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善意の仮面

カーミンスの宿で一泊した翌日の生誕祭。

リックは完全ではないものの動く分には問題はない程度に回復した。

そんなわけで本日は生誕祭、この街が一年で一番活気づく日である。


「朝から賑やかですねぇ、ふぁ」

「ギラ様は朝弱いのに早起きしますね」

「あはは、まあ楽しみなんでしょうね」

「なにか面白いものとかないですかねっ」


そうして街を散策する一行。

とりあえず朝食代わりに何か軽食でも摂る事に。

何かないかと探していると美味しそうな匂いがする。


「ふむ、マーボーまん、辛いものは好きですしこれをいただきますか」

「お嬢さんお目が高いね、これはオシドリの羽の新商品で本日お披露目なんだ」

「へぇ~、あのオシドリの羽が…なら四人分もらえますか」

「四人分入りました!」


そうしてマーボーまんを四人分購入し、かじりながら街を再度散策する。

それを食べ終わったあとギラがメーヌを呼ぶ。


「どうかされましたか?」

「あのマーボーまんの売り子のオシドリの羽、少し見張っててもらえますか」


以前の街で聞いた商人の失踪。

そして商談相手はオシドリの羽、本人達がいるのなら好都合だ。

ギラはメーヌに密かにそれを見張るように指示を出す。


「承知しました、ではリックさんには少し外すとお伝えください、では」


そう言ってメーヌは任務へと赴く。

ギラはリック達の下へ戻り今まで通り散策を再開する。


散策開始から数時間、祭りも徐々に活気づいてきた。

そんな中生誕祭のメインイベントの女神誕生の祝賀が教会で行われるとの事。

ギラ達はそれを見ようと教会の聖堂へと向かう。


一方のメーヌはオシドリの羽を隠れて監視する。

気配を消すなどお手のものだ、その言葉なども丁寧に記憶していく。


「どうだ?」

「やっぱり来てるな、聖女、あいつは危険な存在だ、消さねばならん」


聖女?それは教会のトップか何かだろうか?

引き続き言葉を記憶する。


「聖女を殺せば教会もそれの恐ろしさが分かる、狙いは祝賀の途中だ」

「なら居場所を確実に特定しろ、そうして出る前に殺す」


聖女を暗殺する?オシドリの羽は商人ギルドではないのか?

ギリギリまでその会話を記憶する事に。


「我ら大地の骨は正義と平和のために動く、そうだろう?」

「そうだな、我らを拒むのなら正義を以て示さねばならん」


その言葉にメーヌは衝撃を受ける。

だがそれが分かった以上、これ以上の監視は危険を招くと判断し、ギラの下へ戻る。

教会の聖堂の人混みの中で祝賀を待つギラの下にメーヌが戻ってくる。

そしてギラと少し席を外し監視の報告を伝える。


「オシドリの羽が大地の骨?つまりそれは表の顔と裏の顔という事ですか?」

「ええ、本人達の会話で確かにそう、あと以前の商人の件も恐らくは」


その言葉を聞いたギラは心の中でドス黒い炎が燃える。


「メーヌ、私は少し席を外します、リックさん達と祝賀を見ていなさい」

「奴らを殺すつもりですか?」


ギラの心の中ではドス黒い炎が燃え滾っていた。

街に被害は出さないと約束し、教会の聖女の居場所を探す事に。


「あれ?ギラさんは?」

「少し野暮用で席を外すそうですよ」

「なら私達だけでも見ておきましょうか」


そうしてメインイベントの始まりを告げる鐘が鳴った。

一方のギラは聖女を探していた。

教会の控室、あるいはバックグラウンドか。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


突然響く悲鳴。

聖女が殺された?ギラは声の方へと走る。


「おい、こいつは聖女じゃなくてシスターだぞ」

「そうか、まあ一人ぐらいよけいに殺しても誤差の範囲だろう」

「やれやれ、一人殺すのが誤差の範囲?脳味噌腐ってるんですかね」


気配もなくギラが暗殺者の背後に立つ。

それに暗殺者は驚愕し動きが止まる。


「なん…だとっ…!?」

「あなた達の調査は甘いようですね、それとも殺戮に快楽を感じる狂人ですか?」

「貴様は…そうか、ならば貴様もここで殺してくれる!」


ギラは大地の骨の頭領に悪人と認定されている。

とはいえその程度虫ケラを踏み殺すように些細な事でしかない。

そのタイミングで別の声がする。


「おい!早くしないと…あんたは…!」

「おや、ぶっさいお嬢さんですね、一人増えたところで変わりませんが」

「頭領…こいつやべぇ!早く逃げ…」


言葉が終わる前にその暗殺者は爆発四散し無残な肉片と化す。

頭領と呼ばれる女はその光景に怒りを露わにする。


「あんた…よくも仲間を…!」

「ああ、このゴミ虫は仲間でしたか、ではゴミ虫は死んでください」

「へっ?やめ、やめてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


もう一人の暗殺者もその場で爆発四散し無残な肉片となる。

その光景に頭領は激怒していた。


「ああ、それと名前を聞いておきます、墓には名前が必要でしょう?」

「デリーラ、貴様を殺す女の名だ!!」


そうしてデリーラはギラに襲いかかる。

だがギラはそれを正面から掴み取り、おぞましい声で言い放つ。


「さて、死ぬ前に言い残す事があるなら聞いてあげますよ?」

「ひっ!?助け…たす…け…」


デリーラは掠れそうな声で助けを懇願する。

あまりの恐怖からなのか失禁しその服が濡れていた。


「言い残す事がないなら…」

「こっちだ!」


教会の神殿騎士団の声がする。

騒ぎを嗅ぎつけたようだ。

ギラはデリーラから手を放しその場に叩きつける。


「はっ、はぁっ…覚えてろ…あんたは…絶対に…殺してやる…」


そう捨て台詞を吐いてデリーラは逃走する。

ギラは魔法を使い姿を消してその場を立ち去る。

駆けつけた神殿騎士団はその場の光景に言葉を失っていた。


メーヌ達の下に戻ったときには祝賀は終わっていた。

結局聖女の事は分からないままだった。


「結局聖女とは何だったんですかね?」

「うーん、僕は祝賀で出てくると思ってたんですが…」

「だとしたらトップシークレットですかね」

「謎の存在ですね、聖女って」


そうして街に戻るギラ達。

ついでに冒険者ギルドに立ち寄りゴブリンの親玉とスカド山の熊の依頼を達成する。

倒した際に手に入れた証拠も提示し報酬をちゃっかり手に入れる。


「それで次はどうしますか?」

「なら明日にでも次の街に向かいますか、一番近いのはどこになります?」

「ここからだとストロソーの街ですね」

「ならそこに向かいましょうか」


そうして次の目的地はストロソーに決まる。

残りの時間で生誕祭を楽しみその日は過ぎていく。


だがギラの心の中ではドス黒い炎が燃えていた。

大地の骨、奴らを滅ぼすその日までその憎悪は燃え盛る。

その姿は紛う事なき魔王そのものだったのだから。


次の目的地へ向け新たな朝がやってくる…。

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