王になる男
ハルミを仲間に加え今後を考えるギラ達。
とりあえず一旦ウルゲントに戻って少し様子を見る。
冒険者ランクもゴールドランクになり、プラチナランクを目指していく事に。
ドラジールに戻ったギラ達は、そこで面白い人物に出会う。
「さて、ドラジールに戻りましたけど」
「相変わらず変わってませんね」
「でも空を飛べるとどこにでも行けていいね」
「ハルミさん、すっかり馴染んじゃってますね」
そんなとき広場の方が騒がしいのを感じ取る。
何やら揉め事のようだ。
ギラは面白そうだとそっちへ行ってしまう。
他のメンバーも呆れつつそれを追う。
「こんなもんか?ゴールドランクの戦士も弱いもんだな」
「あんた、強いな…なにもんだ…」
そこには以前のダンと別の傭兵らしき男が決闘でもしていたようだ。
だがダンはその傭兵に破れたようである。
「さて、俺と決闘してくれる奴は他にはいないのか?」
だがゴールドランクの戦士を負かすような相手と決闘をしようとする者はいない。
そんな中ハルミがその傭兵の前に立つ。
「お兄さん、少しやりすぎなんじゃない」
「あん?なんだ、女」
それにリック達もヒヤヒヤしていた。
ギラはその傭兵が相当の実力者だと理解したのか、少し黙っている事に。
「そんなに決闘がしたいなら私が相手になるよ」
「ほー、言っとくが俺は女でも手は抜かないぜ?」
その宣言にギャラリーがざわつく。
だがその傭兵は思わぬ事を言う。
「と言いたいが、怪我を庇ってる奴と戦う趣味はねぇ、俺は本気でやりたいんでな」
「なっ!?どうしてそれを…」
ハルミが怪我をしている?
その傭兵はそれを即座に見抜いたというのか。
「あんたが剣術に関して強いのは分かる、だがその利き腕、怪我した事あんだろ」
「どうしてそれが…あなた、何者なの?」
その傭兵は高らかに言う。
「俺はベゼスタ、王になる男だ」
「王になる?傭兵のあなたが?」
その男、ベゼスタは王になると言う。
それは実力を以てして王になるという事なのか。
「ってわけだ、どんなに強くても怪我を庇ってる奴と戦う趣味はねぇのさ」
「馬鹿にしてくれる…なら試せばいいじゃない」
ハルミが剣を抜く。
だがベゼスタはゆっくりとハルミに近づきその腕に触れる。
「ふむ、過去にデカい筋肉の怪我をしてんな、魔物程度ならともかく俺とは無理だ」
「どうしてそれが…でもそこまで見抜かれたら私の負け、かな」
ハルミは剣を収める。
ベゼスタもそんなハルミに助言のような事をする。
「怪我をしても強くはなれる、だが強く以上にはなれねぇ、覚えとけ」
「…悔しいけど私の完敗、まさかそれを見抜かれるとか」
そこにギラが出てくる。
「ベゼスタさんでしたか、あなた、ただの傭兵ではないですよね」
「あん?なんだ、このガキは」
「あんた、ギラ…」
ダンもギラの登場に思わす声を上げる。
そしてギラは言う。
「なら私が相手になりましょうか?」
「てめぇみてぇなクソガキがか?」
だがギャラリーがギラなら勝てると騒ぎ立てる。
ギラとその仲間達の事は今では三国に知られる程度にはなっているのだ。
「そういや最近突然出てきてやたらと武勲を上げてるギラ…まさかてめぇか」
「どのギラかは存じませんけど、私はギラですよ」
その言葉にベゼスタは笑みを浮かべる。
「ならやってみようぜ、あんたに勝てるかは分からんがな」
「ふふ、手は抜いてあげますから」
外野で見ている仲間達もギラを見守る。
そして決闘が決まり、ギラとベゼスタはお互いに武器を取る。
ギャラリー達はそれから距離を取り息を飲む。
「そんじゃ、始めるとしますか!」
「返り討ちにしますかね」
ベゼスタがその斧を振り下ろす。
だがギラはそれを軽く回避し少し様子を見る。
ベゼスタもそれに少し力をセーブして攻撃を続ける。
「ふむ、意外とやるじゃないですか」
「てめぇもな!だがこんなもんじゃねぇ!」
その後もベゼスタの攻撃は続くが、ギラはそれを軽く回避する。
そして次の瞬間。
「なん…だと…!?」
「チェックメイト、とはいえあなたは今までの下手な奴よりずっと強いですね」
ベゼスタもそれに対してとても高揚している。
「ははっ、ははははははははははっ!!!!こいつはいいな、実にいい」
「なにかおかしい事でも?」
そこに仲間達も出てくる。
「あんた、やっぱりただの傭兵じゃないな、その立ち振舞で分かる」
「同じくですわ、ただの傭兵にあんな戦いが出来るわけないですもの」
「お仲間か、あんた達も強いな」
ソウとペトラの事も簡単に見抜く。
とはいえ今はこれ以上の騒ぎにするつもりはないらしい。
「それで、ベゼスタさんでしたっけ?王になるって本気で言ってるんですか」
「当然本気だぜ?それに俺は戦場において瀕死の奴だろうと女だろうと殺すしな」
「あんた、さっきハルミに優しくしてた割にそんな性格なのか」
ベゼスタはあくまでも傭兵としての殺しにおいては容赦はしないという。
だがそれでも戦場以外で無駄に人を殺すような真似はしないのが信条だそうだ。
「傭兵たる者戦場での甘えは死に繋がる、だから瀕死の奴でも女でもきちんと殺すのさ」
「それで、ここは戦場じゃないから私を殺したりはしないって言うの?」
ベゼスタの流儀は戦場では冷酷に、戦場でないなら紳士的にだという。
あくまでもその残虐さが出るのは戦場という生死のかかる場面だけらしい。
「俺は実力主義者なんでね、王になるためにその実力を磨くのさ」
「国を治められるとも思えませんけどね、まあ好きにすればいいと思いますよ」
ベゼスタもそんなギラにとてもご執心になったようだ。
「ギラっつったか?俺はあんたを倒すまで諦めねぇ、お前を倒して俺は上へ行く」
「別に好きにして構いませんよ、とはいえどこで会うかは分かりませんけどね」
「ギラさんもそれに乗るんですね」
リックも少々呆れ顔である。
とはいえベゼスタもそれを気に入ったのかギラを倒すべき相手としたようだ。
「そんじゃ俺は行くぜ、どこかで会ったら勝負してくれや」
そう言ってベゼスタは去っていった。
「あんた、本当に凄いな」
「こっちとしては迷惑千万なんですけどね」
ダンもギラを認めている。
とりあえずダンはその場を去っていった。
ギラ達も面白い相手とは思いつつも、変人ホイホイっぷりに少し呆れ顔である。
王になるという男ベゼスタ、彼は今後ギラ達と何度も対峙するのである。