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96.魔法詠唱

100話到達

タイトル変更しました


「二宮……お前なんでここに……いやそれよりも!」



 フォウルを離せ。俺がそう言う前に二宮が腕を振りフォウルを投げ捨てた。



「フォウルッ!?」


「大丈夫。死んではいない。ギリギリで急所外されちゃったからね……あと一体何でできてんだってくらい無駄に硬いし……まあそれでももってあと数秒だろうけど。」



 俺はフォウルの元へ駆け寄ると、フォウルは何が起こったのか分からないように目を震えさせ、虚空を見つめていた。



「……これはどういうつもりだよ二宮っ! 俺の親友になにしやがるっ!」


「命令でね。フォウルってのを殺しに来たの。たまたま先に殺せて良かったわ。私はそこの遺跡の中にいるから……もし復讐するつもりならいつでも来てね。ま、来れるかどうかわからないけど。」



 そう言うと二宮は大木の陰に消えてゆく。おそらくあそこが遺跡の入口だったんだろう。それよりも!



「フォウルッ!」



 胸を貫かれ血を流しているフォウルの顔から次第に血の気が消えてゆく。フォウルは小刻みに震えており、体はだんだんと冷たく死人のそれへと変貌して行く。……間違いない、このままだともうフォウルは死んでしまう。どうすれば……どうすればフォウルを……そうだ!


 あることを思い出し自分の持ち物を急いで漁る。探しているのはもちろん……



「あった……これなら……」



 取り出したのはニコさんにもらった丸薬。それをフォウルに飲ませようとするもその瞬間ニコさんに言われた言葉を思い出す。

『ーーエネルギーが足りてなければ逆に死ぬーー』

 そんな薬を、今のフォウルに飲ませて大丈夫なのか。下手をすればトドメを刺すことになってしまうんじゃないか。そんな考えが逡巡する

 そんなことを考えていると、不意に俺の腕が掴まれる。弱々しく、今にも死んでしまいそうな目でフォウルが俺に訴えかけてくる……覚悟は決まっているということか。



「悪い、フォウル。死んだら俺を恨んでくれ。」



 フォウルに丸薬を飲ませると、みるみるうちに傷が塞がってゆく。しかしフォウルは目に見えて衰弱してゆく……頼む……フォウルを……俺の親友を死なせないでくれ……

 そんな願いが届いたのか、フォウルが弱々しく息を吹き返す。以前死にかけであることには変わりないが、スレスレで生きている。


 

「よかっ……たぁ……」



 フォウルが生きていたことに、俺は大きく安堵の息を漏らす。本当に良かった。とりあえず今は休もう。そうだ、前の街まで戻ってフォウルを休ませよう。そう思ってフォウルを担ごうとすると足がもつれて転ぶ。あれ……おかしいな。疲れてんのかな……

 そんなことを思いながら立ち上がると、誰かの手が伸びフォウルを持ち上げる。



「いやぁ、久しぶりだね! ……なんでこんなことになってるの?」


「フォウルさんだけじゃなくてショウタさんもすごい怪我じゃないですか……大丈夫ですか?」


「さすが師匠。そんな怪我するまで戦うなんて。尊敬します。」



 ……こんな短い間に、いったい何人と再会するのか。いや、今度は嬉しい再会だ。



「サリア……リリアに……グレンも……何でここに?」


「それはこっちのセリフなんだけどね……まあ積もる話もあるだろうし僕たちの拠点まで行こう。すぐそこにテント建ててあるんだ。」

 


 そう言ってサリアはさっさと歩いて行ってしまう。その言葉尻からはどこか呆れたような怒ったような雰囲気を感じられた。



「なんで怒ってんだあいつ……」


「まあ……お二人が生死不明のまま今まで旅してましたからね。サリアちゃんも照れてるんですよ、きっと。」



 そういやそうだったな。サリア達からしたら俺たちが生きてるかどうかすらも分からなかったのか。……ってかサリアちゃんって何よ? いつの間にそんな仲よさげになってるわけ?



「姉さん結構責任感じてたみたいですからね。夜に隠れて泣いてたりもしましたよ。」


「お前それは黙っといてやれよ……」



 隠れて泣いてたのを暴露されるとかどんな辱めだよ。……後で謝っておこう。



「何してるんだよ! 早く着いてきなよ!」



 あ、はい。ごめんなさい。





 サリア達の拠点というのは木の陰になって目立たないようになっている場所だった。地面は平らに慣らされており、その上からリリア達が手慣れた手つきでテントを張り、サリアはフォウルの介抱をする。



「万物の源であり全ての母なる水よ、かの者を癒しその体に安らぎを《ファストヒール》」



 サリアが魔法を唱えるとフォウルの体を優しい光が包み込む。心なしか少し顔色がマシになったように見えるな。



「……よし、とりあえずフォウル君には魔法で応急手当しておいたから。まあまだかなり衰弱してるから安静にしておかないとダメだけどね。」


「ありがとう。助かった。」


「貸し一つにしておくよ。ついでに翔太くんも治療してあげようか?」


「いや、いらない。俺の場合もう傷は残ってねえし」



 あと治癒魔法効かないし。



「っていうかその魔法使う前の口上みたいなの何?」



 聞いたことない口上だった。少なくとも俺は恥ずかしくて言えない。



「詠唱も知らないのか……魔法を使うときにイメージしやすくする為の暗示……いや、触媒みたいなものだよ。明確な言葉を通じて魔力をより具体的に魔法へと昇華するんだ。実は省略されてるだけでどの魔法にも詠唱はあるよ。みんな自分用に改変してたりするから口上自体は違ったりもするけど。」


「へー……なるほど。便利なもんだな。」


「まあ便利といえば便利なんだけどね。剣振りながらとかだと結構舌噛んで言えなくなったりするよ。」



 ……魔法世界なのにそんなしょぼい理由で魔法が使えなくなるとか……なんかすっげぇバカバカしい。



 100話いったということでタイトルを「非才の剣士の英雄譚」から「例え世界違っても」に変更しました。これで読んでくれる人が増えたら嬉しいです。減ったらまた変えるか戻すかします。その辺割とふわっとしてます。

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