燃える山
火山島で一夜を明かしたギラ達。
翌日再び火山に向けて歩き出す。
その島は今は活動を再開しており噴火の可能性も否定は出来ない。
とりあえずそれも考慮に入れつつ歩き出す。
「ふむ、距離は稼げていたようですね」
「とはいえ噴火しませんよね」
「大規模噴火は流石にないと思うよ」
「それは同意だ、ただ小規模ならあり得る」
大規模噴火が起こったら大ニュースである。
とはいえ小規模ならあり得るのが現実だろう。
「それにしてもアレックスはすっかり懐いちゃってますね」
「野生動物に懐かれるような人でしたかね」
「とはいえカイトムササビか、世界は広いものだ」
「絶滅したって言われるんですよね」
ギラに懐いてしまったアレックス。
恋夜の話では絶滅したと言われるカイトムササビらしい。
なぜそんなものが生きているのか。
やはりこの島で生き残っていたのか。
そもそもこの島は人が訪れる事がまずない。
その関係で生き残っていた可能性もあるのだろう。
「まあいいさ、懐いてしまった以上大切にしてやるといい」
「はぁ、ムササビって何食べるんですかね」
「そこはメーヌがお教えしますね」
「ギラさんって動物には懐かれますわよね、街でもそうですが」
実際ギラは動物には懐かれるようである。
とはいえ本人が面倒な性格なのでいいとは思っていない。
そのせいなのだろうか、アレックスにも懐かれている。
他の野生動物もなぜか警戒を緩めているのを見たリック達はそれに納得していた。
「それより火山に向けて進めてるのよね?」
「進めてるはずだが、なんか変な感じだね」
「待って、方位磁石が狂ってる」
「本当ですっ」
どうやら方位磁石を狂わせる何かがあるらしい。
とはいえ昼前に火山に到達出来れば、ソルバードに戻るには時間は足りる。
それも考慮に入れつつ方向を考える。
「上陸した位置からこっち、つまり方角は…あっちだね」
「こういうときのソウさんは頼りになりますわね」
「独特の勘とかあるんでしょうね」
「凄いのです」
ソウの感覚を頼りに歩き出す。
この島には当然魔物も出る。
ジャイアントモンスターが出ても不思議ではないと、ギラ達は思っていた。
そうしてソウについていくと森を抜ける事には成功する。
あとは火山の麓まで一直線である。
ギラ達は魔物に警戒しつつも火山に向かって走る。
「もう少しだ」
「とはいえ油断は出来ないよね」
「ええ、ジャイアントモンスターが出る可能性はありますよ」
「あれって未知のものも含めるとどれだけいるのやら」
そうして走り火山の麓へ到着する。
「やっと麓か、さっさと写真に収めちまうよ」
「はーい、では撮りますね」
「やっとですか」
「これで帰れそうですわね」
そうして無事に写真に収めたギラ達。
だが簡単には帰れないようである。
「やっぱり出ましたか」
「ジャイアントモンスター…」
「大猿のジャイアントモンスターか、森の外まで出てくるとはね」
「倒すしかないんですよね」
それは言うまでもなく。
ちなみにこの猿のジャイアントモンスターはアイアンエイプ。
鉄のように硬い体毛が特徴の大猿だ。
当然のようにその守りは堅いのである。
「とりあえず倒しますか」
「負けませんよっ」
「なるようになりますよね?」
「そこはなんとでもなる、さっさと倒すよ」
そうして向こうも敵と認識したようだ。
生きて帰るべくアイアンエイプに勝負を挑む。
「この猿、体毛がクッソ硬いんですが」
「鉄のように硬い体毛か、魔法なら通るかね」
「その前にすべき事、あるでしょ」
「はい!ソウルドレイン!」
アイアンエイプから魔法を覚えるリック。
だが相手は凶暴化する様子はない。
凶暴化しない相手もいるようである。
「鋼鉄の守りよ、全ての者に鎧となれ!」
「こいつはいい魔法だ、魔法や属性技をメインに組み立てろ!そっちなら効く!」
「合点です!」
「鉄は火に弱いケースも多い、ならば私の炎魔法で焼き尽くしてくれる」
リックが覚えたのは味方全体を鋼鉄のような守りで包む魔法だ。
それは単なる補助魔法ではなくとても高性能なものである。
そうして物理ではなく魔力依存の攻撃をメインに組み立てる。
鉄壁のアイアンエイプもそれには弱いようで、面白いように攻撃が効く。
そのまま一気に押し切りアイアンエイプを沈める。
「ふぅ、なんとか倒せましたか」
「だね、では記録を取るから待っていたまえ」
どうやら恋夜はそれを記録に取っているようだ。
以前のサンドドラゴンのときも記録に取っていたようである。
「それにしてもなぜ記録に?」
「希少な存在はそれだけで本になる、それも悪くなかろう」
「恋夜らしいわね」
「なのです、恋夜さんらしいです」
そうして恋夜はアイアンエイプを記録する。
写真には収めたので帰ろうとすると。
「揺れてる!?」
「この規模の揺れなら小規模噴火か!」
「はわわっ、とにかくソルバードまで走りますよ!」
「小規模とはいえ噴火は危険ですわ!」
ソルバードに向かって走るギラ達。
揺れは小規模ながらも、それは火山の噴火を意味していた。
巻き込まれたくはないと全力でダッシュする。
揺れに足元を取られつつもその足は止まらない。
ソルバードに向かい走り続ける。
「見えた!さっさと乗り込みな!」
「メーヌ!全速前進!」
「合点です!発進!」
なんとか島からの離脱には成功した。
空から火山の噴火を眺めるギラ達。
それは自然の力を目の前で見せつけられる。
この島に人の手が入らない理由も分かった気がした。
「火山の噴火って凄いですねぇ」
「大規模ならこんなものじゃないよ、この島が燃える程度にはね」
「とはいえ島の状態を見るに長い間大規模噴火は起きていませんね」
「そうだね、小規模噴火は何度もあったようだが」
とりあえずそのまま火山島を離脱してミリストスへ戻る。
そんな空路で再びあいつが現れる。
「何か巨大な反応!回避します!」
「あいつは…プテラゲイズでしたっけ」
「あんな馬鹿みたいに大きな魔物がいるんですの」
「凄いねぇ、私達がアリみたいだったよ」
プテラゲイズがソルバードを横切る。
その大きすぎる姿に相変わらず度肝を抜かれる。
とはいえ今はそれは気にしないでおく事に。
そうしてそのままミリストスへとなんとか戻ったギラ達。
そのままアヌシスから次の秘境について聞く事に。
次はどこへ行くのか、不思議と楽しんでいるギラの姿がそこにあった。