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優しさは罪

リックに対して魔王としての教育を施すギラ。

仲間達もそれを陰ながらに見守っている。

そんな一方でメーヌと翠は館長から様々な話を聞いていた。

魔王が誕生するまでもう少しである。


「にしてもギラさん、スパルタですよ」

「厳しいと言いましたよね」

「それにしてもギラって意外といい教育してるじゃない」

「ああ、思ったよりいい先生をしている」


そんなギラの教育もあってかリックにもその意識が浸透している。

魔王とは何か、という意識である。


「でもギラさんが本当は優しい人だって僕は知ってますよ」

「優しい人ですか」

「ギラは冷酷な裏では優しさに飢えているのかもしれんな」

「優しさに飢えている、寂しいのかしら」


だがギラも言う。

優しさは罪なのだと言うのなら、それも満更でもないと。


「優しさは罪、そんな言葉もありますが、私は満更でもないと思ってます」

「優しさは罪、ですか?」

「だけど分からなくはないわね、ふとした優しさがその人を傷つける事もある」

「ああ、本人からしたら優しさのつもりでもその人からしたら鋭利な刃物の場合もある」


優しさは場合によっては人を傷つける。

それがどんな場合かは様々だ。


それでも優しさは必ずしも人を救わない。

場合によってはその人を死に追いやる事すらある。


救ったつもりの人が死んでしまったら。

それは本人の心に傷を残すだろう。


優しさは罪とはそういう事なのだ。

それを理解しなくては優しさは成り立たない。


「結局本人からしたら助けたつもりでも相手からしたら唾を吐きたいかもしれないんです」

「人助けが必ずしも正しくない…」

「確かに人を助けるのは素晴らしいわ、でもそれが正しいかは別問題よ」

「モレーアの言う通りだな、最善の手段が最良の結果を生むとは限らんぞ」


最善の手段が最良の結果を生むとは限らない。

それは世の中の真理であり答えなのだろう。


最善手を尽くしたところで結果が悪い場合だってある。

ギラも優しさとはそういう事なのだと言う。


本人からしたらそれは優しさかもしれない。

でも相手からしたら怒りを覚える行為かもしれないからだ。


「結局優しさという行為が最善手であるとは限らないのが世の中なんですよ」

「それでも僕はその優しさを忘れないようにしたいです」

「リックはそれでいい、だが優しさは最善手でないとだけは覚えておけ」

「私達みたいな少しひねくれた大人からの助言よ」


リックもそれを信じているからこそ真面目に受け止める。

優しさは罪という言葉は世の中において通じる言葉なのだと。


だからこそ自分の優しさを大切にするようにとギラは言う。

リック自身の考えを曲げてはいけないと。


「さて、お腹も空いたのでメーヌにご飯を要求しにいきましょう」

「あ、待ってください、ギラさん」

「優しさは罪、必ずしも間違いじゃないのが世の中よね」

「だな、最善の手段が最良の結果を生むとは限らんものだ」


そうしてギラの魔王教育は続いていく。

ギラの語るものはその目で見た世の中の現実なのか。


善行が必ずしも正しいと思うな、それがギラ流の教育である。

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