ゴブゴブパニック
そんなわけで隣村にやってきたギラ達。
村に入るとどうにも静かなのに気づく。
「静かですね」
「本当ですね、なんでしょう」
「人はいるにはいますよ」
「少し話を聞いてみましょうか」
そうして村人から話を聞いた一行。
どうやら畑がゴブリンに荒らされているらしい。
「あの、あなた達は冒険者ですよね?」
「そうですよ、新米ですが」
その男性はこの村で新しい作物の研究をしているらしい。
だが試験的に植えても畑を荒らされ困っているという。
「というわけなんですよ、畑が荒らされるせいで新種の作物も悉くで」
「うーん、ゴブリンじゃそれなりに知能があるので罠は通じませんよね?」
「ええ、少なくともゴブリンの知能なら獣除けの罠なんて抜けられますね」
ゴブリンはモンスターの中では知能がある方だ。
人の仕掛ける罠程度なら見向きもしないだろう。
「なら私達がゴブリンを討伐しましょうか?恩を売りたいので」
「素直ですね…まあ退治してくれるなら嬉しいですけど」
「ですね、メーヌも恩を売っておいた方がいいと思いますよ」
明らかに打算的な思考で協力を申し出るギラ達。
だがその研究者も背に腹は代えられないようだ。
「ならお願いします、ゴブリンは東の方から来ているみたいです」
「分かりました、では行くとしましょうか」
「あ、待ってください!」
そうして村を出て東の方へ向かう。
だが東へ向かう途中で道が落石により塞がれていた。
迂回しようにもその場所は脇が崖になっているので無理だ。
仕方ないので落石を除去する事にした。
「翠、やってしまいなさい」
「合点です!せーのっ、どーん!」
翠の組成変更でレーザー砲を使い岩を消し去る。
そうしてその先の道を進んでいく。
道を進む事数十分、ゴブリンの巣穴と思われる洞窟にたどり着く。
「ここみたいですね、とりあえず中に入ってゴブリンをジェノサイドしますか」
「ゴブリン程度じゃ燃えませんねぇ」
「メーヌさんが本気で燃えたらフレアになっちゃいますから」
「あはは、とにかく行きましょう」
そうして洞窟へと足を踏み入れる。
中は確かにゴブリンの巣穴のようだ。
襲ってくるゴブリンを軽くキリングして親玉を探す。
洞窟の奥に進むとそこにはそんなに多くはないものの、光り物があった。
恐らくゴブリン達が冒険者などから奪い取ったのだろう。
今回は村人からの依頼なので、冒険者ギルドからは報酬は出ない。
とはいえ冒険者ギルドの依頼にゴブリンの親玉討伐があったのを覚えていた。
つまりここで倒してしまえば手間を掛けずに討伐依頼成功になる。
そうしてその光り物を回収しようとする。
するとメーヌが気配を感知する。
「何か来ますよ!」
すると突然矢が飛んでくる。
矢を使うゴブリン、これは紛れもなくドビーだ。
「そんな…こんな土地にドビー!?」
「取り巻きも多いですね、これぞゴブゴブパニック」
「とはいえドビー程度なら負けませんよね」
「はいっ、蹴散らしましょう」
当然ドビーとその取り巻きは敵と認識し襲ってくる。
ドビーはシルバーランクのモンスター、この土地では明らかに格が違う。
「リック、ドビーの弓では詠唱が困難です、守りに徹しなさい」
「は、はいっ!」
「メーヌは隙を窺いますね、翠さん、取り巻きを一気に片付けてください」
「合点でい!せーのっ、ドンッ!!」
翠が腕をショットガンに変化させ取り巻きを一掃する。
それに合わせギラとメーヌがドビーに斬りかかる。
だがドビーも馬鹿ではない、武器を棍棒に持ち替え殴りにかかる。
「今なら…!雷よ、縛り上げろ!てやっ!」
リックの雷魔法のサンダーリングがドビーを拘束する。
そのままギラとメーヌの交差斬りが綺麗に決まる。
それによりドビーはその場で息絶えた。
「やるじゃないですか」
「えへへ、咄嗟にやっただけですから」
だがリックのその判断は見事なものだった。
それと同時に巣穴のゴブリン達は一斉に逃亡していく。
統率を失った以上あとは野ゴブリンになって倒されるだけだろう。
ギラ達はそのまま光り物を回収し村に引き上げる。
「本当に倒したんですか…」
「はい、とはいえまさか親玉がドビーなのは想定外でした」
事の経緯を説明する。
親玉がドビーだった事には村の人達も驚きを隠せないようだった。
「なんにしても、恩は売れましたね、あとこれを回収したので村のお金にでもどうぞ」
そう言って巣穴から回収した光り物を村人に渡す。
村人は申し訳なさそうな顔をするが、自分達には不要だとギラは言う。
恩を売るのにも成功したので次の目的地とかを考える事に。
「あの、ならこの先に中規模の街があるので行ってみては?」
「中規模の街ですか、まあそれもありかもしれませんね」
その街はここからそんな距離はないらしい。
そういえばとギラは研究者に質問をする。
「そういえば国はこの国だけじゃなく複数あるって事でいいんですか?」
「ええ、そうですけど、それをご存じなかったんですか?」
「すみません、すっごく遠くから来たものですから」
研究者もそれは不思議に思うが、とりあえずこの世界の事を説明してくれた。
この世界は三国による三すくみ状態になっているらしい。
軍国アルセイム、商業国オルバイン、そして今いる宗教国ウルゲント。
この三国による三すくみが今の現状だという。
「他国に行くには国境を越える必要があるんですよね?」
「えっと、アルセイムは国境を越えれば行けますが通行証が必要ですね」
「なるほど、通行証はどこで手に入ります?」
ギラ達は他国にも行く気満々のようだ。
ちなみにオルバインは島国なので船か飛空艇で行くしかないらしい。
「通行証は王都に行って発行してもらう必要がありますね、王都は遠いですよ」
「そうですか、なら旅がてら王都まで冒険して通行証をもらうとします」
「それじゃあ…」
「はい、リックさんも巻き込んだ大冒険です」
その言葉にリックは嬉しそうな顔をする。
それはそうと研究者に名前を訊いておく事に。
「僕はブライアン・シャウスです、覚えてたらどこかでまた会えるかもしれません」
「分かりました、ではシャウスさんも研究を捗らせてくださいね」
「それではメーヌ達は次の街に行きますね、お元気で」
そうしてギラ達は次の街へと歩き出す。
ドビーの経験値でリックはまた一気に成長してしまった。
ギラも暇潰しに来ているので、滅ぼす前にこの世界を楽しむ算段である。
魔王様は暇人なのですから。
本気かどうかは計り知れないですけどね。
この世界の冒険は楽しくなりそうな予感がします。