陽炎の先
アルセイムで修業を続けるギラ達。
今日の討伐依頼は砂漠での魔物退治だ。
以前竜と名乗る女性に出会った砂漠、彼女の事も気にかかる。
とりあえずそれを片隅に置き討伐対象を探す事に。
「今回のターゲットはブラックスコーピオンですね」
「なんかおもちゃにありそうな名前…」
「まあいいじゃない、今回もサクッと終わらせちゃいましょ」
「ですわね、負けてなんかやりませんわ」
そうしてブラックスコーピオンを探す。
黒い大サソリなので簡単に見つかるはずだとは思う。
そうして砂漠を歩いているとその暑さからか陽炎が見える。
「陽炎ですか、砂漠特有の現象ですね」
「陽炎自体は暑けりゃどこでも見れるがね、まあ砂漠のイメージは強いか」
「それよりブラックスコーピオンを探さないと」
そのままブラックスコーピオンを探す。
すると明らかにそれらしき足音を聞く。
その音の方向に振り返るとそこには大きな黒サソリがいた。
「背後を取られた!?構えなさい!」
「やってくれるね!」
まさかのバックアタックだ。
素早く陣形を組み相手の攻撃を凌ぐ。
「お返しですよ!ソウルドレイン!」
「凶暴化したよ!一気に畳みかけろ!」
「負けやしません!」
凶暴化したブラックスコーピオンが襲いかかる。
攻撃を素早く処理しつつ反撃に転じる。
「命を喰らう猛毒の一撃よ!」
「流石はサソリの魔物だ、そんじゃさっさと倒すよ!」
そうしてブラックスコーピオンを的確に処理する。
なんとか倒す事に成功し危機一髪である。
「まさか背後を取られるとか、油断したものですね」
「あのギラが背後を取られるとか魔物も多様なもんだ」
「まさかでしたねぇ」
「ですねっ、油断大敵ですっ」
そうして街に戻ろうとするとモレーアが何か変だと言う。
「ねえ、あの陽炎の向こうに何か見えない?」
「んー…確かに見えるね、遺跡みたいなもんが」
「こんなところに遺跡?興味深いな」
「なら行ってみるのです」
せっかくなのでその陽炎の方へと行ってみる。
そのまま陽炎へと近づくギラ達。
そして陽炎を越えた先には大きな遺跡があった。
「こいつは…」
「遺跡、いえ都市のようですね、少なくとも人が住めるだけはあります」
「つまりここは砂漠の都市の跡地か」
「でも外からは見えませんでしたよ?陽炎がカーテンになってるみたいで」
この遺跡に興味が湧くギラ達。
せっかくなので調べてみようという事になる。
「ふむ、やはり都市の跡地のようですよ」
「そういえば以前会った竜のお姉さんの話を覚えてますか」
「昔は竜がこの世界で生きていた、とかでしたか」
「つまりここは竜に関係する遺跡ですの?」
あのときの竜、フィーアはここでしか暮らせないと言っていた。
つまりこの砂漠には昔は竜が多く住んでいた。
この遺跡はそんな竜が住んでいた遺跡なのだろう。
そのまま遺跡を調べる事を続けるギラ達。
すると大きな建物に辿り着く。
「こいつはメインドーム的なものなのかね」
「中には入れるっぽいですし入ってみますか」
「あ、待ってくださいよ!」
「私達も行きましょうか」
そうしてその大きなドームのような建物へと入っていく。
その中には壁画があった。
壁画に描かれているのは竜と人が手を取り合う、そんな姿だった。
「昔は人と竜も手を取り合ってたのかね」
「なんかこういうのを見てると言葉も出ないなぁ」
「歴史の証明、そんな感じかしら」
「歴史はそれを許さなかった、そんな感じですか」
壁画を見て回っていると地下への階段を発見する。
「地下ですか、行ってみますか?」
「そうだな、あの壁画だけでは完全には理解は出来んからな」
「なら行ってみるですっ」
「僕としても興味がありますし、行きましょう」
そうして遺跡の地下へと進む。
「こいつは…驚いたな」
「地下にこんなに水が…凄いですよ」
「とりあえず進んでみますか」
「待て!」
ソウが素早く静止させる。
すると突然足場が水に沈んでしまった。
「こいつは一定間隔で浮き沈みを繰り返すね、素早く渡り切るよ」
「分かりました、では少し待機しますか」
少し待つと足場が再浮上する。
ギラ達はそれが沈む前に一気に駆け抜ける。
「仕掛けが分かっちまえば楽なもんさ」
「ソウはこういうのには素早く反応出来るから助かるな」
「やはり勘が鋭いという事なんですかね」
「野生児か何かですの?」
とりあえず足場を確認しつつ奥へと走り抜ける。
そして奥に到着するとそこには骨が転がっていた。
「骨?こいつは死後相当経過しているな、最低でも100年単位ぐらいだ」
「つまりここで死んだ…竜とかなんでしょうか」
悪いと思いつつもその骨の周辺を調べてみる。
するとそこにある明らかに怪しい玉座の下に隠し階段を見つける。
「明らかに怪しいですね」
「それでも行くんでしょう?」
「はい、行きますよ」
そうしてその階段を下へと進む。
「ふむ、こいつは…魔道書みたいだね」
「勝手に持ち出していいものなんですかね」
「どうせそのままにしてても忘れられちまう、なら使ってやればいいさ」
「恋夜さんなら覚えられますよねっ」
そういう事もあり、その魔道書は有難く使わせてもらうことにした。
それ以上は何もなさそうなのでそのまま遺跡から出る。
「それにしても砂漠にこんなものがあったとはね」
「忘れられた遺跡、なのでしょうか」
「かもしれないのです」
「それじゃ戻って討伐の報告しなきゃね」
そうしてギラ達はミリストスの冒険者ギルドへ戻り討伐の報告をする。
「さて、次はどうします?」
「そうですね、何か新しいものに巡り会いたいですよ」
「またまたぁ、ギラ様はただでさえ変人ホイホイなんですよ」
とはいえ修行ばかりで刺激が欲しいとは思ってしまう。
すると一人の貴族が頼みを聞いてくれる人を探していると情報があった。
それも面白そうだとその貴族に会ってみようという事に。
会いにいくのは明日にするとして、その貴族の事も気になる。
情報によればその貴族は珍しいものを求めているらしい。
それを手に入れてくれる人を探しているという事だろうか。
なんにしてもその貴族はミリストスの街外れの屋敷に住んでいるという。
珍しいものを求める貴族、神像のときのように世界中を飛び回るのだろうか。
だがそれは修行も兼ねられるので悪くはないだろう。
貴族は何を求めるのか。
それは今までの人脈を使う事になりそうな予感がする。
明日はその貴族に会いにいくのである。