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140.先へすすむ一歩


「えっと……なんで言葉通じるんっすか?」


「あー……その辺はさっきサリア君たちにも言ったんだが私は昔グリモリアにいたことがあってね。その時に覚えたんだよ。私、俺、僕、自分……この辺りが中々覚えられなくて苦労したのを覚えているよ。」


「……その辺も同じなのか、よくわからないな……それで、なんで俺はこんなところに呼ばれたんだ?」


「それに関してはサリア君だな。私が確か……ガイラスを知っているのかと聞いた時だ、その時にサリア君が君を呼ぶと……」



 ガイラス、の名が出ると翔太の目が見開かれる。そしてすぐに納得したように大きく息を吐いた。



「その反応は本当に知り合いのようだね。それで、興味本位で聞くんだが君とガイラスはどういう関係なんだい?」


「おっさ……ガイラスさんは俺の剣の師匠ですよ。あなたこそどういう関係で?」


「私は昔ガイラス達と共に魔王討伐をした仲だ。……それにしてもガイラスに弟子とはなぁ……」



 ガイラスの弟子、と聞いてブラッドは翔太の体を眺め回す。



「それにしちゃ細いな。そんな体で本当にガイラスの剣術を使えるのかい?」


「俺は弟子って言ってもあの人の剣を受け継いだわけじゃないから……俺の剣はあの人の剣をベースにしただけで別物っすよ。」


「ふーむそれにしてもなぁ……」



 翔太の体を見ていると、ブラッドはその腰に差された剣に気がつく。



「……ん? これはガイラスの剣……だよな? 何でお前が持ってるんだ? いくら弟子とはいえあいつがこれを渡すなんて……」



 疑わしそうな目をしたブラッドに、観念したように翔太は話し出す。



「……おっさんは、勇者ガイラスは死んだ……らしい。俺達を守るために魔王と一人で戦って。」



 突然切り出された翔太の話にブラッドは吹き出す。笑ってそんなはずがないと、あいつが死ぬわけがないと否定し続けた。



「あのおっさんでも勝てなかった。俺だって全く太刀打ちできなかった。本当に、圧倒的な力の差を感じたよ。」


「その目……本当なんだな……ガイラスは……死んだのか。」



 翔太の言葉を真実だと理解したのか、ブラッドは頭を抱える。



「……すまない、少し一人にしてもらってもいいかな? また明日の朝ここへ来てくれ、その時に君たちの冒険者登録を行えるようにしておく。」


「あっ……わかりました。それじゃあまた……行くよ、みんな。」



 サリア達がギルドを出ても、ブラッドは変わらず頭を抱え続けていた。しかし大きく息を吐き、カウンターに置かれている樽からコップ一杯分の酒を取り出して、一気に飲み干した。



「……なぁガイラスよ。お前本当に死んじまったのか……? 俺は死なねえって……そう言ってやがったじゃねぇか……」



 当たり前のように返事のないその言葉を、ブラッドは呟かずにはいられなかった。そして今度は二つ酒を入れたコップを用意し、一つをカウンターに置く。



「……もし、もし生きてるのならまた一緒に酒でも飲もうぜ。安酒だけど、量だけはある。また……ライアット達も一緒に……」







 その後ギルドからの帰り道では、誰一人何も話すことはなかった。ブラッドの態度を見て、ガイラスが死んだということをより明確に実感させられたのだ。


 結局何も話さないまま彼らは宿に戻り、各々眠りについた



「さあ、今日は全員冒険者ギルドへ向かうよ。準備はいいかな?」


「まだ全身が痛いっす……」



 朝になって勇者達とサリア達が宿の前に集合する。勇者のうち何名かはその場にいないが、ほとんどは揃っていた。



「いや良かねーよ。お前昨日わざわざ待ってたのにすっぽかしやがって。初回の勉強会に主催者不在ってどーゆーことだよ。」


「あっ、ごめん忘れてたわ。」


「ぶっ殺すぞおめー」


「ふふっ、良かった。二人とも前より仲良くなってますね。」


「「誰が! こんな奴と!」



 リリアの言葉にシンクロして二人が否定する。それを見てまたその場の皆が笑い、和んだような空気が満ちる。

 


「あの……翔太くん。ちょっといいかな?」



 そんな中みんなの笑い声に隠れるようにゆきが翔太に話しかける。



「なに……ってゆきっ!? 昨日はごめん!」



 そして気がついた翔太は、凄まじい反射速度を活かし、即座に頭を下げる。そしてゆきも同じように頭を下げた。



「昨日はごめんなさい。あなたが悪いわけじゃないってわかってたんだけど……あんなことを……」


「いや……俺が悪かったんだ。ゆきが優しい奴だって知ってたのにあんなことを……まさにド外道だった! 好きなだけ殴ってくれ!」


「い……いや、叩くのはちょっと……」


「そ……そうだよな、ごめん……」



 ゆきは謝ってそのまま仲直り、という流れに持って行きたかったのだが、現実にはそうはいかず微妙な空気が流れる。その空気に耐えられず、ゆきが拙いながらも言葉を紡ぐ。



「私……は、記憶がないから……翔太くんが好き……だったとか全然覚えてなくて……その……」



 ゆきの言葉に翔太は絶望したように顔を歪ませる。どう考えても振られる前の雰囲気だったからだ。



「それで……あの……覚えてないし……好き……とかもよくわからないけど……これからもよろしくお願いします!」


「……え?」


「……え? え? 何かおかしかったかな?」


「これって……振られたわけじゃないの?」


「あの……できたらもう少し待ってほしいなと、私も記憶を取り戻せるように頑張ります……から。」



 そう言ったゆきの笑顔を見て、翔太はホッとしたのか膝から崩れ落ちる。いつのまにかそれを聞いていた周りの勇者達が、二人をニヤニヤと眺めていることにも気づかずに。

はい毎日投稿終わり!

もう無理です!


次は一週間以内に、まあまた毎日投稿期間は作ります。多分きっとおそらく

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