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少年の笑顔と魔王の純粋さ

本日は一日自由にする事となったギラ達。

連絡は取れるので各自オルバインの首都で自由行動だ。

この国には興味深いものも多くそれを見て回るのもいいだろう。


「それにしても、僕と恋夜さんだと不思議な感じですね」

「まあいいだろう、お互い趣味の合う者同士さ」


リックと恋夜は街を歩いて面白そうなものを物色していた。

この国は技術者などが多いだけでなく、自作文化がある。

それはジャンクパーツを買い揃え自分で作ってしまうものだ。

リックと恋夜はそんな文化に興味を持ち、ジャンク商店に来ていた。


「ふむ、この手の部品もこの国では本当に安いものだ」

「そうですね、とりあえず作りたいものは決まってますから」


そう言って二人は目的のパーツを買い漁る。

リックは元々勉強が好きなので、機械についても自然と詳しくなっていた。

恋夜は言うまでもなく、その知識に記録されている。


「さて、では宿に戻るとしようか」

「はい、こういう工作みたいなのって好きなんですよね」


そうして二人は宿に戻って徹底的にそれにのめり込む。

一方のその頃、ソウはメーヌと街を歩いていた。


「この国は食材屋はあるんですけど、基本的に出来合いが多いですね」

「まあ仕方ないさ、職人や技術者が多いから手軽さが求められた結果だよ」


二人は商店街に来ていた。

そこには食材屋も多いが、同時に出来合いのものも扱う店が多い。

野菜や魚はこの国でもそんなに高くはないが、肉が少々高い。

そもそもこの国の肉はウルゲントからの輸入が半分以上だ。

国の土地柄畜産や酪農は難しいのが理由らしい。


「でも見ると肉はウルゲントからの輸入品が多いですね」

「そうだねぇ、肉が好きなアタシとしては死活問題さ」


ソウは肉が好きだ、特に牛肉が好きだ。

この国の牛肉はアルセイムやウルゲントより二割程度高い。

輸入品なので仕方ない話ではある。


「この国にいる間は自炊は厳しそうですかね」

「食材を買ってキッチンは借りられるよ?でも無理にしなくてもいいかな」


そんなオルバインの食事情も垣間見える中で、二人は豚肉の串焼きを食べていた。

肉屋で見かけたので購入し、食べ歩きである。

この国の食事情はそんなお国柄なのだと、メーヌは勉強である。


一方のギラと翠は特にする事もなく街をぶらついていた。


「はむ」

「この辛味焼き美味しいですねっ、ギラ様」


二人は商店で購入した辛味焼きを食べながら歩いていた。

それは鶏肉に辛味スパイスをたっぷりまぶした串焼きだ。

ギラは辛いものが好きなので、この手のものはつい手が伸びてしまう。


「…ふぅ」

「ギラ様っ、ポイ捨てはいけませんよっ」

「そうだぞ!さっさとそいつを拾えっ!」


後ろから声がした。

その方向には少年が立っていた。


「なんですか」

「そいつを拾えっ!街を汚すな!」


少年は強気だ。

ギラも渋々捨てた串を拾う。


「分かればいいんだ」

「それであなた、何なんですか?」


少年はギラに尋ねる。

その少年もギラ達が珍しいようだった。


「あんた達冒険者だろ、この国に来るなんて物好きだな」

「世界を見て回るのも楽しいですよ?」


少年は翠を見て少しおちょくる。

年相応なのだろうか。


「そこの女、お前俺と同じぐらいだろ、違うか?」

「私ですか?一応そういう事にしておきます」


翠はギラに生み出された存在なので、年齢というのは曖昧だ。

とはいえ外見上は小柄だし、背もそんな高くない。

同じぐらいに見られても無理はない。


「あっ、こんな事してる場合じゃねぇや、父ちゃんに弁当持ってかないと」

「ふむ、なら私達も同行して構いませんか」


ギラは少し興味もあるようで、その少年についていく事に。

翠もそれに同意し、少年と一緒にその父親の職場へ向かう。


「ではご検討の方、よろしく頼みますよ」

「はぁ、しつこいな…」


そこでは少年の父親とニュクス教団の信者が何か話していた。


「父ちゃん、あいつらまだ来てたのかよ」

「ティモか、何度も断ってるんだけどな」

「ニュクス教団、勧誘はしているんですね」


少年の名前をそういえば聞いていなかったのを思い出す。


「あなた達はこの子の友達ですか?私はこの子の父親のロベルトと言います」

「ええ、ギラです、この子は翠です」

「それより父ちゃん、弁当持ってきたよ」


そう言ってティモは父親に弁当を手渡す。


「ああ、すまないな、忘れたのに気づいて届けさせてしまって」

「気にすんなって、忘れる事ぐらいあるさ」


どうやら父親と二人暮らしなのだろうか。

無粋ではあるが、あえて訊いてみる事に。


「母親は出ていってしまいましてね、それで私がこの子を育ててまして」

「はぁ、少し複雑なんですね、失礼しました」


父親は建設現場で働いている。

この国は国の公共事業も多く建設業は高給取りだという。


「さて、それじゃ仕事に戻らなきゃな」

「父ちゃんも国のために働いてる偉い人だもんな!」

「公共事業、ある意味この世界では先進国なんですかね」


そうして帰ろうとしたときだった。


「上ですっ!」


少し離れた場所で鉄骨を吊るしているクレーンから鉄骨が落下していた。

その下には一人の作業員がいる。

このままでは彼が下敷きになり、確実に死んでしまうだろう。


「翠!」

「合点でい!」


翠が腕をナパームに変化させ、鉄骨を撃ち抜く。

それにより軌道が逸れた鉄骨をギラの光魔法で切り刻む。


「おい!大丈夫か!」

「は、はい…なんとか…」


その現場を見ていた作業員達から一斉に拍手が起こる。

人助けなんて柄でもないとギラは溜息だ。


「す、すげぇ!すげぇよ!二人とも!」

「お二人は一体何者…」

「ただの冒険者です」

「ですっ」


あくまでもそう言い張る二人。

だが現場からは惜しみない拍手が鳴り止まなかった。

そのあとはティモとその場をあとにする。


「それじゃ俺は家に帰るよ、二人も元気でな!」

「ええ、ティモさんもお元気で」

「お達者で~」


そう言ってティモは家に帰っていった。

ギラ達もそれを見送り改めて街を散策に戻る。


そうして一日の自由を満喫した一行。

とはいえ今回の一件からもニュクス教団の活動は活発になっていると感じる。

今後も喧嘩を売られたのなら買ってやろうとギラは思っていた。


この国以外でも教団に喧嘩を売られる事はあるだろう。

だからこそ手加減をする必要はない。

明日はまた冒険者ギルドで依頼でもやろう。

そうしてその日の夜は更けていく。


そんな変人ホイホイなギラは今後も何かを惹きつけるのだろうから。

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