悪天候の島
神像を追いかけるギラ達。
今度は商業都市グラテーロに来ていた。
ここのラリー商店という店に売ったと聞いている。
ギラ達はラリー商店を探す事にした。
「ふむ、相変わらず活気がありますね」
「そうですね、商業都市ですから」
「それよりラリー商店を探しましょう」
そうして街の人に聞き込みを開始する。
その結果裏通りにあるという事が分かる。
ギラ達は裏通りへ入りラリー商店の看板を発見する。
「ここだね、入るよ」
「ええ、まあどうせないと思いますけどね」
「元も子もないですね…」
店に入り店主に声をかけ、神像の事を尋ねる。
「店主のラリー・シーツさんですね、以前ここに神像が売られませんでしたか?」
「神像?えっと…ああ、あったな、でもそいつなら売れちまったよ」
「誰に売ったか分かりますか?」
店主は売った相手を思い出す。
「確か西の島から来てたっていう貴族のお嬢様だよ、珍しいとかで即買いだ」
「西の島?確かに西の海域には島があるが、あそこは常に悪天候だぞ?」
恋夜曰くアルセイム西の海域は常に悪天候だという。
だが島はあるにはあり、そこの貴族のお嬢様が買っていったそうだ
「聞いた話じゃ、その島に街があるんだと、そこのバーリーズって街の人らしい」
「悪天候の島の街ですか、今なら行けそうですね」
「なのです、改造の力を見せるなのです」
店主は冷やかしかと尋ねる。
一応神像を追いかけている事は秘密にしておく。
「ならこいつを売ってくれ、言い値で買う」
「へぇ、なら少し盛るぜ?」
ソウはそこにあった女神リリベルの教典を言い値で買い取った。
店主も嬉しそうにしている。
そうしてお礼を言い店を出る。
「さて、西の海域ですか」
「今のソルバードならあの悪天候も突破出来るはずだよ」
「それじゃ、いざフライアウェイですねっ」
「では行きますよ」
そうして街を出てソルバードに乗り込む。
そのまま西の方角へ向け速度を上げつつ発進する。
飛んでいると天気が悪くなってきた。
そしてその雷雲の中に島があるのを確認する。
「速度上げて突っ込みますよ!しっかり掴まっててくださいね!」
「は、はいっ!」
メーヌが速度を一気に高める。
そのまま悪天候の中へと突っ込み無事に雷雲の中へと入る事に成功する。
「一度入ってしまえばあとは速度落としても平気みたいですね」
「目的の島はあそこか、街も見える」
「なら近くに着陸して行ってみますか」
悪天候の中、島の街の近くにソルバードを停めロックをかける。
そしてバーリーズの街へと足を踏み入れる。
「本当に街があったのか、世界にはこういう知らない街も意外とあるのかもしれん」
恋夜はこの街に興味津々だ。
人も暮らしていて、外にはどうやって出ているのかなども気になっていた。
だが今はそれは置いておき、神像を買ったという貴族のお嬢様の家を探す。
「貴族のお嬢様?それならあの人…ペトルーシュカさんかな?」
「ペトルーシュカ?」
どうやらペトルーシュカという人がこの街の貴族のお嬢様らしい。
他にもいるものの、知名度では彼女が一番らしい。
「その人の屋敷なら東の方だよ、青い屋根のお屋敷がそれさ」
「分かった、では行ってみるとするよ」
街の人にお礼を言い東にある青い屋根のお屋敷を探す。
それは簡単に見つかった。
ギラ達はその屋敷の呼び鈴を鳴らしてみた。
「どちら様ですの?」
「少し訊きたい事があってお伺いしたんです、話をさせていただけませんか」
すると門が開く、中に入れという事なのだろう。
ギラ達は屋敷へと足を踏み入れる。
「私がペトルーシュカです、それであなた達なんですの?お話があるって」
「以前グラテーロで神像を買いましたよね?その神像を探しているんです」
ペトルーシュカは思い当たる節はあるようだ。
「あれは売ってしまいましたわ、それが欲しかったんですの?」
「はい、それとどこに売ったか覚えていますか」
ペトルーシュカはその売った先を教えてくれる。
「ウルゲントの宗教研究家ですわね、確かジョバージとかいう街の人だと」
「ジョバージ、ウルゲントの北東にある開拓都市だね、あそこの研究家か」
ペトルーシュカはそれで間違いないという。
その人から名刺ももらったそうで、それを見せてくれた。
「ジョバージ宗教研究家、ジェシー・リード…」
「その人に神像を売ってしまいましたの」
とりあえず売ってしまった先については知れた。
そこに向かおうとお礼を言い立ち去ろうとすると、呼び止められる。
「あなた達、何やら面白そうですわ、私も仲間にしなさい」
「は?それは別に構わないんですけど、いいんですかね」
ペトルーシュカ曰くどうせ一人暮らしで暇なので、ついていくという。
「決まりですわ、あなた達に拒否権はありませんわよ」
「困ったお嬢様だ、まあ面白そうではあるしアタシは構わんさ」
「同意だね、私としてもそれは歓迎するよ」
「意外と寛容ですね、僕も構わないですけど」
ちなみにペトルーシュカは騎士だという。
ウルゲントに騎士留学の経験があり、そこで騎士としての精神を培ったらしい。
「あと私の事はペトラで構いませんわ、長いと何かと面倒でしょう」
「分かりました、ではペトラさん、よろしく頼みますね」
そうして新たにペトラを仲間にしたギラ達。
ソルバードの定員は増えているので、あと二人は仲間に出来る。
エレネを椅子に座らせなければ三人は可能だ。
ギラ達はついでに街を少し散策してから行く事に。
バーリーズの街は独自のお酒などを作っているという。
せっかくなので雑貨屋で特産品のお酒を瓶で数本買っていく。
他にも特産品の食べ物などを買った後ソルバードに乗り込みウルゲントへと飛ぶ。
目的地はウルゲント北東にある開拓都市ジョバージ。
そこにいる研究家のジェシー・リードに会う事だ。
ギラ達はそのままウルゲントの北東へと向かっていく。
「それにしてもどうやって来たのかと思えば、こんなものを使ったとは」
「自慢の乗り物ですよ、空を移動出来ると快適ですから」
ペトラもソルバードには驚いているようだ。
だが騎士であるなら、意外と頼もしい仲間だとギラ達は思っていた。
腰に下げている剣も見た感じ立派なものだと窺える。
その騎士道は彼女の精神を支えるものなのだろう。
そんな感じで駄弁りつつウルゲント領内へと入る。
神像は追いかけてもその手元からすり抜けていくのである。