105.戦力差
「いやすまんでござる。あまりに予想外の答えだった故……うくくっ。」
「何の話か、まるで見えてこないんだけど?」
「グレン殿は、本当に翔太殿のことが好きなんだと言うことでござるよ。」
起き上がっていきなりそんなこと聞かされてもどうしろというのか。嬉しいような気もするけど微妙に喜びづらい。
「……へぇ、そう。ふーん……」
だからこんな気のないような返事をしてしまうのも無理はないと思う。こんなこと言われてなんて返したらいいかわからんわ。
「はい、はい。とりあえず今は大宮君がそっち系だという話は置いといて……」
「そっち系じゃねぇよ! なんで起きてすぐにそんな嫌疑をかけられなきゃなんねぇんだ!」
「私達、勇者の話をしよう。」
俺の必死の抵抗も無視し、二宮が強引に話を進める。勇者の話、というのはあの王城での事件の後の話ということだろう。
「というかニノミヤは勇者だったでござるか。ショウタ殿の友人ということで、なんとなくそんな気はしてたでござるが。」
「まあ確かにな。フォウルの知らない俺の友達っつったら元の世界のクラスメイトくらいだよ」
おっさんにリリアにフォウルにサリア、グレン、ニッタさんにポキューズさん、あと友達ってったら魔王討伐隊の何人かくらいだ。
「……話を戻すわよ。私達は王城で攫われた後、魔王に服従させられた。当然反発したわ、でもダメだった。仮にも勇者が30人揃っていたのに手も足も出ずに服従させられた。」
「妥当でござるな。いくら勇者とはいえ召喚されてから鍛える時間が短すぎたのでござろう。聞いた限りではステータスもレベル1にしては高い程度だったとか。」
確かにそうだ。初めて見たときはあまりに高いステータスに驚いたが今ではそこまででも無い。今はフォウルのステータスの方が高いくらいだ。唯一MPだけは叶わないが。
「そう、所詮井の中の蛙だったってことね。魔王は勇者の中から使える人間10人を残して他は地下に幽閉した。人質にされたわけよ。」
「その使える10人のうちの一人が二宮ってことか?」
「私なんて末席だったけどね。瀬川君や獅童君、比奈なんかと比べたら全然。」
二宮が名前を挙げた3人は訓練でも優秀な成績を修めていた連中だ。だがそいつらよりも……
「……坂本は? あいつも魔王に服従させられたんじゃないのか?」
「坂本君は、ちょっと違ったわ。彼は自分から魔王に服従していた。私達は魔王によってゆっくりと体を魔族のものへと変えられていって、そのせいでステータス面が強化されていってるんだけど……彼は一刻も早く魔王の力になりたいって無理やり魔族の血を自分の体に受け入れて一気に魔人になったのよ。そのせいかステータスもダントツで高いわ。」
そう言って二宮は自分のステータスを開示する。
二宮 陽子 17歳 レベル13 魔族
HP375/375
MP500/500
筋力45
素早さ50
魅力10
知性60
固有魔法 変身魔法
適正魔法 火、水、光
「……はっ?」
予想していたものよりもだいぶ高いステータスが表示され、フォウル達も驚いたような表情で固まっていた。
「驚くのも無理はないけど……坂本君はもっと高いわ。最後に見た記憶ではHP、MPどっちも1000を超えていたと思う。」
「……やばいね、それ。過去の勇者でも最強クラスのステータスじゃないか」
サリアが言うには過去の勇者にもいろいろとタイプがあり、HPか MP、どちらかが500超えている程度なんだと……ってかそれもう二宮も達しちゃってるんですけど……
「私は魔族の血との親和性が高かったみたいで完全な魔族になったんだけどそれでも他の9人には敵わない。皆まだ半魔族なのに、よ。」
俺の考えを読んだのかさらに絶望的な状況を伝えてくる。そんなの……
「僕たち程度のステータスで……かないっこないじゃないか! ステータス上の差が大きすぎる!」
「そう、確かに大宮君は強くなってたけど、このままじゃ絶対に勝てないと思う。魔王はその坂本君よりも強いんだから。」
「そんなことは……」
ない、と言い切りたかったができなかった。流石にそこまで現実が見えていないわけじゃない。神に魔王を倒す可能性とやらを与えられはしたけれどもあくまでそれは可能性だ。
「まあ話は最後まで聞いて。私は『今のままでは』勝てないって言っただけ。」
「どういうことでござるか?」
二宮の言い方に違和感を感じたのかフォウルが尋ねる。すると二宮は目を閉じ大きく息を吸った。そして数秒のち、息を吐き出して続きを告げる。
「ねえ大宮君、神城さんを助ける為に人間を辞められる?」
フォウル 18歳 男
レベル21
HP31/210
MP136/155
筋力36
素早さ32
魅力15
知力25
固有魔法 なし
適正魔法 火