独特な味
極東の島国を観光するギラ達は本州の北の方に来ていた。
そこは比較的涼しい土地で、海から山まである。
そして独自の方言や土地ならではの食べ物も多い土地だ。
そんな土地でギラ達は今日も食べ物を食べまくるのである。
「んー、涼しいですね」
「そりゃ北に来てるんだ、涼しいに決まってるだろ」
「尤もですけど…」
「それよりここは何がありますの?」
ソウはとりあえず何を食べるかと考える。
そして閃いたのはやはり肉だった。
「なら美味しい肉を食わせてやるよ、この土地で育った最高の牛肉をね」
「牛肉ですか?」
「あら、いいではありませんの、私は牛肉は好きですわよ」
「お金持ちは牛肉が好きって本当なんですね」
そんなこんなでソウに連れられ肉が食える店に案内される。
店に入ったギラ達はその値段に目をこすってしまう。
「こんな高いんですか…高級な牛肉なんですねぇ」
「とりあえず、ステーキだな、ソースとかは注文受け付けるよ」
「ソウさん、本当にお肉が好きなんですね」
「肉を食わないと食べた気になりませんものね」
ペトラは超絶な肉食だという事が分かった。
ソウと気が合っているのを見ているギラ達も納得してしまう。
この二人はまさに肉食美女だった。
とりあえず各自その肉のステーキを注文する。
全員分だと軽く万単位で取られるが、ソウが支払ってくれるという。
これまでも食べ物の代金は全部ソウが支払っていた。
お礼とはいえ、ずいぶんと太っ腹だと感心してしまう。
そうこうしているうちに頼んでいたステーキが順次運ばれてくる。
その匂いと焼ける音が食欲をそれはもう刺激する。
「美味しいですねぇ、このお肉」
「そりゃそうさ、この国での品質管理に定められた最高ランクの肉だよ」
「肉にランク付けがあるんですね」
そりゃ美味しいはずだと一同は納得してしまう。
そうしてステーキを堪能したギラ達は次の目的地を考える。
ソウは隣の地域にも行ってみないかと提案する。
それもいいとして隣の地域へ移動する。
「それでここは何があるんですか」
「そうだねぇ、なら少しチャレンジしてみるかい?」
「チャレンジですか?」
この土地ならではのチャレンジがあるらしい。
ソウに連れられやってきたのは蕎麦屋だった。
「ここってお蕎麦屋さんですよね?」
「ああ、わんこそばってやつさ」
「わんこそばですか?」
店の人から説明を受ける。
どうやら満腹になるまでどれだけ食べられるかのチャレンジらしい。
誰か挑戦してみないかと、ソウは楽しそうに笑う。
そこで勝負には熱くなり目がない上に負けず嫌いな人がいた。
「ではメーヌが挑戦します、今までの最高記録は何杯ですか?」
店の人の話では最高記録は376杯だという。
メーヌはその記録を更新する気満々だ。
そもそも食べ物をエネルギーに分解するので、胃袋は底なしである。
メーヌの目に炎が燃える。
そして挑戦が始まった。
「凄い勢いでお椀が増えていきますね…」
「メーヌ、本気でやって構いませんよ」
「合点!」
「ギラ様、その命令はお店が潰れる気がします」
その後もメーヌは順調に蕎麦を消化していく。
店の人も驚くそのペースに人集りが出来始めていた。
「なんかギャラリーが増えてますけど…」
「メーヌさんの勢いは衰えませんね…」
「ふふ、記録の大幅更新は確実だな」
「今までもあらゆる挑戦を正面から負かしてきたメーヌですから」
その後もメーヌはどんどんお椀を積み上げていく。
気づいたら記録は更新され、前の記録より100以上更新していた。
店の人も流石に焦りが見える。
店がギブアップするのが先か、メーヌが勝利宣言するのが先か。
そうしているうちに記録がすでに400近く更新されていた。
店の人も限界なのか、ストップをかける。
メーヌは物足りなさそうな顔で勝利宣言である。
「美味しかったですね、お粗末様です」
「流石はメーヌだね、記録更新が不可能なレベルまで更新する鬼畜っぷりだ」
「記録の勝負だと確実にスコアがオーバーフローするぐらいやりますから」
「それ鬼畜どころか、悪魔の所業ですよね…」
店の人もこの記録に流石に言葉を失っていた。
ちなみに最終記録は749杯である。
メイドロボというその存在がもはや限界を軽々と越えてしまった。
この記録を更新出来る人がいつ現れるのかという、店側の焦りも感じた。
「さて、それじゃ最北端に行く前に本州の最北端に行くか」
「ですね、では行くとしましょう」
そうして本州の最北端にやってきた。
そこでもホテルを探す前に時間もあるので、何か食べ物を探す。
ソウの話ではリンゴが美味しいという。
それならとリンゴを探してみる事にした。
そうしてやってきたのはリンゴ農園。
収穫の体験も出来るらしいので、そのリンゴを堪能する事に。
「美味しいですね、このリンゴ」
「凄く甘い…リンゴってこんな甘いものなんですか?」
ソウの話ではこの国で栽培するリンゴは蜜が美味しさの理由だという。
リンゴの蜜がその甘さを際立たせるらしい。
ついでにそのリンゴを絞ったジュースも飲んでみる。
その美味しさは西では体験出来ない美味しさだった。
リックはこんな美味しいリンゴは初めてだと感動しているようだった。
そうして日が落ちる時間になり、ギラ達は都市部のホテルに向かう。
ここでもソウのコネなのか、予約なしで泊めてもらえた。
「さて、次はこのバカンス旅行の最終地点の最北端ですか」
「ああ、そこは広いから覚悟しときな」
「そんなに広いんですか」
最北端、それはその地だけで今までの地域が一つ収まる広さらしい。
当然食べ物も美味しいものがたくさんあるとソウは言う。
そんな最北端のグルメに期待を寄せるギラ。
美味しいものはいくらでも入るとはこの事である。
「楽しみなのです、この旅行の最後の目的地を楽しむのです」
「ですねっ、楽しみますよっ」
そうして楽しそうにしているうちに夜になる。
女性陣は解放的な格好だが、リックも慣れてしまったのか無反応である。
それに対して不服な女性陣。
そうしたのは誰なのかという話ではあるが。
そんな夜は楽しい時間と共に過ぎていく。
明日の最終目的地に行くのを楽しみにしつつ床に就く。
極東の島国は知らない事ばかりで、リックはとても楽しそうにしていた。
恋夜もそんな未知の土地に好奇心を抑えきれなかったようだ。
バカンス旅行の終わりは近づく。
西に戻ったらまた自由な旅に戻るのである。