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115.サリアとリリア

「リリアちゃんリリアちゃん! 上級回復薬が3割引だって! 悩ましいね……」


「私はHP少ないから上級はいいかな。同じ上級なら魔力回復薬の方が欲しいんだけど……」



 リリアがふと手に取った上級魔力回復薬の値札を見る。そこには値引かれる前の上級回復薬の約3倍ほどの金額が記されていた。



「うへぇ……相変わらず魔力回復薬って無駄に高いんだね……」


「でもこれがないと私何もできなくなっちゃうからなぁ……とりあえず3本……」



 棚から3本掴み取ったところでサリアが慌てて止める。



「ちょちょちょ! 3本も買っちゃったらもう体力回復薬買えないじゃない!」


「いいの。魔王との戦いなんてそれこそ全力でいかないと勝てない気がするから。」


「だからって攻撃力全ブッパは……」


「じゃあ……サリアが私を守って。私はサリアに命を預けるよ。」



 無邪気な笑みを浮かべながらそう言うリリアにサリアはそれ以上もう何も言えなかった。



「ほんっと……ずるいなぁリリアちゃんは……どうせならそのズルさを少しでも翔太さんに向ければいいのにね」


「なっ……なんでいきなりここでショウタさんが出てくるの!?」


「好きなんでしょ? 翔太さんのこと。」


「ち……ちちち違うよ!? 別に好きとかそんなんじゃ……」



 関係のない人が見てもわかるほどうろたえ顔を真っ赤にしたリリアを見てサリアは満足げに頷く。



「わかってる。わかってる。さすがの私も本人に直接言うほど無神経じゃないからさ、安心して」


「何も安心できないから! 違っ…ほんとにそんなんじゃないから!」


「じゃあ翔太さんのことどう思ってるのさ? ちょっとこのサリアお姉さんに言ってみ言ってみ」



 サリアが煽るようにリリアに顔を近づけ聞き出そうとする。リリアはその間に手を差し込み距離を取るもお構いなしにサリアは詰め寄る。



「ほらほら、白状しなよ。女同士の秘密ってことにしておくからさ。」


「……ほんとに言わないでね? ……私にとってショウタさんはその……憧れなの。」



 ただでさえ真っ赤な顔をさらに赤く染めてリリアがつぶやく。しかし恥ずかしさが一周したのか思っていたであろうことをまとめて吐き出す。



「間違いなくお荷物になるであろう私を魔王討伐に連れてきてくれた。私をお荷物として捨て置くんじゃなくて、共に戦わせてくれた。優しくて、強くて、絶対に諦めない。そんなかっこいい人の生き方……大切なもののために頑張り続ける。そんな生き方を私もしてみたい。そう思ったの。」


「おおぅ……近い近い……」



 リリアが翔太のことを語る目はとても輝いていて、眩しいほどだった。正直軽い気持ちでリリアをからかったサリアはなんとも言えない気持ちになり、距離を取る。

 正直サリアはそこまで翔太のことを慕ってはいない。ゴブリンをいたずらに刺激して危険に晒したこともそうだが、全てを自己責任で生きる彼は周りをあまり見ていない。リリアが並び立ちたいと言ってもおそらく拒否するだろう。

 おそらく彼が望むのはただ一人、その大切なものだけだから。

 しかし目の前で嬉しそうに夢を語るリリアにそんなことを言えるはずもなく。



「ま……まあすごい人だよね。うん、翔太さんはすごい。マジすげー」


「そうなの! その……まじすげー? なの!

だから好きとかそんな感じじゃないんだよ!?」


「ああうん。オッケーオッケー。そういうことにしておこうか。」



 多分、翔太とサリアは根本的に分かり合えない。誰か一人を大切に思い続けるその姿を愚かしいと思った。恥ずかしいと思った。その気持ちは初めて会った時から、今も変わらない。だから……



「……私はあまり好きじゃないけどね」



 リリアに聞こえないような小さな声で吐き捨てる。その顔はどこかやるせないような、苦笑いを浮かべていた。


リリアが買ったもの。上級魔力回復薬3つ

サリアが買ったもの。上級回復薬2つ、魔力回復薬1つ

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