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権利の行使

神像を追うギラ達は商工会の後ろ盾を得た。

そしてそれと同時にブルクハルトへの宣戦布告を意味する。

商工会からは店側が拒むなら無理矢理捜査していいとも許可をもらった。

所謂警察の家宅捜索と同じ権利を行使出来るようになったのだ。


「さて、アプリにはここカーミンスの武器屋となってましたが」

「本当にあるんですかね」

「商工会を信じるしかないだろう」

「とにかく行ってみませんこと?」


そうしてカーミンスの武器屋に向かう。

権利の行使が出来る以上相手がはぐらかしたのなら、強権発動である。


「すみません、ここに神像ってありますよね」

「神像?あるよ、そいつが欲しいのか?」

「ええ、武器じゃなくてすみません」


店主は気にするなと言い、倉庫へと向かう。

だが思わぬ事態がここで発生する。


「遅いですね」

「ああ、まさか!?」

「エレネ達も行ってみるのです」


倉庫へ向かうギラ達。

そこには盛大に荒らされた倉庫があった。

幸い店主には怪我はないようだ。


「おい!何があった!」

「し、知らない…来てみたら倉庫が荒らされてて…」

「まさか読まれていたというのか?相手もこちらの位置情報が分かっているのか」


とりあえず倉庫の片付けを手伝う。

その後店主に事情を説明する。


「つまりこれをやったのはブルクハルトって奴の関係者なのか」

「そうなるね、奴は私達をどこかから見て愉悦に浸っているようだ」

「ブルクハルト…どこまで卑劣な…」


リックはやはり彼を知っている。

そしてリックから全てを奪ったのがブルクハルト。

そう考えるのが妥当だろう。


そして店主曰く神像がなくなっているという。

恐らく倉庫を荒らしたブルクハルトの関係者が持ち去ったのだろう。

流通されているのならアプリで追跡出来る。

だが個人的な移動となると商工会の情報を頼るしかなくなる。

ギラ達は一旦様子を見る事にする。

店主に謝った後今後を考える事に。


「さて、倉庫を荒らしたという事は確かにあったんです、それは確定ですよ」

「でもブルクハルトさんはなんでメーヌ達を狙うんですかね」

「それはリックさんが知っている、違いまして?」

「そうなのか?どうなんだ、リック」


リックの過去を訊くのは忍びない感じはある。

だがブルクハルトと戦う以上、聞かねばならないのだろう。


「…あれは今から八年前です」

「八年前…リックは確か今は18だったか、つまり十歳のときの話か」


リックは過去を話し始める。

それはブルクハルトによって全てを奪われるまでの一ヶ月だった。


「僕は貴族の家の息子でした、父も人が良くて硬貨コレクターでした」

「硬貨コレクター?それは家が潰れるのには…」


そんな硬貨コレクターの父に取り入ったのがブルクハルトという。

リックの父親に珍しい硬貨を高値で売りつけていたらしい。

硬貨は本物だったらしいが、父はそれを買うのに金に糸目をつけずだった。

その結果家の資産はどんどん減っていったという。

だがそれだけで家が潰れるほどの金額になるのか。

ブルクハルトは配当金システムで金を増やせると持ちかけたらしい。

そうしてリックの父親は資産の八割を投資して、配当金に期待した。

話自体は本当にある話だ、だが投資先がブルクハルトと繋がっていたという。

そうして見事に投資した金を掠め取られたらしい。


「それで資産の八割はなくなって…お母さんもお父さんも酷く落胆してました」

「それは自己責任、冷たいようだがそういうものだよ」

「そうですね、お人好しは場合によっては破滅に転がる場合もありますから」


リックの両親はブルクハルトを問い正したという。

だがブルクハルトはリスクがあるというのは最初に説明したとキチンと言った。

つまり説明を聞いた上での自己責任だと言い放ったのだ。

それでも資産の八割だ、納得出来るはずもなかったのだろう。

リックはそのときからブルクハルトを独自に調べていた。

だけど子供という立場だったためそれを言えなかった。

ブルクハルトの言った事は全部本当であり、それに失敗した方が悪い。

その投資先は本当に存在する、だがそれはブルクハルトの子会社だ。


「そうして資産の八割を失って、税金も払えなくなり家は差し押さえられて」

「その結果家は没落、路頭に迷ったという事か」

「自己責任ですね、とはいえブルクハルトはその子会社に投資させて掠め取りですか」


そのままリック達家族は浮浪者になったという。

そしてリックが少し目を離したときに首を吊って亡くなったという。

そのときからリックはブルクハルトへの復讐を決意したのだそうだ。

とはいえ簡単に倒せる相手ではない、そこで冒険者として強くなる道を選択した。

駆け出しのまま冒険者として誘われる事もないまま18歳になった。

そのときに出会ったのがギラ達だったそうだ。


「そうだったんですね、これも運命ですかねぇ」

「僕はブルクハルトを同じ目に遭わせてやりたい、そう誓ったんです」

「つまり路頭に迷わせるか、ならアタシが力を貸してやるよ」

「ソウさん何か手があるんですか?」


ソウ曰く路頭に迷わせるならその資産を奪い取ればいいだけだと言う。

資産を奪い取る、それは難しくもない話らしい。


「話は簡単だよ、ブルクハルトの資産を紙屑にしちまえばいいのさ」

「それってまさか…」

「通貨価値の一時的な暴落、そして彼の運用先の…」


相手が市場に介入出来るなら、こっちも介入してやればいい。

それは目には目を歯には歯を、ハニワハオのやり方だった。


「でも市場に介入なんてどうやるんですか?流石にそんな力はないですよ」

「アタシ達の知り合いにウルゲントの王様がいる、それだけで簡単に進むよ」

「王様に頼んで市場に介入するって…そんな無茶苦茶な…」


ソウらしいやり方でもあった。

徹底的に追い詰めるという、ある意味蛇のような。


「もちろん他の人間に損をさせはしないさ、とりあえずゾルゾーラに行くよ」

「どうなっても知りませんからね…」

「こういうイジメもあるとは、世界は広いものです」


そうしてゾルゾーラに向かうギラ達。

その手口はブルクハルトを一気に炙り出す、まさに国の権利の行使である。

市場にダメージを与えずにブルクハルトに会心の一撃を与える恐ろしさ。


その翌日見事にブルクハルトの資産価値が紙屑になったと確認した。

ちなみに国王による的確な命令によって市場にはかすり傷にもならなかったらしい。

三国によるブルクハルト撃滅作戦は見事に成功した。

個人攻撃のための市場介入、ソウの恐ろしさを垣間見たギラ達だった。


だがブルクハルトも黙っていない、戦いはまだ終わらないのだ。

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