表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/174

126.魔を統べる王

 一行が呼び出された場所は、荘厳な空間だった。かつて呼び出された王城と酷似しているが、漂う魔力が圧倒的に違った。立っているだけで恐怖に足が震える。濃密な殺意。実戦経験の薄いクラスメイト達には耐えられなかったようで、多くが腰を抜かし、その場に蹲る。そして何よりも目の前の存在が、絶対的強者の存在感が強すぎた。



「よく来たな、勇者よ。貴様との再会が待ちきれぬ故、無理やり呼ばせてもらった」



 その強者、魔王はただ一人ガイラスだけを視界に入れていた。



「だろうな。こんなことできるのはお前だけだろうよ。『魔王』クラムド・ブランッ!」



 ガイラスが鞘から剣を引き抜き、目の前の何もない空間を切り裂く。そして一秒ほどしてガイラスの足元に複数の礫が落ちる。初めて見るこの世界の『勇者』と『魔王』は、想像をはるかに超えていた。



「やはりこの程度は容易く防ぐか、そうでなくては面白くない」


「魔……王?」



 ガイラスを聞いて翔太がゆらりと立ち上がる。寸前まで無気力に膝をついていたが、魔王の存在を知って憎悪の目で睨みつける



「お前が……ゆきを殺したのか?」


「おい待てショウタ……」


「ゆき……? ああ、そこの現し身のことか。そういえば確かに殺すように命じていたな」



 クラムド・ブランの言葉に、翔太は文字通り飛びついた。鍛えられた翔太の脚力による跳躍は、10メートルはあろうという距離を1秒程度で詰め、そのままの勢いで横薙ぎの斬撃を放つ。



「……その程度の実力で我が前に立ったこと、後悔させてやろう。」



 しかしその斬撃をクラムドは回避しない。かといって迎撃するでもなく、されるがままに顔面で剣を受け止める。翔太の剣は彼の皮膚の一条すら傷つけられなかった。



「ガァァァァァァッッッ!!」



 しかし翔太は止まらなかった。斬撃から回転し肘を入れ、逆の腕で拳、着地し袈裟懸け、前回りして袈裟懸け、後ろ回し蹴り。と連撃を叩き込む。



「ショウタッ! 退けっ! ショウタッ! ……クソッ! 聞いちゃいねぇ!」



 自身の防御をかなぐり捨てた翔太の攻撃を、ガイラスはサポートする。クラムドの攻撃を潰し、魔法を相殺させる。



「ニノミヤッ! 勇者たち連れて飛んで逃げろっ!」



 そう言ってガイラスは攻撃の合間に二宮の方へと小瓶を投げつける。乱雑に投げつけられたそれをなんとかキャッチする。それは魔力回復ポーションだった。



「……ッ! 全員私に続いて! 私が先導するーー」



 そう言って走り出した二宮の体が切り裂かれる。クラムドは何もしていない。それなのに魔族化している二宮の腹部を何かが切り裂いた。



「ニノミヤちゃん!? これは……」


「全員動くなっ! …………不可視の刃……風魔法が張り巡らされてる!」



 サリアは二宮に駆け寄り、アンナは確認のため手に持っていたナイフを投げつける。すると二宮が斬られた付近でナイフが真っ二つに切れ、地面に落ちる。



「風の結界……チィッ……ショウタ! すこしサポート外れるぞ!」


「ジャァァァァァァッ!!!」



 ガイラスが風の結界を破壊すべく後方に下がり詠唱を始める。しかし翔太はそのことを気にも止めずクラムドに襲いかかり続ける。

 しかしクラムドは翔太の攻撃をあえて受け、そのまま翔太に反撃を喰らわせようとする。



「勇者の支援のない小僧が、我を止められるとーー」


「《オーバーマジック・エンチャントフレイム》!」


「…………ッッ!!?」



 翔太の斬撃に合わせてフォウルの放った魔法が翔太の剣を燃やす。それはもはや回避不可能な完璧なタイミングでクラムドブランを焼き切る……はずだった。

 しかし翔太の剣速を完全に上回った拳で真っ向から剣を殴り翔太を後方へと吹き飛ばす。



「クッ……クックッ! 良い! 良いぞ! この魔力構築の精度と速度……そこの貴様、名はなんと言う!」


「悪党に名乗る名など無いでござるよ! 《爆拳》!」



 一瞬のうちに距離を詰め、翔太の隙をカバーする。燃え盛る拳は魔王のガードを無視しダメージを与えていく。



「フッ……フハハハハッ! まさか勇者以外にもここまで戦える者がいたとは! 実に愉快である! 人間にしておくには惜しいほどだ。」



 自身の体を傷つけられながらもクラムド・ブランは嬉しそうに高笑いを上げる。その体から血を流し明らかにフォウルに押されているというのに変わらず嬉しそうだ。



「……俺を、皆を、全てを守る頑壁を! 何ものも通さぬ巨壁よ! 路を示せ! 《アダマンタイト》!」



 そして詠唱の完了したガイラスの生み出した壁が路を作る。風結界を防ぐべく生み出された最高硬度の魔法は、地面からせり出し盛り上がっていく。しかし……



「なっ……!?」


「故に我も見せよう。『魔法使い』である貴様らに敬意を評して、我が魔法を。」



 ガイラスの生み出した壁は結界に触れた途端に容易く切り崩される。そしてクラムドブランから濃密な魔力が溢れ出し、その手に見たこともない魔法を生み出した。



「《ネメシス・エンド》」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ