶか?」


「まーそうだね。別に観光とかしてもいいけど言葉通じないし、そんな時間もかからないでしょ。ほら全員一列に並んで。」



 途中何度か前に並ぶ男に声をかけられるものの、サリアが完全な無視を決め込むことでやり過ごす。話しかけた男は最初は憤慨していたものの、それすらも無視されるとやがて落ち込んだような顔でサリアから顔をそらす。



「サリアさんガン無視しすぎっすよ……」


「あんな男にかけてあげられる言葉はないからね。いやほんとに。かけられる言葉を知らない。」


「誰が上手いこと言えと……」



 そうこうしているうちに時間になったようでギルドの扉が開け放たれる。それと同時に並んでいた冒険者達がなだれ込むようにギルドに駆け込み、各々が依頼書をむしり取って行く。


 そんな冒険者達の流れを無視し、翔太達は依頼書を張り出した板を素通りしてギルドのカウンターへ向かう。そこには昨日翔太達を対応したベルと呼ばれていた女性が立っており、翔太達の顔を見ると奥へとギルドマスターを呼びに引っ込んだ。



「よく来てくれたな……多くない?」



 ベルからの報告を受けて出てきたブラッドはサリアと翔太の顔を流し見て、それから後ろに控える20人近い人数に気がつき驚いたように声を漏らす。



「私含めて23人ですから。冒険者登録お願いしまーっす。」


「多いわ! ……ったく、じゃあ全員これに記入を……って字書けないか……代筆するから全員質問に答えてくれ。」



 ブラッドがペンを取り出し、カウンターの下から数十枚の書類を乱雑に取り出し、全員の名前、出身地、戦闘スタイル、前科等を聞き出して記入して行く。



「出身は……ドレークでいいか。もしこっちで出身聞かれたらドレークって答えといてくれ。王都の北にある芋の栽培が盛んな小さな農村だ。」


「ギルドマスターがそんな堂々と偽装していいの?」


「まあバレないだろうからな。一応描いてくれってだけでここを参照にすることなんてほとんどない。次はそっちの嬢ちゃん、名前は?」


「尾崎美紅よ。……それでも不安ね……地図か何かを見せていただけないかしら?」


「オザキミクね……地図なら見るだけで1000エリス、買うならその十倍だ。」


「エリス……って言われてもわからないのだけど……」


「まあそうだろうな。でもまあそっちの嬢ちゃんならわかるんじゃねぇか? 嬢ちゃん、名前は?」


「アンナ。アンナ・クレールで登録しておいて。残念ながら私にもよくわからないね。世情に疎いもので。」


「マジか……これがエリス硬貨だ。ヒュマニア王国内で流通している硬貨で1〜1万エリス硬貨まで存在する。ちなみに1000エリスあればその辺の宿に10日は泊まれる」


「なるほど……小林ちゃん、いける?」


「あれの1/3でいいなら……2日くらいかかりますけどできます。」


「オッケー。ブラッドさん、この辺に金属の売買が出来て信用できる店はないかな?」


「それならウチで買い取るぞ。ウチは武器や防具屋とも繋がってるからな。金属は貴重な収入源の一つだ……よし、最後。君の名前は?」


「神城ゆきです。あまり戦いは得意じゃないですけど……頑張ります。」



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