表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/240

魔王と僕と時々マダム

旅を続けるギラ達は村の先にあるセレショーの街に来ていた。

そろそろ日が落ちる時間なので宿を取る事に。

メーヌに宿は任せ一旦自由行動だ。


「ここは貴族とかも住んでるんですね、貴族…」


リックが大きな屋敷を見ていると後ろから声がした。


「坊ちゃま!?見つけましたよ!」

「へっ?えっと、僕…?」


どうやらメイドのようだ。

リックを坊ちゃまと勘違いしているらしい。


「さあ!屋敷に帰りますからね!」

「あの、人違いじゃ…僕はあなたの言う坊ちゃまじゃ…」


だがメイドは聞く耳を持たない。

そして強引にリックを担ぎ上げそのまま屋敷に行ってしまった。

それを翠が偶然見ていたらしい。


「リックさんが誘拐!?はわわっ、ギラ様に報告ですっ!」


一方のメーヌは宿でチェックインを済ませていた。

一足先に部屋の確認などをしておくのも従者の務めである。


「これなら四人でも問題なさそうですね、では呼びに行きますか」


一方のギラは街をぶらついていた。

すると一つの商店の前で足を止める。


「すみません、この商店は閉まっているんですか?」


近くの住民にその商店の事を尋ねる。

空き家には見えないその商店、だが人の気配がしないのをギラは不思議に思った。


「そこかい?実は主人が先日から行方不明なんだ、失踪って言うべきなのかな?」

「べき?濁しますね」


どうやら何か不穏な事でもありそうだと感じ取る。

もう少し詳しく訊いてみる事にした。


「えっと、三日前だね、商談があったらしいんだけど、それからなんだ」

「その相手というのは?」


ギラはその失踪が只事ではないと察した。

ライバル商人にでも消されたのだろうかとも考える。


「確か…オシドリの羽っていう商人ギルドだね、交渉は決裂したそうだけど」

「オシドリの羽…あとでメーヌにでも調べさせますか…」


そのオシドリの羽について少しは知っておくべきと考えもう少しだけ訊く事に。


「そのギルドは隣の国と行き来して商売をしてるんだ、信頼があるって聞いてるよ」

「やはり引っかかる…なんにしてもありがとうございました」


その男性にお礼を言いその場をあとにする。

だがギラはその話にどうしても不信感を抱き疑問が残っていた。

それは追々として、そこに翠が走ってくる。


「ギラ様ぁ~!」

「翠?そんなに騒いだら視線が釘付けになってしまいますよ」


翠はさっき見た事を説明する。


「リックがメイドに拉致された?」

「はい、なんでも貴族の屋敷の坊っちゃんに間違われたっぽくて」

「あれ?どうしました?」


そこにメーヌもやってくる。

メーヌにも事情を説明する。


「なるほど、それなら先にその坊っちゃんを探すべきですかね」

「とはいえどうやって探すんです?分かってるのはリックにそっくりというだけです」

「うーん…」


そんなとき近くをどこかで見た顔が素通りしていく。


「いましたね」

「いました」

「いましたね」


それはリックにそっくりな少年だった。

ギラ達はその少年を全力で確保する。


「な、なんだ!?お前達!僕をどうするつもりだっ!!」

「あなたは家出した貴族の坊っちゃんですよね?」


メーヌが押し倒した少年に跨がり問いかける。


「そ、それがなんだよ…僕はあんな家には帰らないぞ!」

「悪い子ですね、でもなんで家出なんか?」


どうやら少年は母親にうんざりしていたらしい。

毎日毎日習い事の日々、自由な時間がない事を不満に思い逃げたという。


「それであなたはなりたいものとかあるんですか?」

「僕は…先生になりたいんだ、でも親は銀行に就職しろってうるさくて…」


要するに典型的な反抗期である。

とはいえ自分の夢があるのならそれを話すべきだと少年を諭す。


「ならあんた達も一緒に来てよ、そうしたら帰る…」

「分かりました、知り合いを取り返さないといけませんし、一緒に参ります」


そう言ってメーヌは跨っていた少年を解放する。

ただし逃げないように手は掴んだままだ。

そうして三人は少年に連れられ屋敷へ向かう。


「そういえば名前を訊いても構いませんか?」

「グラン、マイク・グランだよ」

「分かりました、では宜しく頼みますね」

「でも本当にリックさんにそっくりですっ」


そんなこんなで屋敷の前に。

ガードマンにグランが事情を説明する。

そうして三人は屋敷に通される。


「お母さん!」

「グラン!?えっと、どういう事なの!?」

「ギラさん!助けにきてくれたんですね!」


そこには着替えさせられていたリックもいた。

ギラ達はそのマダムに事情を説明する。


「そうだったんですか…うちのメイドが早とちりをして申し訳ない」

「事情を知らなかったらこの家を灰にしてでも助けるつもりでしたけどね」

「あはは、ギラさんはいちいち物騒で…」


とりあえずグランを家に帰しリックを返してもらう。

マダムがお詫びとして食事を提供してくれると言う。

ギラ達はお金が浮く事もあり、それを受け入れる。


「一件落着ですね」

「ですね、まさかそっくりさんで拉致られるとは」

「メイドは強いですねっ」

「あはは、僕ももう少し鍛えた方がいいかも…」


その後リックを拉致ったメイドに謝罪も受け一件落着である。

マダムの家で食べた食事はとても美味しかった。

ついでにグランの夢の事もそれを見届ける四人。

そうして四人はその屋敷をあとにする。


「ああ、そうだ、メーヌ、オシドリの羽という商人ギルドについて調べてもらえます」

「オシドリの羽?この世界の商人ギルドですね、了解しました」

「なんです?そのオシドリの羽って」

「二国間に跨って商売をしてるそうですよ、僕も噂は聞いた事があります」


ギラはさっきの商店主の失踪とオシドリの羽の事が気になっていた。

商談決裂の直後に謎の失踪、明らかにおかしいと考えていた。

場合によっては殺戮キリングに至る可能性も考慮しておく事に。


「それじゃ宿に戻って寝ますか」

「あとお風呂ですね、リックさんも一緒ですよ」

「逃がしませんからねっ、ワシャワシャ」

「僕この人達に食われちゃうのかなぁ…」


そうしてリックを無理矢理脱がせてお風呂イン。

その後は部屋で四人で雑魚寝である。

リックも年頃の男の子なのに、こんな真似をするギラ達も人が悪いものだ。


そうして翌日から次の街を目指し渓谷を越える事になる。

準備を入念に済ませ次の街へ向け歩き出すのであった。


それにしてもギラ様は相変わらず過激なもので。

マイペースなのに口からは過激な言葉がたくさん出ますね。

魔王様の過激っぷりはリックを驚かせています。


リックもそんなメンバーともっと馴染もうと努力していますよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ