あんぱんと牛乳を用意しろ
ズーバーのアドバイスを参考に街で張り込みをかけるギラ達。
とりあえずドラジールで張り込みを実行する。
張り込み班とその間の資金稼ぎに冒険者ギルドの依頼班を日替わりにする事に。
ギラは今回は張り込み班なので街で様子を見る事に。
「さて、そんじゃアタシ達は冒険者ギルドで適当に依頼を消化しとくよ」
「任せましたよ、お金がないと話になりませんから」
「ではいってきますねっ」
「こっちはお任せを」
そうして翠とソウとエレネとペトラは依頼に向かう。
冒険者ギルドでパーティー登録での追加申請をしてあるのでランクもそのままだ。
とりあえずギラと恋夜とリックは広場で様子を見る。
テュトスとメーヌは裏の方に張り込みそれを見逃さないように徹底する。
「そういえば例のものは用意しましたか」
「頼まれたから買ってきたが、なぜあんぱんと牛乳なんだ」
「何か必須アイテムなんでしょううか」
刑事物のドラマの見すぎである。
それともアニメの刑事物だろうか。
なんにしてもギラはあんぱんと牛乳を片手に張り込みを開始する。
「ふむ、人はそれなりに往来していますね」
「とはいえこんな広場にそう簡単に出てくるものなのか」
それでも目を凝らして様子を見る。
恋夜も見落とさないように細かに人をチェックする。
「そう簡単には無理ですよ、忍耐です」
「忍耐か、こういうときは根性論なのかね」
ギラ達はそのまま張り込みを継続する。
一方のメーヌとテュトスは裏通りを張り込んでいた。
「うーん、やっぱり焦り過ぎですよねぇ」
「とにかく冷静にじっくりとですよ」
集音機能なども使い細かな音も見逃さないようにする。
それでもすぐにはやはり現れる気配はないようだ。
二人もそのまま張り込みを継続する。
その頃のソウ達は冒険者ギルドの依頼で近くの森にきていた。
その森に最近ワイルドラットが住み着いたらしく、それの駆除だ。
「ワイルドラットか、野生化して凶暴になったネズミ、まあなんとかなるだろ」
「頼りにしてますねっ」
「なのです」
「オホホ、ネズミ風情に負けませんわよ」
そうして森を歩き回りワイルドラットを探す。
すると森の中に人の姿が見える。
「人?なんでこんなところに…」
「あのっ、何してるんですか」
その女性は美しい女性だった。
「ん?ああ、少し蜂の巣を採りにね」
「蜂の巣ですの?蜂蜜でも作るんですかしら」
その女性は蜂蜜を自作するのに必要な蜂蜜を採りにきていたらしい。
カゴの中にはすでに蜂の巣がいくつか入っていた。
「それで蜂蜜を?養蜂…じゃないな、自家製の蜂蜜とは珍しいものだ」
「蜂蜜は滋養強壮に効くのよ、疲れも取れるしね」
「物知りなのです」
その女性は蜂蜜を料理にでも使うのだろうと思っていた。
とりあえず気をつけるように注意を促す。
「忠告どうもね、それじゃ私は行くから」
「危なかったらさっさと逃げるんだよ」
そうして女性はその場を去っていった。
ソウ達もそのままワイルドラット探しを再開する。
森を歩く事数十分。
ネズミの足跡らしきものを発見する。
「この先にいるっぽいね、行くよ」
「了解ですわ」
一方のギラ達は相変わらず街で張り込みを続けていた。
とはいえ見つかるという事もなく、忍耐だけで時間は過ぎていく。
魔女はやはり簡単には姿を見せてくれそうにない。
そうして時間だけが過ぎていく。
「ふぁ、眠くなってきましたね」
「我慢だよ」
「交代しますか?」
とはいえギラにも意地がある。
眠るような事はせずにそのまま張り込みを継続する。
それでもやはり魔女は姿を見せない。
別の街なのかとも思いつつそのまま継続だ。
一方のメーヌ達も裏通りを丁寧に張り込む。
細かな音も聞き漏らさないようにしつつ周囲を窺う。
だが魔女は姿を見せる事もなく、鳥の鳴き声だけが響いていた。
「暇ですねぇ」
「こればかりは根気の問題ですから」
こういうときは流石に根性論になるのも仕方ない。
探偵なども言うが根気よく待ち続けるだけの忍耐が必要なのだと。
簡単に諦めてしまっては星は手をすり抜けていくのだ。
本当に探偵の凄さが分かった気がした。
「はぁ、探偵って偉大ですよねぇ」
「本当ですよ、必ず掴んでやるっていう執念なんでしょうか」
二人はそんな探偵を考えつつ張り込みを継続する。
一方のギラ達も眠気に耐えつつ張り込んでいる。
「はぁ、駄目ですねぇ、事件の一つも起きないとは」
「平和なのはいいと思うんですけど、今は状況が状況ですからね」
「病人でもいれば出てくる可能性も上がるかもしれんがな」
不謹慎だが恋夜の言う事も的を射ている。
過去の話でも病人や怪我人に薬を与えていた。
つまりそういう人がいると出てくるかもしれないという事である。
都合がいいと思いつつもそんな事もないので、時間は過ぎていく。
そうしているうちにソウ達が戻ってきた。
「おや、どうだい?収穫はあったかね」
「駄目だね、裏で張り込んでるメーヌ達からも何もないとさ」
「むぅ、簡単じゃないのです」
そういえばと森で出会った女性の話をするソウ達。
物珍しそうにギラもそれを感じる。
「蜂の巣を採取していた女性ですか、まあ薬師か何かですよ多分」
「蜂蜜は確かに滋養強壮とか栄養素も豊富だからね、何かと便利なもんさ」
「そうだね、蜂蜜っていうのは疲れが取れるんだよ」
だが何か違和感も感じる。
その女性は蜂蜜を使うというからには薬か料理だろう。
だが料理家が自分で蜂の巣を採りにくるのも不思議なものだ。
料理家か薬師か、なんにしてもそろそろ日が暮れる時間だ。
メーヌとテュトスも時間なので戻ってきた。
「どうでした?」
「駄目ですね、何もなしです」
「やっぱり簡単にはいかないもんだね」
とりあえず今日はもう夜になるためここで切り上げる事に。
「ああ、そうだ、念のためこいつを監視に出しますか」
「なんですかそれ?」
ギラが出したのはカードのようなものだ。
それは式紙でギラの意思で視界と聴覚を共有出来るという。
それを宿の外に数枚飛ばして夜の間も張り込ませる。
「あんた面白いものを使うんだね」
「同意だな、実に興味深い」
「とりあえず宿に戻って今日はもう寝ますよ」
そうして宿に戻り今日はもう休む事にする。
式紙から何か見えるのか。
そのまま眠りにつき明日再び張り込むこととする。
探偵の凄さを感じつつ忍耐だけで魔女を待ち続けるのである。