砂漠の部族
オアシスで一夜を明かしたギラ達。
今日からは蜃気楼の塔を探すべく砂漠の南部へと足を踏み入れる。
ここから先は未開の地、油断は出来ない。
そうして砂漠の南部へと進んでいく。
「本当に魔物が強いですね」
「でも少しいい魔法が覚えられますよ」
「リックらしいねぇ」
「蜃気楼の塔ってどこにあるんですかね」
どこにあるかも分からないそれを目指し砂漠を彷徨う。
砂漠を歩いていると遠くに何かが見えた。
ギラ達はそっちへと行ってみる。
「ここは…」
「集落?こんな砂漠にですか」
「砂漠に部族でも住んでいるのかしら」
「可能性はあるだろうね、何しろ未開の地だよ」
すると人が姿を見せる。
「何者だ!」
「えっと、どうします?」
「敵対する意思がない事を示せ」
「わ、分かりました」
とりあえずその男に敵対する意思がない事を伝える。
「一応訊くが、こんな辺境の地に何をしにきた?」
「えっと、蜃気楼の塔を探しにきたんですが…」
その言葉に部族の男は驚いた顔をする。
「ふむ、なら少しきてくれ」
「はぁ、別に構いませんけど」
「下手に抵抗しない方がよさそうか」
「だね、万が一のときまで抵抗はするな」
そうして部族の男に連れられ里の中に入っていく。
「族長、奇妙な者達を連れてきました」
建物の中から声がする。
どうやら族長のようだ。
そのまま中へと入るギラ達。
「それで、こんな辺境の地に何をしにきたのですか」
「蜃気楼の塔を探しにきました」
「それ以上の目的はないよ」
「変に荒らすような真似もしないわよ」
その言葉に族長は口を開く。
「蜃気楼の塔、あれは我が部族でも幻とされるもの、本気ですか」
「本気です、そのために来たんですから」
「何か知ってるんですか」
「知っているなら教えて欲しいのだが」
族長の話では部族にとってもそれは幻とされるらしい。
ただそれがあるとされる場所なら教えられるという。
「とりあえず教えていただけますか」
「行くだけ行ってみないと始まりませんしね」
「というわけなんだが」
「蜃気楼の塔は南西の方角にあると言われます、それ以上は詳しくは」
どうやら南西の方角にあるとの事。
それ以上は言いにくいそうだ。
「分かりました、では行ってみるとします」
「それでは我々は向かいますわね」
「手荒に扱ってくれなくて感謝する」
「それではね」
そう言ってギラ達は族長の家を出る。
そして里を出発し南西の方角へと歩き始める。
「こっちで合ってるね?」
「はい、メーヌが覚えているので」
「私もそれは記憶してますよ」
「なら信じてよさそうですね、とにかくそっちへ進みますよ」
メーヌとテュトスの言う通りの方角へと進むギラ達。
二人の位置情報機能を頼りに南西へと進んでいく。
だが目的は蜃気楼の塔、簡単に見つかるはずもない。
そのままさらに南西へと進んでいく。
「塔なんて姿形もないじゃないさ」
「やはり秘境というだけはあるのか」
「それでも進むしかありませんね」
「はい、南西には進めていますから」
メーヌとテュトスがそう言うのなら進めていると信じる。
さっさと終わらせないと日が落ちてしまうからだ。
そうして南西へ進んでいくと大きな雄叫びが聞こえた。
「なんだ!?」
「まさかジャイアントモンスターでは!」
「そう考えると近づいてる可能性はある、行ってみるよ」
「了解なのです」
そうしてその雄叫びの聞こえた方へと進む。
そこには巨大な竜の姿があった。
「やっぱりか」
「ん?背後に何か見えませんか」
「背後?あれは…建物か?」
「ならこいつを倒して確かめるまでです」
そうしてジャイアントモンスターとの戦いに挑む。
ちなみにそのモンスターはサンドドラゴン、この砂漠を根城にする地竜だ。
「ソウルドレイン!」
「凶暴化しない?こいつやっぱりただのジャイアントモンスターじゃなさそうだ」
「なら好都合ですよ、さっさと倒してしまいますよ」
そうしてサンドドラゴンに正面から斬りかかる。
魔法や暗器の攻撃も使うが今一つ効果が薄い。
その鱗はやはり分厚いという事か。
「視界を奪う砂の風よ、ここに吹き荒れろ!」
「やっぱりサンドドラゴンってだけはあるね」
「サーチ…こいつの弱点は水ですよ!」
「水…ならリックさん!」
ギラはリックに指示を飛ばす。
以前覚えた水の魔法がある、そいつを使うように言う。
「荒れ狂う波よ、襲いかかれ!」
「効いているな、今ならチャンスだ!一気に陥落させるぞ!」
「任せな!」
「滅多斬りにしてやりますわ!」
そうしてサンドドラゴンは地に伏せる。
戦力は足りているので弱点さえ分かってしまえばあとは簡単だ。
「さて、あれは塔ですよね」
「間違いないね、行ってみようか」
そうしてその塔らしきものの方へと進む。
そこにあったのは古い遺跡の塔だった。
その塔は蜃気楼のように揺らめいている、名前の通りだった。
「とりあえず写真に収めましょう」
「ですね、最初の秘境はなんとか達成したようです」
「それじゃ引き返すか、日が落ちると危険だしね」
そうしてギラ達は来た道を引き返す。
そのまま道を進み部族の集落へと戻ってきた。
「おや、戻ってきたのですか」
「ええ、蜃気楼の塔も無事に見つけましたよ」
その言葉に族長は驚きを隠せない。
だがそれはギラ達を認めるには充分すぎる話でもあった。
「それでこのまま帰るのですか?」
「そうしたいんだが、そろそろ夕方だ、夜の砂漠は危険だからね」
「ええ、なので夜が明けてから帰ります」
それに対し族長はここに泊まっていかないかと提案する。
蜃気楼の塔を見つけたギラ達は英雄だという。
そんなつもりはないものの宿を貸してくれるなら喜んで甘える事に。
そうして日が落ち夜になっていく。
「さて、次はどこへ行かされるのかね」
「どこだろうと構いませんよ、秘境なんて面白そうですから」
「ギラ様って変人ホイホイなのにそれを楽しんでますよね」
「困った人だよね、ホント」
部族の集落で食べた食事は独特な味がした。
都会では食べられない味でもあった。
スパイスの効いた少し辛い料理だが激辛でもない。
そんな香りと辛味の料理を堪能したのだった。
そうして夜は更けていく。
砂漠の部族、蜃気楼の塔、世の中には知らない事もあるものだ。
知的好奇心はあるギラらしさでもあった。
次の秘境はどこへ行かされるのか、少し楽しみにしているのである。
夜明けと共にミリストスへと帰還するのである。