珍しい魔法の覚え方
リックの魔法修行が始まって一日。
モレーアの指導もあり、コツは理解しつつある。
本日もそんな珍しい魔物を求めているのだが。
そこはモレーアから提案が出される。
「希少な魔物ですか?討伐対象とかではなく?」
「ええ、特定の土地に出るジャイアントモンスターってご存知かしら」
「名前からして普通よりも大型の魔物という事ですか?」
「そんなのがいるなんて初耳ですわよ」
モレーアの話ではその魔物は希少な魔物らしい。
それも極めて生命力が強く一度倒しても数日で復活するらしい。
修行も兼ねてそのジャイアントモンスターの討伐に行ってみないかと提案する。
「危険は承知です、それでも修行になるなら相手になってみたいですね」
「リックは異論なしね、他はどうかしら」
他のメンバーも特に異論はないようだ。
生息地はモレーアが知っているそうなので、教えてもらう。
とりあえず今いるドラジールの近くにある、バタール山に行く事に。
そのままソルバードでモレーアに言われた場所へ飛ぶ。
そこはドラジールから北に少し行ったところにある山脈だ。
高度はそんな高くなく商人などの通行路としても使われている。
山の麓にソルバードを停め、山へと足を踏み入れる。
ジャイアントモンスターは縄張りがあるそうで、そこからは出ないらしい。
当然の如く縄張りに入れば敵と認識され容赦なく襲われる。
バタール山のジャイアントモンスターは中腹に出るそうで、そこへと向かう。
「この辺りですよね?」
「ええ、この辺りにウィンドドラゴンが出るはずよ」
「音と生体反応を感知!来ますよ!」
メーヌがいち早くその気配を感じ取る。
上を見上げるとそこには緑竜が飛んでいた。
これこそが腕試しの第一ラウンドの相手であるウィンドドラゴンだ。
ギラ達はリックを守るように陣形を取り臨戦態勢を取る。
「こいつは空中を常にキープするわ、対空攻撃がないと苦しいわよ」
「それなら問題ない、こっちは魔法と暗器使いが揃ってる」
「私なら地上から叩き落としてやりますよ」
「近接戦闘メインの私とエレネさんは苦しそうですわね」
そんなこんなでウィンドドラゴンが襲いかかる。
その威圧感はまさに巨人の名に相応しい。
「早速!ソウルドレイン!」
「凶暴化したね、攻撃が激化するよ!しっかり備えな!」
ソウルドレインでバーサク化したウィンドドラゴンはさらに威圧感を増す。
だがそんなの知らンがな、と言わんばかりにギラの闘志が燃える。
「翼の風よ、その空を駆け巡れ!」
「ウィンドドラゴンらしい魔法ですね」
「そんじゃ、反撃と洒落込みますか!」
「援護は任せておけ、こんがり焼いてやろう」
そのまま凶暴化したウィンドドラゴンと対峙する。
だがギラからしたら所詮は雑魚敵にすぎない。
派手に跳躍しウィンドドラゴンの背中を取るギラ。
そして刀で翼を豪快に引き裂く。
そこに恋夜の炎魔法が炸裂し、ウィンドドラゴンは地に落ちる。
「びくとりー」
「あれだけ派手にやってやる気がないですよねぇ」
「ぶっちゃけギラ様からしたら雑魚ですよね」
「ギラはあれで強いんだよね、力の差というかさ」
ソウやペトラもその実力差は埋められないと感じている。
それだけギラの戦闘能力が高いと認めているのだ。
とりあえずウィンドドラゴンから魔法のラーニングに成功した。
習得したのは風魔法で、広範囲を巻き込める魔法だ。
「さて、小手調べはこんなものね、もう一体いってみる?」
「はい、ならいきます、どこにでも」
「なら近い場所で頼みますよ」
「とりあえず案内を頼むなのです」
そうして山を下りソルバードで次の場所を教えてもらう。
次の目的地はウルゲント北西部にある平原だ。
そこにはキングボアというジャイアントモンスターが出るという。
その魔物を求め北西部の平原へと下り立つ。
「こんな平原に出るんですね」
「でも広範囲を見渡せますし、気配ぐらいは…」
「待て!なんか揺れてる!」
「何かがこっちに突っ込んできますよ!」
彼方から突っ込んできたのはそのキングボアだった。
普通の猪とは比べ物にならないその巨体。
突進の直撃を受けようものなら、全身の骨が折れそうな巨体だ。
ギラ達は陣形を敷き、臨戦態勢を取る。
「リック!さっさと覚えちまいな!」
「は、はい!ソウルドレイン!」
キングボアから魔法を覚えたリック。
だがキングボアは見事に凶暴化し、鼻息を荒くしている。
「いきますよ!猛獣の王たる牙よ、噛み砕け!」
「効いてますね」
「猪だけに牙ですか」
「それより応戦しますよ!」
そのまま鼻息を荒くするキングボアと戦う。
凄まじい勢いの突進を上手く避けつつ的確に攻撃を叩き込んでいく。
皮膚が硬く攻撃は通りにくいものの、恋夜の炎魔法がよく効いている。
ギラの攻撃でその毛皮を引き裂き、恋夜の炎魔法でこんがりと焼き払う。
「なんとかなりましたか、流石に突進をモロに喰らってたら骨が折れますよ」
「あんなのに突進されたら流石のメーヌでもへしゃげちゃいそうでしたね」
「それにしてもリックのラーニングは実に面白いね、私が使えないのが悔しいな」
「でも恋夜さんは本があれば覚えられるんですし、どっこいどっこいでは?」
なんにしてもリックはこうして珍しい魔法を覚えていく。
普通の経験では覚えられない貴重な魔法。
最初は異世界の魔法を教わるのかと思ったギラ達だが、それは外れたようだ。
正体を隠すためなのだとしたら、それは教えられないのかもしれない。
とりあえず今日はこの辺で切り上げる。
リックの希望でアルセイムの魔物からも覚えてみたいと言われる。
ギラ達もそれも面白そうだという事で、次に備えアルセイムに飛ぶ。
一旦ミリストスに向かい宿を確保するギラ達。
明日はアルセイムで依頼を受けるなりジャイアントモンスターに挑むなりを考える。
リックの知識を得るという目的は思いの外面白いとギラ達は感じる。
「それにしてもリックは飲み込みが速くて嬉しいわ、お姉さん幸せ」
「あはは、ハグはしませんからね」
モレーアも分かりやすい人のようだ。
服の露出が多い事もあり、リックは気苦労が増えてしまう。
元々そういう事には疎い女性陣が多いからこそ、それに疲れるのだろう。
リックもそんな女性のイメージがすっかり頭に焼き付いてしまっていた。
そして次はアルセイムの強敵達に知識を求め挑んでいくのである。