世界一長い三分間
そんなわけで異世界アルセレアに移動したギラ達。
とりあえず何をするか考える。
「さて、ここが異世界アルセレアのようです」
「周囲を見る限り機械文明はありますね」
「でも人は鎧に剣とか何気にカオスですっ」
まあ中世の文明の中に機械があるのは確かに不思議だ。
ちなみに機械は他国が世界に売り込んだ結果なのだが。
「さて、では冒険者にでもなりに行きますか」
「冒険者ですか?」
「あのヒキニートのギラ様が冒険者なんて」
まあ今まで散々引きこもってケームに漫画にアニメとガチオタ生活だった。
とはいえ異世界なら少しはアクティブになってもいいだろう、という事だ。
「ではこの街の冒険者ギルドでも行きますよ」
「あ、はいっ」
「合点でい!」
そうして三人は冒険者ギルドに向かう。
中に入ると強そうな男達が仕事をもらいに来ていた。
とりあえずギラ達は新規登録をする事に。
「えっと、新規ご登録ですか、ではこちらにサインを」
そう言って出された書類に達筆で三人の名前を書き込む。
「では少々お待ちを」
そうして受付の人は奥へ行き冒険者のバッジを持ってくる。
「最初はカッパーからになります、様々な依頼などをこなすとランクが上がりますので」
「分かりました、では何か依頼とかあります?」
「あちらの掲示板から身の丈に合ったものをどうぞ」
そうして依頼を探す事に。
ちなみに上位ランクの依頼も受諾可能だがそんなのはヴァカのする事らしい。
ギラは掲示板の依頼から一枚の面白そうな依頼を見つける。
それはゴールドランクの依頼で、カッパーの人間からしたら自殺行為だ。
「これで」
「ご、ゴールドですか?ですが今なったばかりの新米では死んでしまいますよ?」
「こ れ で」
無理矢理押し通してその依頼を受諾する。
すると一人の戦士が突っかかってくる。
「おいおい、そこのガキンチョ、お前自殺願望でもあるのかよ」
「はぁ、どこの世界にも下賤な輩はいるものですね」
「ギラ様またそんな本当の事を」
メーヌもぶっちゃけ容赦なかった。
するとその戦士が少しキレ気味に言う。
「新米が死にたいのかって警告してんだよ!ヴァカなのかテメェ!」
「なら少し試してみます?」
「あ、フラグが立ちました」
ギラも気怠げに戦士を挑発する。
戦士は完全にプッチンプリンしたようだ。
「おもしれぇ!表に出ろ!少し冒険者のなんたるかを叩き込んでやる!」
「ふぅ、では少しだけですよ」
それにギャラリーも集まり、表の通りで決闘が行われる事に。
「てめぇ、武器はどうすんだ?」
「そうですね、何かあったら貸してもらえます?」
「ならこいつを使いな!」
そう言ってギャラリーから渡されたのはハンドアックスだった。
「ふむ、手斧ですか、まあこれでじゅうぶんですよね」
「そいつでやろうってか、泣かせてやんぜ」
戦士も完全にやる気スイッチがオンになっている。
「メーヌ、時間を計りなさい、ぴったり三分で頼みます」
「あ、はーい、承知しましたー」
その言葉にギャラリーがざわつく。
「さて、三分です、三分の間は棒立ちしてますから、一発でも当てたら勝ちでいいです」
「はぁ!?とことん舐め腐ったガキだな!俺はゴールドランクの戦士だぞ!」
その宣言にギャラリーがさらにざわつく。
そして決闘が始まった。
「なら殺しはしないが、ちびらせてやんよ!」
そう言って戦士は自慢の長剣を抜きギラに斬りかかる。
「おらっ!はあっ!オラオラオラオラ!!」
「ふぁ、眠いですね」
その光景にギャラリーは驚きを隠せない。
ギラは確かにその場所に棒立ちをして微動だにしない。
それなのに戦士の攻撃は当たるどころか、勝手に外れているようにも見えたからだ。
「こういうときって三分が長いんですよねぇ、とはいえ反撃は三分後まで我慢です」
「ちくしょう!どうして当たんねえ!どうなってやがる!」
戦士は確実に狙いをつけて剣を振る。
だが攻撃は当たりもせず、かすりもしていない。
そうして戦士が攻撃の手を休めないまま三分が経過する。
「三分経過しましたよー」
「では、せいっ!」
それは一瞬の出来事だった。
ギラがハンドアックスを振ると戦士の剣が綺麗に折れていた。
それにギャラリーは大歓声を上げる。
「チェックメイト」
「ま、参った…」
その一瞬の出来事にギャラリー達が様々な事を言い始める。
戦士も完全に失意の底だった。
ギラはギルドに戻り改めてゴールドランクの依頼の受諾を済ませる。
一方負かした戦士はリベンジを誓い走り去ったとか。
「さて、ついでに武器でも買いますかね」
「あ、そういえばそうですね、普段使うあれは封印ですか」
「ええ、メーヌと翠はどうします?」
二人はそのままでいいとの事。
メーヌは自前の暗器を、翠は元々その肉体と機能が武器なので武器は不要だ。
「では私だけですね、少し武器屋に行ってくるので待っててください」
そう言ってギラは武器屋へ行き安物のロングソードを購入し戻ってきた。
「さて、せっかくだしパーティー組みたいですね、酒場でスカウトしますか」
「ですね、ではレッツラゴーです」
「どんな人にしましょうか」
そうして酒場へ移動する。
酒場で仲間を探していると、一人でスカウトを待っていそうな少年を見つける。
「あなた、私とパーティーを組みなさい」
「へっ?僕ですか?本当に僕ですか?」
「はい、あなたです」
その少年は駆け出しのマジックユーザーだった。
当然経験もほとんどないような新米だ。
「本当に僕なんかで…」
「当然です、経験値はあげますし同じぐらいの見た目の人が欲しいんですよ」
「あ、ありがとうございます!精一杯お力にならせていただきます!」
少年は嬉しそうに言う。
そしてギラは名前を尋ねる。
「えっと、僕はリック、リック・ショートって言います」
「分かりました、ではリック、私達と超強いモンスターを倒しにいきますよ」
そうして依頼の内容を説明する。
「カッパーランクなのにゴールドランクのモンスター!?いや、死にますよね!」
「問題ありません、あなたは後ろで見ていればいいのです」
「なんか納得いかない…でも本当に倒せるなら僕はそれを目に焼きつけます」
リックも本気のようだ。
というわけでリックをスカウトした、パパパパウアー!
「では行くとしますか」
「はいっ、ギラ様のお心のままに」
「楽しくなりそうですねっ」
「この人達カッパーランクなのにそんなに強いのかな…」
こうして異世界での暇潰しが始まる。
いきなり滅ぼしたらつまらないしね、なので少しずつやっていくのですよ。
ぶっちゃけチートですしね…。
魔王様はマイペースに生きているのです。