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人である以上

リックに魔王としての教育を施すギラ。

教育も佳境に入り新たな魔王の誕生は迫っていた。

そんな中魔王とは何なのかという事も説くギラ。

それは魔王として、そして人としての大切な事でもあった。


「リックさんも魔王としてもう少しですね」

「はぁ、でもなんていうのかもっと残虐な事を教わるんだと思ってました」

「そうだな、私としてもそれは意外な感じはする」

「それにしても魔王としての心得ねぇ、なんか怪しい通信教材みたいだ」


それはそれとしてもギラの教えは人の心である。

自分が魔王になった理由、それは絶望の果てに行き着いた先なのだと。


「結局人というのは信じられる何かがあるから道を踏み外さないんです」

「ギラさんにはそれがなかったんですか?」

「信じられるものを全て失ってその結果魔王になったと」

「でもそれはアタシには分かるよ、信じられる何かの大切さはね」


信じられる何かの大切さ。

それは道をギリギリで踏み止めてくれる支えなのだろう。


ギラはそれを失い、結果として魔王になった。

それは人の心の悪意が人の心を破壊した瞬間だとギラは言う。


「最後の希望を信じ続けて、最後の希望にも裏切られて、魔王にもなりますよね」

「最後の希望にすら裏切られた…ギラさんってそんな…」

「そうだね、アタシもそれは分かる、人の心が壊れるってそういう事さ」

「最後に信じたものにすら裏切られる、そのダメージは計り知れんからな」


だがそれでも人であるという事の意味はあった。

確かに人は醜い存在なのだろう、


人である以上人を嫌いになったら終わりなのだと。

この世界に来てそれを思い出したのだとギラは言う。


「どんなに憎くても人である以上人を嫌いになったら終わりなんですよね、結局は」

「人である以上…」

「だがギラが魔王になった理由はその人間達への絶望なのだろう?」

「まあ分からんでもないさ、ギラは全てに裏切られたんだ、それこそ全てにね」


全てに裏切られたというその言葉。

人の心の悪意がギラを魔王へと変えた。


それはまさに性悪説そのものであり、人の心の悪意を見た瞬間である。

人は敵を作らなければ生きていけないからこそなのだろう。


魔王になる前、その勇者が言った言葉、それは魔王などどこにもいなかった、と。

その絶望と王女の憎悪が魔王を生み出したのだとギラは知っていた。


「魔王というのは結果でありそれをした人の事なんですよね」

「つまり誘拐した人が魔王かもしれないしその延長線もある、と」

「でもなんとなく分かるよ、物事の繋がりの中で最後に残ったのが魔王、だろ?」

「最後に残ったもの、歴史における繋がりか」


結局魔王とは特定の何かではない。

物事の延長線で最後に残ったものが魔王なのだ。


「だから忘れないでくださいね、憎しみは人の心そのものなのだという事を」

「はい、覚えておきます」

「憎しみ、それは人の心の根幹、かね」

「善すらも凌駕するのが憎しみ、なのか」


ギラが魔王になった経緯。

それは全ての悪意を一斉に受けた果てに辿り着いたもの。


同じ魔王にリックをしはしない、それでも魔王にするのだから。

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