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怒りの罠

神像を追うギラ達だが、ブルクハルトをどうするかも考えていた。

彼の資産を紙屑にしたとはいえ、それで終わるとは思えないからだ。

そうなったとしても彼は妨害を続けるだろう。

ギラ達はそれを考えていたのだ。


「さて、さっきあった連絡では商工会の商人でない商人がここに来たと」

「リバージか、その商人を少し問い質してみますかね」

「明らかに怪しいですよね」

「では行ってみますか」


そうしてその怪しい商人を探すギラ達。

街の人にも聞き込みをして、商人を探す。

すると港の方でそれらしき人を見たとの話を聞く。

ギラ達は港の方へ行ってみた。

するとそれらしき商人を見つける。


「へへっ、こいつさえ売り捌ければ…へへへへ」

「あなた、本音が漏れてますよ?」

「お前ブルクハルトの仲間だな、大人しくしてもらうよ」

「僕としてもあいつだけは許してやるつもりはないんですよ」


だがその商人は明らかに異常だった。

目は虚ろで焦点が定まらない、それは誰が見ても異常だと分かる。


「へへへへ、あんた達よぉ、気持ちよくなろうぜぇ」

「この感じ…まさかマタンゴか!」

「あの幻覚が見えるっていうキノコですよね」

「そうだ、そしてその効果はそれだけじゃない」


ペトラが商人をその場に静止させようと腕を掴む。

だが商人は凄まじい力で抵抗してきた。


「邪魔すんなよ…その面白いもん壊させろ…おらあっ!!」

「ぐうっ!?」


ペトラの右腕が引き千切られる。

簡単に破壊出来ない最高級の義肢がこうも簡単に破壊される。

明らかに異常な力だった。


「ペトラさん!?」

「驚いたな、まさか義肢だったとは…それも見分けがつかないレベルのものとは」

「あなた…よくも…」

「へへへっ、この腕…高く売れるぜぇ」


幸いペトラの体と繋がっている部分ではなかったためダメージは少ない。

とはいえそれを見てギラもプッチンプリンである。


「あー、完全にスイッチ入っちゃいましたよ」

「あの商人終わりましたね」


ギラは怒りを剥き出しにして商人に近づく。

その姿は静かに、そして業火の如く燃える怒りだった。


「てめぇ…覚悟は出来てるよな?あぁん?」

「ひっ!?な、なんだよ!離せッ!このクソガキッ!!」


ギラは商人の頭を全力でアイアンクローしていた。

仲間が見ているのも気にせずそのまま頭を握り潰してしまう。

リック達もそれには流石にドン引きだった。


「別に破裂させるような潰し方じゃないですけどね、頭蓋骨をグシャッと」

「それで充分に怖いんだが、ギラの握力はそんなに凄いのか」

「それよりペトラさんなのです」


ペトラの右腕は見事に肘の部分から引き千切られていた。

神像を追う前にこっちもどうにかしないといけない。


「なら私の義肢の事を一任してる職人がいますの、そこに行きましょう」

「分かりました、ではそこを教えてください」

「ついでに商人の荷物から大量のマタンゴが出ましたよ」

「そっちも商工会に一応伝えた方がよさそうですね、では行きましょう」


そうしてペトラに言われオルバインに向かう。

向かった先はオルバインの田舎町のオメロペアだった。

ペトラに言われた場所にギラ達は行ってみる。


「ここですか?」

「ええ、ここは私が信頼を置くオーダーメイドの義肢職人のお店ですの」

「入ってみるなのです」


そして店の中へと入る。

そこには本物と見分けがつかないぐらい精巧な義肢が展示されていた。


「ご主人!いますの!」


すると奥の方から無愛想な無精髭のおっさんが出てくる。


「ペトラ?あんたその右腕派手にやったみたいだが、何したんだ」

「少し派手に喧嘩しただけですわ、それより交換を頼めます?」


そのおっさんは金額の計算をする。

ペトラはそれを現金一括でその場でお支払いである。

流石は貴族の人間だけあって、豪快だった。


「とりあえず座れ、残った部分を外して新しくする」

「でもそれって分野的には医療も含まれるんじゃ…」


そのおっさんは職人であると同時に医師の資格も持っているそうな。

だから店で直接義肢を装着する事も可能な数少ない人だという。

ちなみにオーダーメイドではあるが、客のためにストックは作ってあるという。


「はい、外れた、そんじゃ部分麻酔効いてるよな?」

「ええ、問題はないかと」

「まさに技術大国であるオルバインならではの光景だな」

「そうですね、他の二国じゃ見られない光景ですよ」


そうしてペトラの右腕の交換が終わる。

おっさんは完全に馴染むまで風呂には入るなと言う。

この手のものは交換してもそれが定着するのに少々時間を使うのだ。


「そんじゃ金も確かに受け取ったな、今後も交換はしてやるけど無理はすんなよ」

「ええ、感謝しますわ」

「それでは我々は商工会に行きますか」

「面白いものを見せてもらったよ、それでは」


お礼を言い店をあとにする。

そのまま商工会に向かうギラ達。


「どうした?何かあったか?」

「実は明らかに怪しい商人がこんなものを大量に持ってましてね」


その商人は商工会からの情報で捕まえようとしたものだ。

そんな奴が持っていた大量のマタンゴ。

商工会のドンもそれには驚きを隠せなかった。


「怪しい商人とは聞いていたが、まさかマタンゴとは…」

「そいつの荷物にこんなエンブレムがついていたんだが」


ソウが荷物から剥ぎ取ったエンブレムを見せる。

ドン曰くそれは闇のルートの証明らしい。

つまりこのマタンゴは正規品ではない、違法な品という事になる。


「本物のマタンゴは精力剤なんだ、ただ違法のマタンゴは麻薬に近いと聞く」

「つまりそれを売り捌こうとした、許せるものではありませんわね」

「なのです、悪い事をしようとしてるなんて許せないのです」


ドン曰くそれはブルクハルトの関係だと睨んでいる。

先日の介入の話は当然耳に入っている以上、彼が本性を見せ始めたらしい。

今のブルクハルトは少しでも資金を確保するべく躍起になっているそうだ。

そんなときドンの秘書が入ってくる。


「ドン、先程こんなものが」

「手紙?見せてみろ」


ドン宛の差出人の名前がない手紙。

そこには商工会の商人を数人拉致したと書いてあった。

そして返して欲しくば現金で50億用意しろと書いてあった。


「分かりやすい罠じゃねぇか、まあこっちもそれに乗ってやる、あれを用意しろ」

「はっ、少々お待ちを」


ギラ達もそれが罠だと分かっていた。

恐らくブルクハルトがあらゆる手を回しているのだろう。

ついでなので神像の事を掴める可能性もあるとしてギラ達もそれに同行する事に。


「これですね」

「おう、こいつだ」

「本当に現金で50億…払うんですか?」

「いえ、リックさん、これは偽札ですよ、メーヌは騙せません」


秘書が持ってきたのは50億分の偽札らしい。

ドン曰く法律で商人を守るために偽札が合法化されているのだという。

ただし実際に店で使えば当然アウトである。

あくまでも身代金などの犯罪時の取引に限定された合法だという。


「そんじゃ交渉現場に行くぞ、留守は任せた、お前らも行くぜ」

「ええ、面白いものが見れそうです」

「本物の商人だけが見分けられる偽札、凄いものです」


そうしてブルクハルトの罠に飛び込むギラ達。

交渉に偽札を使うのは商売人らしいやり方だった。

本物よりも本物らしい偽札、その見分け方は商工会加盟者だけに伝えられる。

そのあまりにも精巧な偽札は知らなければ本物に見えるのだから。

犯人から神像のある場所も聞き出せるかと考えて取引へ向かう。


商工会とブルクハルト、その闇が垣間見える。

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