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122.魔王城地下

 地下へと降りる階段を行くと次第に光が届かなくなり暗くなってゆく。それにおっさんと狼魔人の戦いの音も聞こえなくなり、あたりが静寂に満ちる。

 そうして降りきった先は先が見えないほど続く一本道だった。



「二宮、この先で間違い無いのか?」


 

 相変わらず最高速度を維持したままの二宮に尋ねる。しかしリリアを背負っている分俺の消費は激しい。足跡ももう全く忍べなくなっていた。


「ええ、神城さんとさっき言った10人以外はみんなここにいるわ。ただ……」



 二宮が悲痛な顔でこちらへ振り向く。



「……いえ、なんでもないわ。」


「なんだよそれ……まさかゆきに何かーー」



 言い切るよりも先に目の前の異変に気がつき、足を止める。空気が変わった。おっさんにも似た強者の発する空気と、一定間隔に響く足音。



「……やっぱり来たか。まあそりゃそうだよな。ここで来なけりゃお前じゃない。」

 


 聞きなれた声、間違えるはずもない。親友(あいつ)の声を、聞き間違えるはずがない。足音が近づき、その姿が鮮明になる。



「でも……お前をここから先へ行かせるわけにはいかない。」


「坂本……ッ!」



 坂本が現れてすぐに背後から無数の気配を感じ取る。



「まずいでござるな……5……いや10はいるでござるな。挟まれてるでござる。」


「いつの間に……坂本、お前の仕業か。」


「ああそうさ。俺の狙いはお前だけだ。その他はその他で勝手にやっててもらおうと思ってな。」



 じりじりと背後の敵が距離を縮めてくる。……こいつら全員強いな。



「サリア、悪いけどリリアを任せてもいいか?」


「仕方ないね。任されたよ。その代わり……あの一番強そうなのは翔太さんに任せるよ。」


「もとよりそのつもりだ。サリア、フォウル、グレン、二宮、アンナ……後ろは任せた。」



 翔太のその言葉に5人は頷き、後方へと飛び出す。



「サリア殿は後方で援護! ニノミヤ殿とアンナ殿は状況に応じて魔法で防御と攻撃! 拙者とグレンで前線を維持するでござる!」



 フォウルの声が響き全員が動く。唯一サリアだけはその場に留まってリリアを背負い、魔法の詠唱をしていた。



「最初から全力でござる……《爆拳》!」



 フォウルの拳が一番近い魔人を捉える。魔人は仰け反るが、ダメージは受けていないのか超至近距離のフォウルへと襲いかかる。



「小さく、高密度に。無駄に魔力を込めるのではなく最小限の魔力で撃破する……でござったな。」



 しかし魔人の拳がフォウルを傷つけることはなく、寸前で崩れ落ちる。それと同時に背後から4色の魔法の矢が魔人たちに襲いかかる。



「さて、残りは9人……時間がない故、速攻で終わらせるでござるよ。」



 4色の矢とともにフォウルとグレンが駆けだした。






 翔太と坂本。向かい合う二人の間には微妙な空気が流れていた。



「……なあ坂本、この先にゆきはいるのか?」



 その空気をはじめに破ったのは翔太だった。何を話せばいいのかわからず、とりあえず一番気になることを問いかける。



「ああ、それに関しては断言してもいい。この先に神城はいる。ついでに福田達もな。」



 そう言う坂本の言葉を、何故か翔太はすんなり信じられた。今は敵同士で、タドムを殺した張本人でもある。そんな奴でも翔太はまだどこか友達と思っているんだろう。



「そうか……なら通してくれ。っても通してくれないんだろうな。」


「そりゃあな。神城達が解放されるのは魔王様にとっては都合が良くない。」


「なぁ……なんでお前は魔王側に着いたんだ? 何か事情でも……」



 翔太の言葉を聞いて坂本は狂ったように笑い出す。坂本の笑い声が周囲に響き渡る。



「事情、事情な。もちろんあるさ。それは誰よりもお前が一番よくわかるはずだ。」



 一通り笑い終えると坂本は腰から剣を引き抜き頭の横に置き、剣先を翔太に向けて構える。



「抜けよ翔太。今度こそお前を仕留めてやる。」


「……でも! 別に争わなくてもいいはずだ!

そうだ! 魔王に会わせてくれ! 」



 翔太がそう言った次の瞬間、翔太の目の前を剣が通り過ぎる。大袈裟に回避するも、ギリギリだったようで斬られた前髪が数本散り落ちる。



「いい加減にしやがれ! んな冷静にいられる立場じゃねぇだろお前は!」



 そう言って坂本は返す太刀で腰から肩口にかけて斬りあげる。1度目の回避で体勢を崩していたため躱しきれず、翔太は浅くない切り傷を負う。



「がぁっ……」


「その目で見ろ! 今までお前がヘラヘラやってた間に神城がどうなっていたのか、その目でよく見ろ!」



 坂本の手元に光の魔力が収束する。そして魔力が具現化し、まるでテレビのようにある風景を映し出す。


 坂本によって映し出されたのは磔にされ、様々な器具に繋がれた神城の姿だった。微かだが息はある。しかし全身がボロボロで目は虚。とてもじゃないが無事などとは言えない姿だった。



「これを見てもまだ魔王と話し合おうなんて言えるのか! これを見てもまだ俺を友だと……」



 坂本が言い切るより先に坂本の目の前を剣が通り過ぎる。坂本は余裕げに回避するも、回避しきれず鼻先を剣が掠めた。



「ああ……お前は絶対にやっちゃいけないことをした。」



 翔太は(ニーズヘッグ)を腰だめにし、体の線に側して構える。剣を前に突き出した坂本と、(ニーズヘッグ)を後ろに構えた翔太。二人によって独特な間合いが作り出される。



「絶対許さねぇ! ゆきを……返せぇぇぇっ!」


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