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103.二宮の思い

 俺の言葉がちゃんと届いたのかはわからない。だが二宮は俯いて肩を震わる。また、時折鼻をすする音が聞こえる。



「ほんとに……本当に大宮くんはみんなを助けられるの?」



 少しの静寂ののち、消え入りそうな小さな声で、縋るように二宮が呟く。



「俺一人じゃ無理だ。でも俺がいて、フォウルやリリア、サリアにグレン……それにお前がいてくれれば、できる。」



 そう言うと二宮は袖口で顔を擦り、顔を上げる。さっきまでの迷いや悩みの色は消え、その顔は明るく、輝いていた。



「……わかった。私も手伝うわ。これからよろしくね。大宮くん。」



 そしてその明るい笑顔で手を差し出して来た。元の世界にいた頃より仲良くなれた気がしするな。


「ああ、こちらこそよろしく。にのみ……あれ?」



 そこまで言うと景色が反転し、視界が暗転する。ああ……またか……そう思うとすぐに意識は闇に堕ちていった。






「あっ……って気を失っちゃったか……仕方ない。担いでいってあげようかな。」



 そう言って二宮が翔太を担ごうと手を伸ばす。しかしそれより先にリリアによって翔太の体は背負いあげられる。



「あなたに……任せるくらいなら……私が……」


「そうは言ってもあなたフラフラじゃない。」


「私は……あなたを仲間だとは……認めてませんから……それに……」



 そこまでいうと続きを告げることは叶わずリリアは崩れ落ちる。限界を超えて魔力を絞り出した反動か、リリアも気を失ってしまったようだ。



「……ほんと、強情な人たちだなぁ……」



 二宮はひとりそう呟き、困ったように頭をかく。そして溜息を吐いた後、翔太とリリアを抱え上階へと歩を進めていった。



「おっと、忘れてた。」



 しかしすぐに何かを思い出したかのように振り返る。そして先ほど地面に投げ捨てられた翔太の剣を拾い上げる。



「まあこのくらい捨てておいてもいいかもしれないけど……腰に差せばいいのかな?」



 翔太とリリアで手一杯で、持つことができなかったため無理やり腰のベルトに差し込み、ベルトをきつく締める。なんとか落ちないようにはできたが、独特の異物感からか、二宮はすこし歩きづらそうにする。



「うっ……意外と重いわ……これ。」



 そう言って今度こそ二宮はこの場を後にするのだった。







「お、帰ってきた……ってこれはどういうことだい?」



 二人を心配して入り口にテントを移し待っていたサリア達の目に入ってきたのは気絶した二人を抱えた少女の姿だ。サリアは最悪の事態を想像し、少女に向け剣を構える。



「どういうわけか知らないけど……君の抱えてるその二人。それは私にとって大切な仲間なんだ。力ずくでも返してもらうよ。」


「えっと……違うんです。私は別にこの二人に危害を加えるつもりは……」


「問答無用! 二人の仇っ!」



 サリアは二宮に向けていた剣でそのまま突きを放つ。ブレもなく、綺麗な構えから放たれた刺突は空気を切り裂き二宮を貫かんと襲いかかる。

 二宮は二人を投げ捨て、その突きをすんでのところで回避するものの、それは予想していたようで回避する度にその先を剣が通り過ぎる。



「危なっ! ちょっ、やめて!」


「はぁっ! 《フレイム》!」



 そして剣から発せられた炎が地を這い回りさらに回避する道を潰して行く。次第に二宮は回避できなくなり、その体を焼かれ、切り裂かれてゆく。だが……



「……ッ! いい加減にして! 《スプラッシュレイン》」



 空から歪な水塊が降り注ぐ。普通ではありえないほどの水量が雨のように無数に降り注ぐ様は異様としか言えないものだ。その水はサリアの魔法を打ち消し、行動を全てキャンセルさせた。



「私は! あなたの敵じゃない! というよりも大宮くんの敵じゃない!」


「……あぇ?」






「すいませんでしたっ!」



 事情を話すと女性……サリアさんが頭を下げる。そのあまりに堂々とした謝罪についつい許してしまった。



「いやー翔太さんのことだからどうせ殴ってきて倒して終わりだろうと思ってたんだけどまさか改心させちゃうとはね。そりゃ予想できないよね。」


「ひどい言い草だけど案外間違っちゃいないわね。実際殴って倒されたわけだし。」


「んじゃ殴って倒したあと仲間になれ! ってされた感じかい? うわー……さすが翔太さん。鬼畜だねぇ。」



 言ってしまえばそうなんだけど言葉に起こすとすごい陳腐な……そんな流れで涙して仲間になっちゃったのが急に恥ずかしくなってきた……



「……まあそれでもいいの。雰囲気に負けただけの気はするけども私の決意は変わらないし。」


「顔真っ赤だけどね。実はすごい恥ずかしいんでしょ?」


「〜〜〜ッ!」



 心の内を見抜かれたことに苛立ちサリア……さんに軽く蹴りを入れる。サリアさんもわかっていたのかかわすことはせずに笑って受け止める。



「あははっ、僕なんだか君と仲良くなれそうな気がするな。」


「うるさいっ、ばか!」


「サリアさーん。どうしたんですか?」



 どこからか現れた少年はサリアさんに語りかける。体は小さく、顔つきも幼いものだがその体つきは子供のものとは思えなかった。細く、目立たないように鍛えているけど私にはわかる。



「ああ、ごめんごめん。翔太さん達が帰ってきたよ。その辺のことも合わせて二宮さんも一旦テント戻ろうか」


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