鍛冶屋を求めて
レインボーメタルの使い道を考えるギラ達。
いくつかは武器に鍛えてもらう事で一致している。
とはいえ問題はそれを鍛える鍛冶屋だ。
この金属を使えばどんな武器にもなるからこそである。
「さて、どこかにいい鍛冶屋がいないかという事ですけど」
「先日のオルバインの人は刀鍛冶なので杖とかは無理ですね」
「ふむ、ならバドカに行かないか?あそこのデータベースならあるいは」
「まあそれがいいかもしれませんね」
そんなわけで意見は一致する。
ウルゲントの情勢を調べる前に鍛冶屋探しをする事となった。
ソルバードに乗り込みバドカへと飛ぶ。
空を飛ぶ事数時間、無事にバドカに到着する。
そのまま大図書館へ向かい、そこのデータベースにアクセスする。
検索内容は鍛冶屋であり、暗器や杖も作れる鍛冶屋だ。
そうして検索をかけると、そんなに多くはないものの候補がヒットする。
「ふむ、それだけの鍛冶師、引退した人も混ざってますね」
「現役の鍛冶師で最高なのは、アスベットという人みたいです」
「僕としてはこっちの引退したエマーソンって人が気になるんですが」
「でも引退した人に鞭打つのはどうなんだい?」
そうしてその場で相談する。
その結果エマーソンという引退した鍛冶屋を当たってみる事に決まる。
今はアルセイムの北の山の中に住んでいるとなっている。
断られるのは覚悟の上でそのアルセイム北部の山へとソルバードを飛ばす。
そうして正午頃、アルセイム北部のその山へと到着する。
その山は規模こそ中規模だが少々険しい。
それでも行くと決めた以上山に足を踏み入れる。
山を登り始める事数十分。
雲行きが怪しくなってきた。
山の天気は変わりやすい、とはいえ死ぬような危険のある山ではない。
そのまま雨が降り始めるが、登山を続行する。
そうして山を登り始めて今は四合目。
目的の鍛冶師はこの辺りに住んでいるとバドカの情報にはあった。
周囲を少し調べると、そこには小規模の小屋と工房らしき建物があった。
ギラ達はその小屋の扉をノックする。
「はい、どちら様なのです?」
中から出てきたのは幼い少女だった。
なんか拍子抜けしていると、後ろからいかつい髭面の男性が出てくる。
「エレネ、誰だ?」
「えっと、子供とお姉さんなのです」
その髭面の老人がエマーソンのようだ。
少女はエレネというらしい。
「なんだ、俺を訪ねてくるって事は仕事の依頼か?」
「あ、はい、そうですけど」
その言葉にエマーソンは追い返そうとする。
「ま、待ってください!珍しい鉱石を持ってきたので話だけでも!」
「珍しい鉱石?一応見るだけ見てやる」
その言葉に興味を示したのか中へと入れてくれる。
エレネから濡れた体を拭くタオルを借りる。
そうして交渉が始まる。
「えっと、その珍しい鉱石っていうのはこれで…」
「おいおい、こんなもん見せるのかよ」
「不服でしたか?」
そうではない、その鉱石を見て興奮しているのだ。
「まさか失われたって言われるレインボーメタルとか、お前らどこでこれを?」
「先日ウルゲントの鉱山で新たな道が見つかった、そこの奥に大量にあったぞ」
その言葉にエマーソンは驚きを隠せないようだ。
「まさか失われた金属がそんなにあったってのか、そいつは世紀の発見だぜ?」
「えっと、それでこのレインボーメタルを武器にして欲しくて…」
「やはり駄目か?」
エマーソンは少し沈黙し、返事を返す。
「いいだろう、こんなすげぇもんを扱えるなら引き受けてやる、注文を言え」
「えっと、僕の杖と恋夜さんとソウさんの暗器を」
その依頼を受け、高揚するエマーソン。
交渉成立である。
「ただ、暗器となると少し特殊な技術が必要だな、そっちは任せとけ」
「ありがとうね、断られる事前提だったから驚いたよ」
「やっぱり血が騒ぐんですか?」
その言葉への返事は意外なものだった。
「こんな可愛い女性の依頼を断るなんて失礼だろ?あとは好奇心だ」
「はぁ、意外と軽いんですかね」
「アタシは可愛いに含まれるのか?」
そんなこんなで交渉はまとまった。
「さて、そんじゃそうだな、二週間後にもう一度来い、それまでに完成させる」
「分かりましたっ、では期待してますねっ」
そうしてレインボーメタルをエマーソンに託す。
エマーソンはとても燃えているようだった。
「ああ、そうだ、お前達、エレネを仲間に加えてもらう事って出来るか?」
「えっと、乗り物の定員が六人なので…」
その言葉にエマーソンは少し笑う。
「そいつなら問題ないと思う、おいエレネ、問題ないよな?」
「はいなのです、問題ないですよ」
「えっと、どういう意味…」
エマーソンはエレネに指示を出す。
「お前の正体をバラしていいぞ」
「エレネはこういう者なのです」
「これは…まさか液体金属?どうしてそんな未知のテクノロジーが…」
エマーソンがエレネとの出会いを話してくれる。
「こいつは昔、俺が偶然掘り当ててな、そのときから懐かれて一緒に暮らしてた」
「はぁ、つまり偶然出会ってそのまま懐かれたと」
「それにしても液体金属…という事は姿を自由に変えられる?」
エレネはギラの姿になってみせる。
それを見て確信するのだった。
「な?つまり椅子がなくても液体の入る容器があれば問題ない」
「まあ、そういう事でしたら構いませんよ、よろしく頼みますね」
「はいなのです、よろしくなのですよ」
そうして思わぬ仲間を得たギラ達。
エマーソンもエレネには外の世界を知って欲しいと願っているようだ。
ちなみにエレネの普段の姿は幼女の姿らしい。
「さて、そんじゃ俺は仕事に取り掛かる、二週間後にまた来いよ」
「分かりました、それじゃエレネさんも行きましょうか」
「はいなのです、エマーソンも元気でやって欲しいですよ」
そうして交渉は成立した。
二週間後に再びこの工房を訪れる事となる。
エマーソンもギラ達の信頼に背くわけにはいかないと感じていた。
一度は引退したものの、オーダーメイド限定で今でも仕事はしている。
だからこそ珍しい鉱石を持ち込んだギラ達を面白いと思ったのだ。
「さて、天気も晴れてますね」
「それじゃ次はどうする?」
「一旦ウルゲントに行って情勢を少し調べましょう、時間はありますよ」
「外の世界、わくわくなのです」
「決まりだね、ウルゲントに向かうよ」
そうして山を下山しソルバードで再びウルゲントへ。
武器が出来るまではニュクス教団の事をウルゲントで調べる。
奴らの目的なども気になる以上、放置は出来ないのだから。