暴挙の果てに
久しぶりにミリストスにやってきたギラ達。
その様子は以前と変わっていないようにも見える。
だが気になっていたのは下町だ。
あの愚民達の逮捕は下町、そしてこの街のイメージに影を落としていた。
「さて、とりあえず状況を確認しますか」
「そうですね、何か分かるかもしれませんし」
「それじゃ各自一旦自由行動だ、あとで広場に集合だよ」
そうしてそれぞれ街の様子を見にいく。
「ふむ、特に変化はないっぽいですか」
「とはいえなんか静かじゃないか?」
「何かあった?あまり活気がない」
メーヌ達はその静けさを感じていた。
近くの人に話を訊く事に。
「あの、妙に静かですけど」
「ああ、実は妙なローブ姿の人が街の人を何人か連れていったのさ」
「それってこんなローブなのです?」
エレネが写真を見せる。
街の人はそれだと言う。
「えっと、その人達はニュクス教団ですよね」
「そうだよ、あいつら何がしたいのかしら」
「やはり裏で何かしようとしている?」
街の人はそいつらが気味悪いという。
表向きは宗教の勧誘だが、得体の知れない何かを感じるとか。
「その人達は何をしようとしてるのかね」
「なんでも巫女様を探してるみたいにつぶやいてたよ」
「巫女ですか?」
ニュクス教団は巫女を探している。
それは彼らの目的に必要な何かだろうか。
その巫女という言葉をメーヌは記憶する。
「その巫女っていうのは一体何なのです?」
「あたしも詳しくは分からないよ、でも何かやろうとしてるんじゃないかねぇ」
「分かりました、時間を取らせてすみません」
とりあえずお礼を言い、情報を整理する。
ニュクス教団は巫女を探している、そして何人か人を連れていっている。
ソウはその巫女を相手より先に探し出さないかと提案する。
「そうですね、今はノーヒントですけど、巫女を探してみてもいいと思います」
「その巫女のヒントを探すなのです」
「だね、合流前にニュクス教団の成り立ちとかも調べたいし」
メーヌ達は一旦この国の王立図書館に移動する。
そこで宗教史などを分かる範囲で調べる事に。
一方の恋夜と翠は商業区に来ていた。
「ふむ、どうにも活気が減っていないか」
「はい、前はもっと賑やかでした」
商業区は表向きは普段通りだ。
だが明らかに活気は減っているのを感じる。
「すまない、何かあったのか?」
「ん?ああ、それは以前の下町の一件のせいだろうな」
「下町?」
それは以前の下町の浄化作戦だろう。
その影響で王都の活気は見事に落ちてしまったという。
それでも買い物客は来るものの、数は目に見えて減ったらしい。
「国としてもイメージ回復に努めてるよ、あいつらのせいで損害も出たしな」
「下町とはそんなに酷かったのか?」
恋夜は当時の状況を見ていない。
あのとき下町の現場に行ったのはギラとリックだけだ。
「あんた知らないのか?あいつらの横暴のせいでこの国の損害もデカいぞ」
「ふむ、そういえば以前逃げたという平民を見たな、あいつらの事か」
「それですよ、あの人達がそんなに…」
商店主もそれにより売上が落ちた事を嘆いていた。
だからこそ国を上げてイメージ回復に努めているという。
「なんにしても今は耐えるしかないさ」
「そうか、ではその林檎を二つ買うとしよう」
「林檎ですっ」
そうして恋夜は林檎を買う。
翠と一緒にそれをかじりながら、アルセイムの今を知る。
ニュクス教団と下町の残した負の影響。
それにより今は耐えるしかなく、国としても精力的に動かねばならない。
潰れるとまではいかないが、この国は今はそのイメージを回復せねばならない。
「この国も大変な事になったものだね」
「ですね、でもきっと立ち直ってくれますよ」
二人はそれを信じつつ別の情報も探しにいく。
一方のギラとリックは下町に来ていた。
「静かですね」
「あのときの影響でしょうね」
「おや、あなた達はあのときの」
どこかで聞いた声がした。
そこには以前下町の事を話してくれたヨーゼフがいた。
「下町の浄化作戦は成功したんですね」
「ええ、逃げた者達も全員逮捕しました、今は全員刑務所です」
「でもどうしてこんな事に…」
ヨーゼフも不思議に思っているという。
とはいえ昔からその予兆はあったのだともいう。
一人の青年が下町を扇動したとヨーゼフは思っているらしい。
「恐らくあのときの…」
「全員ではありませんが、彼に扇動された者達が下町をああしたのだと」
「そんなのって…」
ヨーゼフは彼に扇動された者達だけを確保したという。
下町で彼と関わりを持たなかった者は今も下町に暮らしているそうな。
とはいえその一件でイメージは悪化し、冷たい目で見られているという。
それが理由で下町を去って他の街に移住する者も出たそうだ。
「彼らは革命でも起こすつもりだったんでしょうな、それを煽ったのです」
「でもそれは見事に潰された、結果としてはどうなんですかね」
「僕もそれは思います、イメージも悪くなっちゃいましたよね」
ヨーゼフは今は国のイメージを回復に努めているという。
国王もそれを受け国のイメージを回復すべく多くの手を打っているそうだ。
「なんにしても、今は耐えるしかありません、それしかないのです」
「ヨーゼフさん…」
「彼らのした事は国家に対する横暴でしょうしね」
とりあえず下町の今は分かった。
ヨーゼフもギラ達の今後の無事を祈り職務に戻っていった。
そこにヨーゼフが戻ってきてニュクス教団の事を教えてくれた。
奴らは国に夜の森の開放を求めたらしい。
必要であれば今夜許可を出してもらうが、どうするとも言う。
ギラはそれが何かの進展に繋がると踏み、許可の申請をしておく。
ヨーゼフはそれを了承し改めて職務に戻っていった。
そうして一旦合流し情報の確認をする。
「夜の森?」
「巫女の話も気になる中で夜の森か、行ってみる価値はありそうだ」
「国の騎士さんに許可を申請したので、明日には許可が下りるかと」
「なら今日はここで一晩明かすか、それで明日はその夜の森に行ってみよう」
そうして意見は一致する。
明日はその夜の森に行き何があるのかを確かめる事に。
ニュクス教団が開放を求めた夜の森。
そこにニュクス教団の秘密がある、ギラはそう考える。
メーヌ達が聞いた巫女の話、そして夜の森。
ニュクス教団の秘密に迫れるのか、それは明日になってからだ。
アルセイムの現状を知りつつも、目的を今は優先するのである。