表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/240

欲しいものと努力

リックに対して魔王としての教育をするギラ。

仲間達もそれに対する本気を感じ取っていた。

少年は魔王となるべく少女に教えを請う。

その心は一般的な認識の魔王とは違う方向へと育っている。


「ギラさん、相変わらず厳しいです」

「この程度で音を上げるのなら魔王になんてなれませんよ」

「でもさ、魔王って結局形がないようなもんなんでしょ?」

「なのです、ギラさんの言う事からはそう感じ取れるのです」


魔王は形のないもの。

それは性善説と性悪説が形作るものなのだろうか。


「…綺麗事を言うのは勝手です、でもそれで何かを成すのは難しいんですよ」

「でもそれが出来る人を僕は立派だと思いますよ」

「綺麗事だろうとそれは理想とかでしょ」

「ギラさんは綺麗事は嫌いなのです?」


ギラの思う魔王はどちらかと言えば性悪説なのだ。

そして一般的な魔王の認識は性善説の場合が多い。


ギラは人間の醜さを知っているからこそ魔王になった。

絶望とは人を変えてしまうものなのだから。


「もしですよ、他人の持つ何かを欲しいと感じたら、どうしますか?」

「僕ならそれに執着はしないかもしれません」

「でもさ、他人を羨ましいって思うって事でしょ?それ」

「はい、分かりやすく言うと嫉妬です」


他人の持つ何かを欲しいと感じたら。

それは欲しいものを手にするためにはどうすればいいのかという事だ。


「欲しいものは待っててもやって来ません、努力するから手に入るんですよ」

「努力するから手に入る…」

「いつかなんて待ってても一生来ない、って事か」

「努力するからこそその欲しいものは手にする事が出来るのですか?」


幸せは歩いてこない、そういう理論である。

待っていても向こうから歩いてくる事は決してないのだ、という。


「ですがその努力が向かう先は様々です、その人を殺して手に入れようとするかもしれない」

「それは…確かにあり得なくはないと思います」

「その選択は間違ってないけど間違ってる、ってところかな」

「でも無理矢理奪っても虚しいだけなのです」


要するに手に入れるための手段はそれだけあるという事だ。

真っ当に努力するだけではないという事でもある。


人とはそうやって場合よっては狂気に走る事もある。

欲しいものをどうやって手に入れるか、そういう話だ。


「だから羨む人ほど狂気に染まりやすい、真っ当に手に入れようとするのは困難です」

「だからこそそれが人との出会いだったり自分に何かの影響を与える事、とか」

「不良が人生の師と呼べる人に出会って立派になったみたいな」

「分かりやすい例えなのです」


羨むだけでは駄目だ。

荒んでいた自分を真っ当にしてくれる恩師に出会えるというのは奇跡なのだから。


「さて、お腹が空いたので何か食べにいきますか」

「あ、待ってください」

「欲しいものは努力するから手に入る、そんなの…」

「ハルミも複雑なのですね」


ギラが見てきた世界。

それは人の心の悪意や醜い欲望などだ。


それでも人を信じようと思ったのはギラの中の良心なのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ