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行方知れずの太陽神

ニュクス教団の一件が終わった。

ソウが暇なら目的に付き合って欲しいと誘いを持ちかける。

一応話だけは聞く事にしたギラ達。

ミリストスに戻り、ソウから話を聞く。


「その目的っていうのは行方知れずの神像の奪還なんだけどね」

「神像ですか?」


どうやらソウの母国から何者かが盗み出した神像の奪還らしい。

この大陸にそれが持ち込まれ、今もどこかに流れている可能性が強いという。


「その神像は国から盗み出されたんですよね?」

「ああ、うちの国は決まった宗教を持たない神道が主で、それの一つなんだ」

「決まった宗教を持たないのに神道?」


どうやら複雑な宗教事情があるようだ。

ソウはパルテ教団の人間だ、だがソウの国は神道が主だという。

つまりは何を信仰し、何を崇めるかは個人の自由という事なのだろう。


「それでそんな神道の神様の一つである太陽神の神像が行方知れずでね」

「不届きな輩がいたものですね」

「ギラ様が言いますかね」


ソウ曰くこの大陸に来る前に窃盗グループを追っていたらしい。

そしてその窃盗グループはこの大陸に逃げ帰ったという。

ギラ達に近づいたのは、確実に戦力になるであろうという事らしい。


「今までも独自に調査はしてた、最初に流れ着いたのはミッドハークらしい」

「確かにあそこはいろんなものが売ってますけど」

「要するにその神像の流れを追跡するって事ですか?」


つまりはそういう事だ。

その神像は国の所有物なので取り返さねばならない。

とはいえ一人では限界も見えたためギラ達に誘いを持ちかけたという事だ。


「まあ構いませんよ、どうせ暇になろうとしてましたしね」

「僕も構いません、その極東の国の宗教っていうのも興味がありますし」

「私としてはその国に行ってみたいね、まあ異論はないよ」

「すまないね、時間はまだあるし早速行動を開始しよう」


そうして行動を開始する。

最初の目的地はミッドハークだ。


ミッドハークに到着したギラ達は、それが持ち込まれたらしい古物商に会う。


「すまない、少しいいかな」

「あん?何か用かい」


古物商に事情を説明する。


「ああ、確かにあったな、買ってったのは貴族の女だ、名前は教えられん」

「ならせめてどこの街に行ったかだけでも教えてくれないか」


名前を教えるのは法に抵触するので無理だという。

ならばせめて行き先だけでも聞き出せないかと交渉をする。


「あの服からして行き先はウルゲントだろう、どこの街かまでは俺には分からん」

「分かった、世話をかけてすまない」


そうして情報を整理する。

行き先は恐らくウルゲント、そして国の事情からしてコレクターだろう。

貴族の女、そんなのは腐るほどいる。

そこから個人に行き着くのは困難な話だ。

個人情報を見るわけにもいかないので、この先に悩む。


「貴族が多いところだと、ゾルゾーラやカーミンス辺りでは?」

「まあそんなところだろうね、とりあえずゾルゾーラに行ってみるか」

「神像大追跡なのです、捕物帳なのです」

「ははっ、エレネは面白い事を言う、では行くとしようか」


そうして今度はゾルゾーラへと飛ぶ。

ちなみに最初にミッドハークに持ち込まれたときからかなり時間が経過している。

つまりは行く先は完全に闇の中状態なのである。


ゾルゾーラに着いたギラ達はその貴族の女を探してみる。

神像はそれなりの大きさがあるので、見た人がいれば知っているはずだ。


「どうでした?」

「見た人がいるそうです、西の貴族街のミランダという人だとか」

「なら行ってみよう」


そうしてそのミランダという人の家へ向かう。

その家の呼び鈴を鳴らすと中から貴族のお姉さんが出てくる。


「どちら様?あてくしに何かご用かしら」

「あなたがミッドハークでこういうものを買ったと聞いたのですが」


神像の写真をミランダに見せる。


「ああ、買いましたね、でも今はもうありませんわよ、売ってしまいましたから」

「どこに売ったのですか?」


どうやら別の場所に売り飛ばしたらしい。


「贔屓にしてる行商人ですわよ、その人はあてくしからよく古いものを買ってくれて」

「どこに行ったか分かりますか?」


行き先を聞く。

その行商人はオルバインも含めた三国で商売をしているらしく特定は困難という。


「売ったときはドラジールに行くと言っていましたが」

「ドラジール、その行商人の名前は分かりますか」


名前を聞かねば話にならないので、名前を訊く。


「えっと、ケーシーという名前ですわ」

「ケーシーだね、分かった、お手数をかけてしまいすまなかったね」


お礼を言い頭を下げてミランダの家をあとにする。

そのままドラジールへと飛ぶ。


「本当に大追跡になってきましたね」

「それなりの大きさがあるものなのにこんな流れてるとか」

「珍しいからだろうね、とはいえ価値は意外と分からないのだろう」


極東の国の神像だ、物珍しさはあるだろう。

とはいえそう頻繁に売り飛ばされると、神も複雑ではなかろうか。

そんな事を思いつつドラジールへと到着する。


そのままいるかも分からないケーシーという行商人を探すべく聞き込みを開始する。


「どうだった?」

「先日までは来ていたそうです、でも今はもう出ていったとか」

「話ではオルバインに行く船に乗ったそうです」


ケーシーの行き先はオルバイン。

とはいえ今日はもう日が落ち始めている。

夜の移動は何かと危険なので、今日はそのままここドラジールで休む事に。


宿を取り明日はオルバインに行く事で決まる。

神像は清流の如く人から人の手へと移動を繰り返しているようだ。

最初にミッドハークに持ち込まれたのはかなり前なので、難しくなりそうである。


「ふぅ、流石に放置してたアタシの責任かねぇ」

「それにしてもソウさんって服の下はずいぶんな体をしてますね」


部屋で服を脱いでくつろいでいるときにメーヌがそれを指摘する。

ソウの体は戦いでついたと思われる傷が凄くたくさんついているのだ。


「こいつかい?こいつはアタシが弱かった証拠だよ、それでも生きてるのは皮肉かね」

「傷は弱いからつく、という事ですか」


生々しいほどの生傷の数。

それは彼女が戦いで生死のやり取りをしていた事を窺わせる。

リックもそんなソウの傷だらけの肢体に魅入っていた。


「リックはアタシの下着姿に無反応、なんか不服だね」

「もう慣れちゃいましたよ、僕がどんな扱いを受けてたと思ってるんですか」


リックは宿に泊まるときに毎回一緒の部屋にされている。

それにより下着姿も裸も見慣れてしまい、反応は薄くなっている。


「まあいいか、明日のオルバイン行きに備えて休んでおきな」

「そうだね、今回の仕事はそれこそ捕物帳になりそうだ」

「なのです、わくわくなのです」


そうして床に就く。

神像を追いかける大追跡が始まったのである。


新たな敵、ではなく大追跡にギラは少し楽しげに笑っていた。

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