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10.引きこもり

「なんで俺なんかが転移してきたのかな…」



  この世界に来て幾度となく考えたことを吐き出す。今日はベットに倒れ込んだまま、部屋から出ていない。途中メイドさんが食事を運んでくれたけど、その食事にも手をつけていない。立派な引きこもりだ。



「このまま生きていく意味ってあるのかな……この世界で何もできない俺がこの世界に生きる意味って……」



 俺の頭の中では二人の泣いている場面がリピートされる。何度も何度も。


 お調子者で俺をからかってばかりの坂本。人をイラつかせるにやけるような笑い顔ばかり見て来たからあいつの泣き顔なんて見るのは初めてだった。


 いつも笑顔で俺を癒してくれるゆき

昔は泣き虫だったからよく泣いているのは見てきたけど、今回ほど本気で泣いているのを見たことはない。


 何度も死にたいと思ったが、その度にゆきと坂本の泣き顔が浮かび、俺を思いとどまらせた。


 やはり努力なんて報われない。

 いくら努力しても無駄になる。この世界は元いた世界とは違うのだ。努力ではなく才能が全て。そんな世界で剣を振って努力なんてものに縋っていた俺はなんて馬鹿だったんだ。現実見ろよ、バカ。


  気がつくと運ばれて来た料理はすっかり冷めていた。日本の料理ほど美味しいものではないが心を込めて作ってくれたことがよくわかる料理。しかし冷めてしまえばいくら心がこもっていようと伝わらず、食べる気にもならない。


  窓から差し込めていた光は次第に消え、部屋を暗く染めてゆく。外からは鳥の鳴く声が聞こえ、夜になったことをより鮮明に感じさせれる。


  するとしばらくして、部屋の扉がノックされる。どうせまた料理を運んで来てくれたのだろうと俺は無視することにしたが、ノックの音は次第に激しくなり、ついには怒号が混ざるようになった。



「開けろ! いるんだろ!

出てこいこの野郎!」



 扉の外から聞こえてきたのはここ数日聞き慣れたおっさんの声だった。

坂本の出番が…

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