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139.ルートC


「それじゃあまずは……ここは何なのか。アンナの言った通り私たちがいたグリモリアと隣接している大陸なのか、もしくは別の世界なのか。それともそれ以外なのか。わかりますか?」


「隣接している大陸だ。グリモリアの最北部にある魔王城と、こちらの最南部にある魔王城は同じものだ。あれに区切られたせいで物理的な行き来ができないだけだな。」


「じゃあなんであなたはグリモリアのことを知っているんですか?」


「昔、世界中を旅したんだ。グリモリアの南からこっちの北まで、何度も巡ったもんだ。……それが7年前の魔王討伐の旅だ。7年前、俺はお前達の国の勇者、ガイラス達と共に旅をしていた。」


「ガッ……ガイラスさんと!?」


「ん? 君達はガイラスと知り合いなのか?」


「ええまあ……知り合いというか……説明しにくいな。ごめん、グレンちょっと翔太さん呼んできてくれないかな? 最悪引きずってでもいいから。」


「わっかりましたぁ! 行ってきます!」


「あ、私もついでに戻るわ。言葉通じてるみたいだし、それにその話あんまり興味ないから。」


「ん、わかった。また帰ったら言葉教えて欲しいからまだ寝ないでね。」


「はいはい」



 グレンがギルドから走って行った後、アンナも軽く断りを入れてギルドを出て行く。そしてこの場にはサリアとリリア、そしてギルドマスターのブラッドのみが残された。



「ふむ……何かあったのか、まあとりあえずその話は置いておくとしようか。他に聞きたいことがなければ私から質問させてもらうが良いかな?」


「構いません。ただまた後でいくつか質問をさせてもらうことになりますが。」


「ああわかった。なら問うが……君たちはどうやってこちらに来た? 一体どんなルートを使ってここまで来たんだ?」



 ブラッドが真剣な目をしてサリア達に問いかける。それが彼にとってはかなり重要なことだとまるで隠すことなく伝え、その上でサリア達の言葉が事実かどうか見極めるような目だ。



「どういうルートって……ごめんなさい。意味が……」


「どうやってこっちの国まで来たのか、ということだ。現在いくつかの方法で両国を行き来する方法が確立されているが一般公開、ならびに一般人の使用は全て禁じられている。もし同意なしにそれらを使っていた場合私は君たちを王都に連行しなければならない。」



 そう言う彼の体から発せられる圧力は、ガイラス達が発するものと同種のものだった。嘘はつけないというプレッシャーと行動全てを見透かすような目に、サリア達は硬直する。そんな時間が1分ほど続いた。



「どうした? 答えられないのか? ならば心苦しいが君たちを……」


「連れてきましたーっ!」



 ブラッドが立ち上がろうとするのと同時にギルドの入り口を蹴破るようにグレンが戻ってくる。異常なまでの速さで戻ってきたグレンの後ろ手にはボロボロになった翔太が引きずられていた。



「グレン……あのさ、いきなり出てきて文句言う隙もない速さで人を引きずるのは良くないと思うんだよ。しかもお前引きずりかた雑だからその辺に俺をぶつけるし。めちゃくちゃ痛い。」


「すいませんでした!」


「……やあ、グレン。随分早かったね。」


「めっちゃ走りました!」


「……大切な話の途中だったんだがね、まあいい。それで、君がショウタ君か?」



 やる気が削がれたのか、ブラッドから放たれていた威圧は霧散し、今度は好奇の目で翔太に話しかける。



「ん、そうだよ。俺が翔太だ。あなたは?」


「おっと紹介が遅れたね。私はこのギルドのギルドマスターをやっているブラッドと言う。よろしく頼むよ。」



 そう言って差し出されるブラッドの手を、翔太が取る。力強い握手を交わすと、再びブラッドからプレッシャーが放たれる。



「さて……ショウタ君。君はどうやってこの国へ来た?一体どんな手段を用いてここまで来た? 嘘偽りなく答えてもらおう。」



 質問されて、翔太は考える。自分の覚えている記憶では、クラムドプランに挑み、そしてあしらわれて敗れた。意識を失い、次に目を覚ましたらここにいた、ということになる。つまり何もわからないのだ。



「わかりません。俺達は魔王城にいだはずなんだけど気がついたらここにいた。フォウルかおっさんに聞けば何かわかるかもしれないけど少なくとも俺は……」


「……魔王城……だって!? きッ……君たちまさか魔王を倒そうと!?」


「ええまあ……そうなります。まあ全く太刀打ちできなかったんですけど。」


「そりゃ当然だろう……むしろ生きていただけでも奇跡のようなものだ。しかしそうか……ならば魔王城にある転移門を通ったと考えるのが妥当だろう。先ほどは失礼な態度をとってすまなかった。改めて聞きたいことがあればなんでも聞いてくれ。」



 そう言うとブラッドはサリア達にも頭を下げる。その姿は先ほどまでの圧力などはとうに消え、最初に会った通りのいい人といった印象を与えられた。

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