火山の島
ミリストスのアヌシスの下に報告に戻るギラ達。
そこで次の秘境の場所を聞く事となる。
当然のように次も危険と隣り合わせになる。
覚悟はとっくに決まっているので気にしないけどね。
「どうでしょうか」
「ふむ、確かに素晴らしい写真ですね」
「よかった、安心しました」
「写真ならカメラの性能もあるしね」
そしてアヌシスは次の秘境について話し始める。
「では次ですね、次はカルド火山をお願い出来ますか」
「カルド火山?この大陸に火山なんてありましたっけ?」
「その火山はアルセイムから南に行った先にある火山島だと聞いています」
「火山島って、またハードそうな場所を指名しますね」
だがどうせ危険な場所など今さらである。
それを引き受けカルド火山へすぐに向かう事に。
「ああ、それとなるべく近くから撮影してくださいね」
「近くから…」
「まあやるだけやってみよう、危険など慣れたものだ」
「ではよろしくお願いしますね」
そうして屋敷を出てカルド火山へ向かう準備をする。
すると思わぬ人に出会う。
「ん?お前、ギラか、何してるんだ」
「ああ、誰かと思えばダンさんでしたか」
それは懐かしい顔のダンだった。
彼は今も冒険者としてその腕を磨いているらしい。
「そんな大がかりな準備して戦争でも行くのかよ」
「そんなはずないでしょう、ある人の依頼で一日で終わらない依頼なんです」
その言葉にダンは興味を示す。
とはいえ彼にその依頼は無理なのだが。
「あんた、本当に物好きだな、でもそれでこそ俺のライバルだ」
「勝手にライバルにしないでもらえますか、こっちは命がけなのに」
ダンはギラにどこへ行くのか尋ねる。
「南にある火山島まで一飛びですよ、なるようになります」
「火山島なぁ、そういや最近その島は活動再開したとか聞いたし、気をつけろよ」
ダンの助言に一応お礼を言っておく。
「それはどうも、では私達は行きますから」
「死んだら許さねぇぞー」
そうしてダンと別れソルバードでカルド島へと飛ぶ。
そこは秘境と呼ぶには相応しく、人の手が入らない火山島だ。
そんな天然の要塞に勝負を挑む事となる。
「さて、カルド島に来ましたけど」
「出来るだけ近くって言ってましたよね」
「なら火口とは言わんが、せめて麓かね」
「そうですね、火山の活動再開っていうのも気になりますし、気をつけましょう」
そうして島の探索が始まる。
火山に近づくのはかなりの距離を歩く必要がある。
今は時間的に正午過ぎだ。
夕暮れまでには距離を稼ぎたいところである。
「この島暑いわねぇ」
「火山が活動してるからなのです、エレネも暑いのは嫌なのです」
「こればかりは我慢だよね」
「ですね、心頭滅却すればなんとやらですよ」
そのまま火山の方向に歩いていく。
だが島は思ったよりも広いようで、火山にはなかなか近づけない。
魔物も出るし危険な野生動物も生息している。
そんな危険だらけの島で火山を目指すデンジャーなお仕事だ。
「はぁ、ムシムシしますねぇ」
「蒸し暑さはなんともし難いね、服が張り付いちまう」
「上着だけでも脱ぎますか?」
「我慢した方がいいな、薄着で動物に引っかかれでもしたら危険だろう」
恋夜の言う事も尤もなので、そのままにしておく。
すると上から何かが落ちてきた。
「うぷっ、なんですか?」
「ギラ様の顔に何か張り付いてますよ」
「これってムササビですか?」
「こいつは…まさか絶滅したと思っていたカイトムササビじゃないのか」
恋夜曰くそのムササビはカイトムササビという絶滅した動物に似ているという。
こういう秘境ならそれが生き残っている可能性もあるかもしれない。
「ほら、さっさと帰りなさい」
「…完全にギラ様に懐いてますけど」
「絶滅したって言ってたのになんでこんなところに…」
「そういう話もあるのよ、絶滅したはずの生き物が秘境に生き残ってたとかね」
どうやらそのカイトムササビらしきムササビはギラに完全に懐いてしまっていた。
所謂一目惚れなのかもしれない。
ギラもそれに少し困り顔である。
「どうします?離れようとしませんけど」
「いっそペットにしちまうかね」
「勘弁してもらえませんかね」
「でもすっかり懐いて離れようとしませんわよ」
そのムササビはギラから離れようとしない。
とはいえ希少な生き物なのだろうし連れていくのも問題になりそうだ。
ギラは少し頭を抱える。
「分かりましたよ、連れていけばいいんでしょう?」
「意外と簡単に折れたね」
「実は意外と優しいんですかね」
「ギラ様は人間以外には基本的に優しいですっ」
それでそのムササビの名前とか。
「名前どうすんのさ、ムササビって呼ぶのもあれだろ」
「名前ですか、ならアレックスで」
「アレックス…なんか凄いセンスですね」
「ムササビのアレックスって凄いね」
それにアレックスも喜んでいるようだ。
そんなわけでそのムササビはアレックスと名づけられた、パパパパウアー!
「それよりさっさと火山との距離詰めますよ、明日には麓に着きたいですし」
「だね、行くよ」
「絶滅したはずのカイトムササビ…」
「世界は広いものだな」
そうしてアレックスを仲間にして火山に向けて歩き出す。
しばらく歩いたところで日が落ち始める。
「そろそろ日が落ちるわね、今日はここで過ごすわよ」
「だね、夜に下手に動くのは危険だ」
「では例のコテージハウスを使いますか」
「ですね、ご飯はお任せを」
今日はここで一泊する事に。
明日には火山の麓に到達し写真に収める事を決める。
距離は稼いだので明日には麓に到達出来るだろう。
「明日には麓ですかね」
「ですね、火山の活動も少し心配ではありますけど」
「まあ噴火の危険はないと信じたいところよ」
「なのです、噴火したら死ぬのです」
さらっと怖い事を言うものだ。
とはいえ仮に噴火したら逃げなくてはいけない。
火山からソルバードまで走れる体力は自信がない。
噴火しないと信じて夜を過ごす事に。
「まあ噴火するなら前兆として揺れるだろうしね」
「そうね、揺れる様子はないから安心と見ていいと思うわ」
「死にたくないですしね」
「あはは、まあ大丈夫ですよね?」
そうして夜は更けていく。
明日こそは麓に到達する、そう決めた。
ギラ達は火山を心配しつつ床に就いたのだった。
火山の恐怖はその噴火に全てがあるのだから。
火山島での不安な夜はそうして過ぎていくのである。