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117.悪意のない害悪

やばいぞ

ペースあげなきゃやばいぞ

「どう? 美味しかったでしょ?」


「すっごい美味かった! あのな、クラッシュモー焼いたやつとか! あとあの赤いスープとか! 全部美味かった!」



 先ほどまでの無理に取り繕った態度が崩れた姿を見てアンナは軽く笑う。自分が作った料理ではないが、これほど美味しそうに食べてもらえるのは悪い気はしない。



「ふふ、それは良かったわ。本当は食べながら話をしようと思ってたのだけれど……」



 まるで何日も絶食していたかのような食べっぷりに、アンナは話を切り出すタイミングを見失っていた。まあ目の前で料理がすごい勢いで消えていくのは少し面白かったけど……同じくらい財布の中身が消えていってしまう。

 とはいえこの子を味方につければその何倍も稼ぐことができる。卓上の料理がほとんどなくなり、一息ついた頃を見計らって話を切り出す。



「君、私と一緒に冒険者やってみないかな?」


「冒険者?」


「そう、冒険者。こう見えて私はCランク冒険者なの。あなたがその気なら私あなたをギルドに推薦するわ」



 その話を聞いてグレンは考えるような顔をする。しかしすぐに考えを放棄したように言葉を発する。



「いいぜ! あんたいい人そうだし師匠達に紹介するよ!」



 良かった。大金叩いた甲斐は……師匠?



「師匠も多分今人手が欲しいはずだしそっちから貸してくれるっていうなら大歓迎だ! よろしくな!」


「ええっと……師匠? もしかしてだけど君は誰かと一緒に旅してたり……」


「そうなんだ……です! 師匠が2人とリリアちゃんとフォウルさん! あ、それとあと師匠の友達もいたっけ」


「ああ……そっかぁ……」



 たしかにこれほどの子が一人でいるはずもない。この子の師匠とやらがこの子と同じくらいチョロければ全員巻き込んでパーティとして有名になるのもいいけど……その方向で行ってみるか。



「うん、じゃあお願いできるかな?」


「うんっ! んじゃこれからよろしく! あ、そういえば名乗ってなかったな。俺はグレン。家名はない!」


「ああ……そうだったね。私はアンナ。アンナ・エクレール。家名はあるけどまあほとんどあってないようなものだからアンナでいいよ。よろしく。」




「あ、ところでグレン君と師匠ってのは冒険者? それとも旅人だったりするの?」



 もし旅人だったりした場合は面倒だなと思いながら問いかける。まあどうでもいいような理由なら諦めてもらって……



「おう! 俺と師匠達は魔王を倒すために旅してんだ。」



 その言葉を聞いた瞬間、すぐに店を出て逃げ出す。ありゃダメだ。いくら強くてもあれはダメだ。現実が見えていない。


 突然だが冒険者に最も必要な能力は何か。魔法? 技術? 腕力? 全て違う。答えは臆病さだ。私は今まで才能も強さも経験もある冒険者が死ぬのを何度も見て来た。

 どれだけ強い冒険者でも引き際を見誤れば死ぬ。魔王討伐なんて馬鹿げたことを言う冒険者がいるならそれは死を撒き散らす災害のようなもの。決して近づかず放置するべき存在だ。



「あーあ……食事代無駄になっちゃったな……くっそ……あんなに食べやがって……」


「すっごい美味かったです。ありがとうな!」


「うえっ!?」



 気がつくと後ろにいたグレン君に首元を掴まれる。ちょ……はな……なにこの力!?



「急に走り出すのはいいけど師匠達と合流する場所はそっちじゃないぞ。連れてってあげますです。」


「なんだそのおかしな敬語は……やめっ離してぇ!」



 そのまま私は引きずられるように連れて行かれた。っていうか引きずるのが面倒になったのか途中から抱き上げるようにして連れていかれた……

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