表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/240

赤く染まる湖

今日は冒険者ギルドで依頼を受けるギラ達。

お約束のように今のランクよりも高いランクの依頼を受ける。

今回の依頼は街道に出現する魔物の駆除だ。

簡単な依頼なのでサクサク終わらせるべく目的の街道へ向かう。


「魔物の駆除、まあ楽ですよね」

「とはいえ油断は禁物だよ」


そう言っているうちに街道に到着する。

目的の魔物は蟹の魔物である。

周囲にはすでに見受けられるので、早速討伐を開始する。


「そういえばこの街道ってどこに続いてるんですか?」

「こっちは街外れだからね、この先は湖で行き止まりだよ」

「湖ですか、この国にも湖があるんですね」


魔物を倒しつつ駄弁る一行。

都市部方面への道とは逆の方向に来ているので、この先は湖らしい。

オルバインにも自然はあるので、数少ない自然なのだろう。


「そういえば面白い話がある、伝説の殺人鬼の話だ」

「伝説の殺人鬼?」


恋夜が突然面白そうな話を振ってくる。

オルバインには今から50年前に、国を恐怖させた殺人鬼がいるそうだ。


「その殺人鬼は当時国を恐怖に陥れた、だが捕まる事はなく行方知れずになったらしい」

「まさか今も国内に潜伏してる…とか言いませんよね?」

「その話はアタシも噂程度には聞いたね、人を200人は殺したとか」


その話は大地の骨もびっくりの人数だ。

大地の骨は組織で100人単位だが、そっちは個人で200人。

明らかな狂気でありキチガイである。


「大地の骨に影響を与えたとも噂されてたね、とはいえ真偽は私には分からん」

「でも大地の骨は突然話を聞かなくなったね、何かあったのかい?」


その事についてはあえて黙っておく事に。

大地の骨の壊滅は同時にオシドリの羽の壊滅も意味している。

新聞ではオシドリの羽の名前はタブーだと書かれていた。


「まあ噂ですよね、とりあえず今は依頼を優先しちゃいますか」

「ですねっ、早く終わらせましょうっ」


そうして依頼の魔物を駆除し終えるギラ達。


「そうだ、せっかくなので湖に行ってみません?」

「そうだね、時間もあるしいいと思うよ」

「釣りでもしたいですね」

「なら湖にレッツゴーですっ、マンマミーアですっ」


時間もあるので湖に向かうギラ達。

その湖は比較的大きかった、だがすぐにその違和感に気づく。


「あの、湖に違和感を感じるんですが…」

「湖が赤い?ここは天然の湖…どういう事だ?」

「…こいつは血だ、恐らく湖の底には死体が大量に沈んでる」


ソウがその赤い色の正体に即座に気づく。

だが湖を赤く染めるほどの血、それだけの死体、その意味を理解するのは簡単だ。


「まさか…噂の殺人鬼が湖に死体を捨てていたとでも?」

「それしかないだろうね、200人分の血だ、湖も赤く染まるさ」

「背筋がゾッとしますね…まさかこの湖に死体が…」


すると湖の端に一つの墓を見つける。

こんなところに墓があるのも不思議に思い、その墓を見てみる事に。


「えっと、我が愛する者ここに眠る、私の業と共に…」

「私の業?この墓に添えられているのは血のついたナイフか」

「おや、こんなところに人が来るものなんだな」


人の声がした。

振り返るとそこにはみすぼらしい格好の老人がいた。

ギラは彼にこの墓の事を尋ねる。


「その墓か、そいつは名前を出せない例の殺人鬼の奥さんのものだよ」

「殺人鬼の奥さん?」


その殺人鬼には妻がいたという。

老人はその経緯を語ってくれた。


「今から20年ぐらい前かな、その殺人鬼が奥さんの死体をここに埋めたんだ」

「人を200人も殺した人間が、一人の人間を埋葬した?」


老人は少し悲しそうな顔をしている。

殺人鬼は本当は一人しか殺していない、そう老人は言う。


「一人って…それじゃあこの湖の赤く染まったのはなんだ、明らかに異常だぞ?」

「これは当時の革命派の人間のものだ、運動で政府と衝突してね」

「つまりそのときに死んだ人間の死体がこの湖に遺棄された?」


殺人鬼の正体、それは政府によってでっち上げられたスケープゴートだそうだ。

彼に全ての罪をなすりつけたのが当時の政府、そしてその噂だけが広まったという。


「でも今ではこの国はこんな平和なのに…」

「当時はまだ技術の発展もなく国は鎖国状態だった、それが原因ですよ」

「つまり革命派は開国を求めたという事ですか」


その大規模な事件の後政府は倒閣されたらしい。

そうして生まれた新政権と新政府が今の国を作り上げたそうだ。

つまるところ大規模な粛清が政治の内部で起きたという事である。

それはオルバインの負の歴史であり、語り継ぐべき真実だと老人は言う。

そしてこの湖の死体は200人だが、死者の数はもっと多いとも言う。


「そんな事がこの国であったんですか…あなたはそれを知る生き証人…」

「ええ、とはいえ私ももう高齢です、あと何年生きられるかも分かりません」

「それで、死ぬ事に満足はあるんですか?」


ギラらしい質問をする。

老人は小さく笑い答える。


「ええ、この国の歴史を本にして伝えたらいつ逝ったとしても悔いはありませんよ」

「そうですか、なら精々幸せそうに死んでください」

「ギラ様…」


そうして老人は言う。


「歴史っていうのはね、屍の山の上に築かれるものです、覚えておきなさい」

「そうだね、人は犠牲を支払わないと前に進めない、歴史は作れない」

「歴史は失敗の一言で片付けられませんよ、そんな軽いものじゃないですから」


老人の言葉を胸に刻むギラ達。

特にリックは歴史とは血塗られたものだと、改めて思っていた。

そのまま老人に別れを告げ街に戻る。


街に戻り冒険者ギルドで報告を済ませ報酬を受け取る。

そのあとは今後の予定を相談する。


「それなら明日はこの前話していた娯楽都市に行きません?カジノです」

「ふむ、それも面白そうだね、カジノの総本山で遊ぶのも面白い」

「夜に行ければ一番楽しいよ、どうする?」


カジノは夜にその輝きを増すものだ。

それなら今からその都市へ行き、今夜そのカジノに繰り出そう。

それで予定は決まった。


そうしてギラ達はソルバードで娯楽都市セレバルに向かう。


セレバルに着いたらまずは宿を確保し夜に備える。

夜までは一旦は自由時間だ。


「さて、カジノ、一度やってみたかったんですよね」

「ギラ様はゲームのカジノしか知りませんからね」

「今夜はイッツパーリィですねっ」


そうして日が落ち夜になる。

街はカジノに向かう人が増え始める時間だ。

ギラ達もカジノに向かい、眠らない街の灯火が灯る。


今夜は全部忘れてヒャッハーするのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ