表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/240

魔王と少年の不思議な関係

なんとかリックの治療に成功したギラ。

それからは魔王としての教育を施すべくバドカに滞在しあれこれしている。

仲間達もそれを見守りつつ冒険者ギルドの仕事などもこなしている。

どこか不思議なその関係は周囲にはどう見えるのか。


「あの、ギラさん」

「なんですか、もっと厳しい教育が欲しいですか?」

「それにしてもあの日からリックさんにスパルタしてますわね」

「そうだねぇ、病み上がりなんだから無茶させたら駄目だろうに」


とはいえギラも本気である。

倒れない程度に無茶苦茶をさせているのだ。


「ギラさんは僕を本気で魔王にしようとしてるんですか」

「あたり前田のクラッカーですよ、自分で言ったんですよ?その覚悟はあると」

「だからってねぇ」

「ギラさんが魔王とかはともかくリックさんを魔王にするって」


だが一度言った事には責任を持つのが男だとギラは言う。

リックも言ってしまった以上は本気になってしまっているのだ。


「でも魔王ねぇ、本当だとして魔王って結局なんなのさ」

「お伽話なんかの魔王は異形とか邪悪な能力を持つ存在が一般的ですわよね」

「そうですね、私の知る魔王というのは人の心、そして仮想敵なんだと思いますよ」

「人の心、仮想敵…」


ギラの言う魔王。

それは人の心でありそれを映したものなのだろう。


「本当の魔王というのは異形でも邪悪でもない、人の心の悪意なんですよ」

「人の心が魔王を生み出す、そう言いたいのかい?」

「でも分かる気がします、大地の骨は片方から見たら英雄で反対から見たら魔王です」

「それが人の心というものですのね」


片方からしか見なければそれは魔王に見えるだろう。

だが魔王とは人に恐れられた果ての英雄なのかもしれない。


英雄がその力を恐れられた結果魔王となる。

魔王を倒しても新しい魔王は生まれる、それはそういう事なのかと。


「魔王というのは概念なんだと思います、それが生まれる理由も様々ですよ」

「魔王が生まれる理由…それは概念、ですの?」

「でも分かるね、人々を救った英雄はそれを恐れられ魔王になる、みたいなね」

「結局は力を恐れた人達が作る概念が魔王だと?」


だがギラの言うそれはその目で見たものである。

魔王とは人の心が生み出す架空の悪なのだ。


人は敵を作らなければ己を保てない。

だからこそ都合のいい存在が魔王であり敵国などなのである。


「自分を正当化するために人は様々な仮想敵を作りそれを悪とするのですよ」

「確かに国家、あるいは組織ですらも見えない何かと戦ってる、か」

「それが自己正当化という事ですのね」

「自分を正当化するためには敵が必要ですからね」


結局は人が人である限り争いは永遠になくらない。

それは小さな魔王の見た悲しすぎる現実だ。


「さて、お腹が空いたのでメーヌにご飯を要求しに行きますか」

「結局はいつものギラだね」

「ですわね、でも不思議と…」

「魔王は概念…僕も…」


リックへの教育は続いているようだ。

ギラもそんなリックへ恋愛感情ではない何かを感じている。


師弟関係とも言えるその二人の姿はどこか晴れ晴れとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ