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11.おっさん

「おーい!開けろこら!」



 俺はその声を無視し続けた。

 当然だ。自分の才能のなさに悩んでいるのに魔法も使えて剣も使える才能の塊なんかに会いたいわけがない。



「いいから出てこい! お前の友達が心配してんだぞ」



 知ってる。ゆきや坂本はきっと俺のことを心配してくれているだろう。

 でも会いたない。そんな話も聞きたくない。



「サカモトから聞いた!

初戦闘で魔物と戦えないのは何もおかしいことじゃない!」



 うるせぇよ。

 そんな安っぽい慰めなんか聞きたくねぇ。

 少し期待した俺が馬鹿だったんだ。

 俺は戦えない。もう戦いたくもない。



「カミシロも今日はずっと落ち込んでた

お前が落ち込んでるからじゃないのか!」



 それも知ってる。

 ゆきは優しいから。誰よりも人の心がわかるから。

 きっと今の俺の心を知って悲しんでくれているんだろう。そういう奴だ。だから好きになった。



「あんな可愛い子を泣かせといてテメェは何もしねぇのか!」



 …………



「出てこいこのボケェ!

出てきてあいつらに顔見せて……」

「うるっせぇんだよ!」



 ついに俺は耐えきれなくなり、勢いよく扉を蹴破る。扉がおっさんにぶつかるも、おっさんには全くダメージがない。それが更に俺の劣等感を強める。



「わかってんだよ! 俺の行動がゆきを悲しませてるって! わかってんだよ! 坂本が俺が強くなるって信じてくれてたことも!」



 俺は気づいていたんだ。俺がゆきを悲しませていたことを、坂本が俺のためにうさぎと戦わせていたことも。



「でも……でも俺には才能がねぇんだよ!

戦う才能が! 魔法も使えねぇ! 剣も使えねぇ! 魔物に襲われたら怖くて動けねぇ! そんなんで……そんなんでどうしろってんだよ!」


「才能の塊のおっさんにはわかんねぇよ!

どうにもならない俺の辛さは、苦しみは……弱さは!」


「弱くて……見苦しくて……浅ましくて……

あいつらもそんなやつといるよりも瀬川とか福田といた方が安全に決まってんだろ! 俺なんかといても足を引っ張るだけだ!」


「おっさんだってそう思ってんだろ!

実際俺のことなんて知らなかったもんな!

魔法の使えねぇ異世界人なんて誰にも必要とされてねぇんだよ!」


「だから……だからもう俺のことはほっといてくれよ……」



 いままでこの世界に来て溜め込んでいた感情をすべて吐き出すかのように、認めたくなかった自分の弱い部分を全てさらけ出した。

 そうしておっさんに見限ってもらいたかった。坂本に見限ってもらいたかった


 ゆきに……見限ってもらいたかった。


「……ふざっけんなボケェ!」

「なっ……」



 おっさんは俺に掴みかかり、怒鳴ってくる。どうしてわかってくれないのか。どうしてほっといてくれないのか。



「魔法が使えないから拗ねるならまだいい。剣の才能がなくて拗ねるのもまだいい。わからないでもない。でもな、だからって歩みを止めていいわけがねぇだろうが!」


「お前にとってカミシロは何だ!

あいつはお前の才能がないくらいで諦められるものなのか! あいつにとってお前は戦えないくらいで見捨てるものなのか!」



 おっさんの怒声が部屋中に響く



「今はどれだけ弱くても……

男なら大切な人に……カミシロに俺が守ってやるくらい言いきってみせろ!」



 おっさんはそう言い放つと俺を乱雑に投げ捨てる。投げ捨てられた俺はガラスの窓にぶち当たり大きくよろめく。おっさんはそんな俺を見ることもなく部屋から出て行こうとする。


 あまりに身勝手で乱暴な物言いに俺は何も言い返すことができなかった。



「じゃあな。もう勝手にしろ」


「おっさんは……おっさんはなんでそこまでして俺に構うんだ……あんたにとって俺は赤の他人だろ……」



 不思議だった。

会って数日の俺になぜそこまで構うのか

俺なんかに何を期待するのか。何を求めるのか。



「……決まってんだろ

お前は俺の弟子だからだ。」



 振り返らずそう言うと、今度こそおっさんは出て行ってしまった。


  部屋には投げ飛ばされた俺と、その衝撃で叩き割られた窓ガラスだけが残されていた



坂本ェ…


カミシロ→ゆきです

一応…

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