1.転移
初投稿です
「いよっ……しゃぁ!!」
ベンチで昼食を取る女子生徒達の笑い声や、部活動のかけ声が聞こえる中、ひときわ大きな俺の喜びの声が周囲に響いた。
最高の気分だった。
たった今俺、大宮翔太は昔からずっと好きだった幼馴染、神城ゆきに告白し、OKをもらった。
ゆきは小柄で肩にかかる程度の黒髪に、くりっとした目の可愛らしい容姿をしており、さらに誰にでも優しい性格でクラスで最も人気のある女子だ。
あとめっちゃかわいい。天使
それに対して俺は幼馴染というアドバンテージはあるものの、中肉中背、特に運動ができるわけでもなく、成績も普通、よくて上の下くらい。顔も俺よりいい奴はいくらでもいる程度のもので、ゆきとは全く釣り合わないと思って今まで告白できないでいた。
でもそうやってうじうじ悩んでいるのを見かねたのか、友人である坂本弘樹が
「いつまでもユキちゃん待たせてんな! さっさと告白してこい!」と、ゆきを俺の名前を使い昼休みの校舎裏に呼び出してくれた。
他人に背中を押されて告白なんて情けない……とも思ったが、ここで踏み出すことができないよりかは万倍マシだ。そう思った俺半ばヤケクソで今まで自分の中で募らせていた恋心をゆきに全て告白した。
いざ本番となると、緊張で心臓が高鳴り、口もろくに回らずうまく言葉が出せなかった。
挙動不審で、告白とも言えないような言葉ばかりが口をついてでる。しかしこれではいけないと、はっきり伝えようと思い、数秒の静寂の後、ゆきをじっと見据え一番伝えたかった言葉を伝えた。
「好きです」
ただ一言、何一つ飾りのない言葉。しかし俺が最も伝えたかった言葉だ。
その言葉を聞いたゆきは赤面し、涙が頬をつたう。ゆきの涙に俺が動揺するよりも先に、ゆきはぱっと花が咲いたような笑顔で俺に笑いかけた。
「私も好きです」
こうして俺の告白は成功した。
「叫びたいくらい嬉しいのは私も同じだよ
だってずっと待ってたのに翔太全然告白してくれなかったんだもん」
未だ流れ出る涙を指でぬぐいながらゆきがそう言った。泣きながら笑ってる姿も、可愛いと思える。
「いや、まぁその……失敗したらとか考えて中々勇気が出なかったんだよ、ごめんな。」
「……しょーがないなぁ、その分これから彼氏彼女として一緒にいろんなとこ行こうね?」
「あぁ!もちろんだ!」
そんな幸せいっぱいな会話をしていると、午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴りひびく。幸せな時間は早く過ぎ去るものだということを痛感させられた俺たちは、違いに目を合わせてまた笑い合う。
「じゃあ戻ろっか」
そう言いゆきは右手をこちらに差し出して来る。俺は苦笑いで恥ずかしさを隠しつつ、その手を取った。柔らかく、小さなゆきの手。今までも何度か握ったことがあるが、今回はなんだか違う……気がする。その手の感触を堪能しながら、ゆきと一緒に教室へ急ぎ足で駆けていった。
教室に戻ると手を繋いで戻ってきた俺たちを見てクラスメイトがざわめき出す。男子の中からは「あの神城さんが……」とか「嘘だろ……」と悲観する声が上がり、女子からは冷やかしと祝福の声が上がる。ゆきに憧れていた男子も多かったのだろう、かなりの数の男子が露骨に肩を落とし、俺に殺気を向けてくる。
ちなみに落ち込んでいる女子はいない。まったくいない。一人もいない。……いいけどね別に。
「はーい、皆さん、授業を始めますよー。席についてくださーい。」
クラスメイトが騒ぐ中、教室にやってきた先生が日誌を机に軽く叩きつけて皆を黙らせ、授業を始めようとする。一種のルーティーンと化したその行為に、皆話すのをやめ、日直の掛け声とともに挨拶が開始される。
とはいえクラスメイト達の殺気が収まったわけではない。ぞくりという悪寒が走り、背中に嫌な汗をかく。
みんな殺気向けすぎじゃない?
でも俺がみんなの立場なら……
うん! 殺気向けるな!
そんなことを考えていると隣の席の坂本が小声で話しかけて来た。
「どうやら成功したみてーだな。おめでとう……って祝ってやりてぇとこだけどそう思ってんのは俺だけみたいだな。」
坂本はそう言って悪戯げに笑う。
「ほんと……俺さっき5〜6発足蹴られたんだけど。まあ気持ちはわかるけどそんなに気に食わないかね」
「まーそりゃクラスの人気者神城をお前みたいな冴えない男子が射止めたとありゃみんな恨むだろうよ。俺みたいな美男子ならともかく」
「お前が美男子とか何の冗談だよ。美男子ってのは瀬川みたいなやつのことを言うんだよ」
「ははっ、確かに。あいつなら誰も文句言えねぇだろうな」
そう、坂本も決して顔は悪くない。むしろいい方だ。本人には絶対に言ってやらないが。
だがうちのクラスにはそんな坂本が霞むほどイケメンな男子がいる。
瀬川悠だ。
成績優秀、運動神経抜群、さらに少女漫画に出て来る優しげな王子様みたいな顔立ちをしている。これだけでも十分モテる要素を詰め込みましたというような男だというのに本人はそれに驕ることなく謙虚に、物腰柔らかに他人と接する。いわば完璧超人だ。
「ま、でも神城に選ばれたのは瀬川でも俺でもなくお前なんだ。神城の彼氏として恥ずかしくないよう胸張ってけや」
「はいはい、せいぜい頑張りますよ」
そんなやりとりをしていると、突如教室の床が強く光り出す。青色の光は、床から天井へと登るように強く発光している。
「え?なにこれ」「なんかのドッキリ?」「み、みなさん落ち着いてください!」
クラス中が騒然としている中、床の光は次第に強くなり……やがて光が消えた後には、誰一人教室には存在しなかった
短い…
2017年5/13日修正
春休みの校舎裏→昼休みの校舎裏
何を間違えたんや……