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奪うという事の意味

カジノの大勝から一夜明ける。

ギラ達は冒険者ギルドで依頼を受けていた。

相変わらずランクより高い依頼である。

ゴールドランクにはまだ少し時間がかかりそうだ。


「革命団の残党を確保せよ、ですか」

「それは昔のやつだね、そいつらの残党が生きていたのか」

「それって軽く見ても60年は昔の話なんじゃ…」


革命団、それは昔この国で結成された左翼組織だ。

とはいえ信条は明確なものがあり、一定の支持も集めていた。

それが新政府の樹立により監視対象に置かれただけの事。

元々過激な手段に走る傾向はあったという。

目的は手段を正当化しないという事である。


「目的地は以前のハウルウルフのときの廃鉱だそうですよ」

「なら行ってみましょうか」

「一応生け捕りになってるね、邪魔さえ入らなければ、だが」


ギラ達を狙うニュクス教団。

奴らの邪魔が入ればその残党が殺される可能性もある。

それだけは避けねばならない。

今回の依頼は捕縛と防衛を同時にこなす必要もあるかもしれない。


そうしてギラ達はその廃鉱へと向かう。

その廃鉱は人が拠点にするにはちょうどいい規模だ。

とはいえ街からは少々離れているので、計画的に動いているのだろう。


「ふむ、確かに人の生活の跡が確認出来ますね」

「ええ、食べ物の包みのゴミやなんかか落ちてます」

「その残党は奥だろうね、襲ってきたら殺さずに確保するんだよ」

「合点ですっ」


そのまま廃鉱の中へと進む。

すると案の定人がいた。


「貴様ら何者だ!」

「流石は60年は前の人達、それなりにヨボってますね」

「お前達を確保するように依頼が出されている、大人しくしてもらおうか」


ちなみに今回の依頼は国の軍隊との共同作業。

今もどこか見えないところでオルバイン軍が様子を窺っている。


「我々は…この国のために…」

「信条は立派なものだ、褒められる、だがな、目的は手段を正当化しないんだ」

「オルバイン軍の存在は確認出来ますね…ギラ様、手は抜いてくださいよ」

「了解です、では…いきますか!」


ギラが一気に距離を詰め、そのまま地面に叩き伏せる。

もちろん手は抜いているので死ぬような事はない。


「ぐうっ!?」

「他にも奥にいるようですね、あとは軍に任せて奥に進みますよ」


そうして奥に進むギラ達。

その後も何度か襲撃されるものの、全部確保する。

それを潜んでいるオルバイン軍に引き渡す。

残るは最深部のリーダーのみとなった。


「お前ら…俺達に何か恨みでもあるのか!!」

「そうですね、言うとすれば、国は綺麗にしている最中です」

「あなた達を悪いとは思いません、でも手段が間違っていた、それだけです」


リーダーはこの国を変えようと戦った。

だが結局は国の内部によって国の内部の浄化が行われた。

市民の声とは国民の声ではないのだから。


「あなたは国民の代弁者にでもなったつもりだったんでしょうね」

「だったらなんだ!あのとき…国民はそれを望んで俺達に賛同した!」

「それは違うな、国民の声などではなく、お前達の声に過ぎんという事だよ」


リーダーはそれでも認めようとしない。

政府は国民の声を聞くべきだ、それだけは変わっていない考えだ。


「まあ国民の声を聞くのには少しはそれもしろとは思いますけどね」

「だったらなんで俺達を悪人にする!」

「政治というのは庶民感覚や弱者優先にした時点で破綻する、そんなの当然です」


その言葉にリーダーは声を荒げる。


「だったら誰が民を守るんだ!国が民を、弱者を守らないで誰が!」

「だからそこが違うんですよ、国を動かし支える人は優先されるべきです」

「お前も表向きは綺麗な事を言っている、だが中身は破綻しているぞ」


それでもリーダーは認めようとしない。

政治について詳しくないものの、最低限は理解しているつもりである。

だからこそ彼の思想には共感出来ない。


「とりあえず言っておきます、あなたの言っている事は暴論ですから」

「さて、話しても投降してくれそうにないので、実力行使です!」


ギラはそのままリーダーを地面に叩きつける。

もちろん殺さずに、そして動けなくなる程度の衝撃は与える。

そうしてリーダーを潜んでいたオルバイン軍に引き渡す。

そのあとメーヌが周囲をサーチして人が残っていない事を確認する。

あとは戻って報告するのみである。


その帰り道、お約束の気配を感じ取る。


「さて、軍隊に喧嘩を売らない辺りは弁えているんですね」

「当然だ、我々の狙いは貴様らだけだからな」

「ニュクス教団…」


廃鉱を出たところに待ち伏せられていたのだろう。

周囲を教団の信者に取り囲まれている。


「我々は貴様達を我らに仇なす敵と認識している、邪魔者は消さねばならん」

「…オルバイン軍は完全に撤収しています、気配も体温も感じません」

「そうですか、なら遠慮なくやれそうです」

「無益な殺生は好まないが、ギラはそうもいかなさそうだね」


ギラはやる気満々である。

とりあえず倒さなければ帰れそうにないので、そのまま排除する事に。


「かかれ!!」


そうして信者達が一斉に襲いかかる。

数はざっと30人程度。

その程度ギラ達からすれば雑魚である。


「やれやれ、はあっ!」

「炎の剣よ、暴虐の斬光を!」

「大海の水流、ここに暴れ狂え!」


ソウの投剣が複数にクリーンヒットする。

恋夜の炎魔法も見事に多くの信者を焼き払う。

リックの水魔法も多数の信者を飲み込む。


「あの程度で倒れるとも思いませんね、ですが一ヶ所に集めるのが目的です」


そう、三人の攻撃は全て一ヶ所に集めるための攻撃だ。

そこに翠とメーヌの攻撃が炸裂する。


「せーのっ、ドカーン!」

「深緑の嵐よ!」


翠のナパームとメーヌの木魔法で一気に一網打尽だ。

そしてそこにギラの特大の光魔法が綺麗に決まる。


「滅びなさい、そこです!」


その魔法を受けた信者達はそのまま絶命する。

一網打尽にするという戦術は多数を相手にする際には賢い戦術である。


「さて、逃げますか?それとも死にますか?」

「ぐっ…」


リーダーは後ずさりをする。

だが逃げる様子はない。


「この信者達を使って教えてあげましたよね?奪うという事の意味を」

「奪うだと…我々のは…救済だ!!」


リーダーは自暴自棄になりそのまま斬りかかる。

ギラはそれを一閃して絶命させる。


「逃走は死を意味する、とでも言うんですかね」

「本当に変人ホイホイになったものだね」

「もう慣れましたよ」


とりあえずその場をあとにするギラ達。

帰って報酬をもらい明日の予定も考える。


明日はオルバインの田舎に当たる地域に行ってみようという事になった。

そうしてどこからでも狙われる事に溜息をしつつもこの世界を満喫する。


ギラの目的は今は邪魔者を消すのが先になっているのである。

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