表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/240

晴天の張り込み

昨日の雨から一転し今日は快晴になった。

ギラ達は昨日のリベンジに燃え今日も張り込みを続行する。

もはや意地になっていた、なんとしても魔女を捕まえてやるのだと。

そんなこんなで張り込みを始める事に。


「むぅ、昨日のリベンジ、絶対にしてやりますよ」

「ギラさん燃えてますね…」

「無理もないさ、見えたのに逃がしたんだ」

「そんなの普通に屈辱ですわよね」


今日はメーヌと恋夜とエレネとテュトスが依頼に出ている。

残りの五人は街で張り込みである。


「それじゃ私達は別の場所を張り込みますわね」

「そっちは任せたよ」


そう言ってペトラとソウは別の場所へ移動する。

ギラは負けず嫌いなので、昨日の取り逃がしが相当腹にきているようだ。

翠もギラが雨の日は憂鬱になるのは知っている。

雨の日は昔の事を思い出してしまうのだと、だからあえて適度に距離を置くのだ。


「人混みだと簡単にはいきませんよね」

「そうですね、索敵魔法とか使っても難しいかと」

「そもそも敵じゃないと思いますっ」


リックは昨日の事が頭から離れなかった。

突然ギラのその胸に抱き締められた事、魔王についての昔話。

それは人の心の闇を覗いてしまったかのような感覚だからだ。

魔王がいるとすればそれは人間自身、魔王などどこにもいないという事。

この世界にもそんな魔王はいるのかもしれないという思い。

そんな複雑な感情が絡まりあいリックの思考を鈍らせる。


「それでリックさん、私のおっぱいの感触どうでした?」

「えっ?いや、えっと、その…」

「リックさんって意外と初心なんですねっ」


リックも頭から煙が出そうになる。

自分が性的な事への免疫が全くないのだと思っていた。

これだけの女性陣に囲まれても無関心なのは、慣れと同時に知識の少なさだろう。

そんな初心なリックをからかうのは楽しいとギラも思っていた。


とりあえずそんな風にからかいつつ張り込みを続行する。

一方のソウ達は商店街に来ていた。


「見渡しのいいところならある程度の狙いもつけられるんだけどね」

「そうですわね、人混みでも広い場所と狭い場所では違いますもの」


そういう理由もあって商店街で広くを見渡す。

魔女の特徴は把握しているのでそれを的確に見定める。


「話からしても怪我人とか病人が出ないと駄目なのかね」

「何もない場所に現れるほど馬鹿でもない、と」


とりあえず何かが起こる様子はない。

そのまま観察を続ける二人。

そんな中ペトラがソウに質問をする。


「ソウさん、あなたところで何者なんですの?」

「どういう意味さ」


ペトラも切り込んできたものだ。

ソウの戦いの腕前、服の下の傷だらけの体、そういったものは普通ではない。

明らかに戦いを経験した人間のそれだからだ。


「そうだねぇ、言うならば生死が常にかかったような場所で生きてたって事か」

「それは戦争とか?それとも傭兵でもしていましたの?」


常に生死がかかるような場所。

そんな曖昧な言葉ではぐらかす。

だがペトラも食い下がってくる。


「服の下の傷、それは明らかに戦場でつくものではありませんわよ?」

「おや、傷の見分けがつくなんてあんたも目がいいね」


茶化してみせるソウ、だがペトラもそれに食い下がる。


「そうだね、生きてるのが奇跡のような拷問を受けた事がある、そんなとこさ」

「は?それこそ意味が分かりませんわ、結局何者なんですの、あなた」


その傷は拷問でついたものらしい。

生きているのが奇跡、その言葉にペトラは壮絶な過去を感じ取る。


「ま、神に感謝かな?でも神様は信じるけど、それに頼ってやるつもりはないよ」

「神様、それがシスターになった理由ですか?」


ソウがシスターになった理由。

それは神様を見てみたいという一種の好奇心かもしれない。

ペトラはそう考えると、少し笑ってしまう。


「ふふ、あなたも大概な大馬鹿者ですわね」

「何さ、突然、でも確かにそんな理由なのかもしれないね」


神というものへの考え方。

それがソウの生きている事への根本にあるのかもしれない。


「神様だって便利屋じゃない、祈るのは自由だが最後は自分でやるしかないのさ」

「ソウさん…でもそれは当たっていますわよね」


ペトラもやっと引き下がる。

そのまま二人は張り込みを続行する。


一方のメーヌ達は冒険者ギルドの依頼で近くの川に来ていた。


「フィーッシュ!」

「魚釣りねぇ、納品系の依頼とはいえ魚釣りなんてするのか」

「この魚美味しいのです?」

「この季節は美味しいですよ、フナですよね?」


どうやらフナ釣りのようだ。


「とはいえフナは生じゃ食べられません、きちんと下処理をしないと」

「流石はメーヌ、料理には詳しいね」

「メーヌの料理は美味しいのです」

「あれ?誰かいますよ」


そこには魚釣りをする女性がいた。


「大漁ね」

「あの、何を釣っているんですか?」


その女性のバケツを見るとメーヌ達とは違う魚のようだ。


「少し今夜の食事にね、こいつはリバーギルっていう川魚なの」

「ほう、そういう魚もいるのか」


その女性のバケツにはリバーギルがこれでもかと入っている。

ガンガン釣り上げているようである。


「こいつを塩焼きにするのが最高なのよ、少し分けてあげましょうか?」

「いいのです?ならもらうのです」


その女性はリバーギルを9匹ほど分けてくれた。

これでも彼女のバケツはまだ余裕である。


「さて、それじゃもう満足だし私は行くわね、バーイ」

「メーヌ達も目的は達してますし帰りますか」

「だね、ギラ達の様子も気になる」


そうしてメーヌ達は街の冒険者ギルドに戻り釣り上げたフナを納品する。

そのままギラ達に合流である。


「ギラ様、調子はどうです?」

「おや、メーヌ、駄目ですね、収穫なしです」

「やっぱり何か起こらないと出ないんでしょうか」


結局ギラ達も収穫はないようだ。

そんなこんなで時間だけが流れていく。

ソウ達も戻ってきたが収穫はなしという。


「結局今日は出てこなかったね」

「そうですね、でも諦めたくないですよ」

「ギラ様って本当に負けず嫌いですよねぇ」

「まあそれもギラらしさだろうな、とりあえず式紙に夜は任せて、明日も張り込むか」


そうして夜になり、夜は式紙に任せギラ達は休む事に。

魔女は姿を見せてもすぐに消えていく。

それは霞を掴むようにその手をすり抜けていくのである。


ギラも意地になって魔女を捕まえると言い張っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ