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山中の隠れ里

神像を追うギラ達。

次はウルゲント北東にある開拓都市ジョバージへとやってきていた。

その都市は一部の人間が新たに興した新興都市だ。

とはいえ今は村規模だが、この先もっと大きくなりそうな、そんな都市だ。


「ここがジョバージですか」

「ジェシー・リードって人を探さないとね」

「外の世界は面白いですわね」

「ま、まあそれより行きますか」


そうして街の人にジェシーの居場所を訊く。

その居場所は街の端にある小さな研究所らしい。

ギラ達はそこへと行ってみる。


そこにあったのはお世辞にも研究所とはいえない建物だった。

一応扉をノックしてみる。

すると中から声がする。


「はい、どちら様」

「単刀直入にすみません、あなた彼女から神像を買いましたよね?」


神像の事を早々に切り出す。

ジェシーは少し思い出し、神像の事を話してくれる。


「あれなら譲っちゃいましたよ、東の国を研究してるっていう人に」

「その人はどこの誰ですか」


深く切り込む。

ジェシーは名前は言えないが、その人の住んでいる場所は教えてくれるという。


「北西の山の中に住んでるフェリード族の研究家です、聞いた事はないと思いますが」

「フェリード族?初耳な種族だな」


ジェシー曰くフェリード族とは翼を持つ種族らしい。

要するに有翼人だ。


「私は交流があってね、その研究家に譲ったんです」

「あなた、本当に仕事が速いんですのね」


ペトラも若干呆れ顔だ。

とはいえまたしても別の人の手に渡っていた。

ギラ達はジェシーにお礼を言いその山に向かう事に。


「ああ、そうそう、その山は狼が出るのでご注意を」

「分かりました、感謝します」


ギラ達はジョバージを出て北西の山に向かう。

少々距離があるのでソルバードで移動した後山は徒歩だ。


山に足を踏み入れたギラ達はその山の独特さに気づく。


「この山、空気が張ってますね」

「多分警戒されているんだろう、油断はせずに行こうか」


そうして山の中を進んでいく。

フェリード族、またしても知らない種族が出てきたものだ。


「有翼人って言ってましたよね、フェリード族って」

「翼を持つ種族、興味深いですわね」

「だね、この大陸も実は知らない種族がもっといるんじゃないのか?」


確かに以前のエルフの一件といい特定一部の人とは交流もある。

とはいえ大々的には知られていない種族もいくつかは存在するのだろう。

そうして山を進んでいると何か音が聞こえる。


「翼の音?」

「上だ!」


上を見るとそこには空を飛ぶ人間らしきものが見えた。

その人はギラ達の前に下りてくる。


「こんなところまで人が来るなんて珍しいな」

「えっと、フェリード族の…」


その人の背中には翼が生えていた。

確かにそこには有翼人のフェリード族がいたのだ。


「フェリード族…ですか」

「それで何か用ですか?」


事情を説明する。


「神像を売った研究家?それって多分ジョンかな?ジョン・レスター」

「その人に会いたいのですが」


その男性に交渉する。


「とりあえず里に来なよ、話はそれからだ」

「分かった、ではお邪魔させてもらう」

「有翼人の里、わくわくするのです」


そうしてその男性に案内され里へと足を踏み入れる。

その里は断崖に作られたまさに飛ぶための里だった。


「ジョンの家は南東の白い屋根の家だよ」

「分かった、感謝する」

「それでは行ってみるのですっ」


南東にある白い屋根の家を見つける。

ギラ達はその家の扉をノックする。


「はい、誰ですか」

「ジョン・レスターさんですよね?」


男性は確かに自分がジョン・レスターだと答える。

そしてギラ達は神像の事を尋ねる。


「神像?あれなら行商人に売ってしまいました」

「その行商人の名前とか分かりますか?」


ジョンは名前を思い出す。


「えっと確か、アメリアっていう女性の行商人です、カーミンスに行くとか」

「分かりました、感謝します」


立ち去ろうとすると呼び止められた。

里に困っている人がいるそうで、話を聞いてあげて欲しいという。

ギラ達は一応それを了承し、言われた家へと向かう。


「失礼します」

「あなた達は…?」

「ジョンさんに言われて話を聞きに来たんですが」


その家にいた女性は悲しげな顔をしていた。

理由を聞いてみる事に。


「娘が帰らないんです、外の世界を見るんだって言って出ていったっきり」

「それは何日ぐらいですか?」


その娘が帰っていない日数を尋ねる。


「もう二ヶ月です、死んでいるのかもと思うと怖くて」

「二ヶ月…行方不明と死亡の線引のラインギリギリか」

「なら私達が探しますよ、外の世界はいろんな場所に行けますし」


母親は申し訳なさそうに頭を下げる。

ギラ達は神像と同時にその娘も探す事となる。

とりあえずその娘の名前を聞いておく。


「クラエスです、どうかよろしくお願いします」

「クラエスさんですね、分かりました、必ずや探してみせます」

「それでは我々は失礼します、お気を強く持ってください」


そうして家をあとにする。

有翼人のクラエス、その娘を探すとはいえどうやって探すべきか。

とりあえずそれも考えつつ、次の目的地はカーミンスに決まる。


ギラ達は山を下山しようとする。

そのとき明らかな敵意、そして殺意を感じ取る。


「これがジェシーさんの言っていた狼ですか」

「どう見ても敵と認識されているね、倒すか?」

「出産期、か?それとも縄張りを荒らされたのを怒っているのか?」

「どのみち逃げられませんわよ、なら弱らせてから逃げてもいいかと」


そのままでは逃げられないという判断。

出産期の可能性もある以上、簡単に殺すわけにはいかない。

手加減をしつつ死なない程度に傷を負わせる事に。


狼はそのまま襲いかかる。

その狼の足元をソウが的確に斬りつける。

足を傷つければ動きが鈍る、そして暗器の毒でさらに動きは遅くなる。

狼は敵意を剥き出しにしつつも、その動きは確実に鈍っていた。


「今なら逃げられるね、走りな!」

「合点でい!」

「ソウさんは流石ですのね」

「やはり只者ではない、何者なんですかね」


そのまま手負いの狼から逃げ切る。

なんとか山を下山し次の目的地であるカーミンスへ向かう。

とはいえすでに日は落ち始めている。

カーミンスには間に合うが、情報収集は明日になりそうだ。


ギラ達はお互いの素性にはあえて触れないでいる。

それでも仲間としての信頼は確かにある。

そんなギラ達はそれでも仲良くやっているのだから。


神像の流れは掴めない空のように手元からすり抜けていく。

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