深き森
再生の火竜を再生の炎とするべく森を進むギラ達。
入ってから二日ほど歩いたためあと一日というところか。
その祭壇に到達するまでにリックは平気なのかとも思う。
信じてその炎を得るべく進み続けるのだ。
「あと一日というところですかね」
「なんか時間感覚狂うよ」
「無理もないでしょ、時計なんかないんだから」
「そんなものがなくとも時間は分かりますよ」
ヨモギは時間が分かるらしい。
そういうところは巫女としてこの地で生きてきたからなのか。
「時計もないのに時間が分かるって凄いですっ」
「どうやって時間を知っているんですかね」
「それは秘密ですよ」
「むぅ、なんとも不思議な気分だな」
だが確かに集落でも時計を一切見かけなかった。
それなのに集落の人達は普通に生活をしていたのだ。
現世や文明から隔絶された生活をしていたのはあれだけで伝わる。
つまり独自の生活を確立しているのだ。
「にしても文明から隔絶されてるというのは凄いですね」
「外の世界とか絶対知らないんでしょうね」
「知る必要もないですし知ろうとも思いませんよ」
「その必要自体ないからかな」
知る必要もない、それはこの一族がそういう生活をしてきた事を示す。
遥か昔からその世界、そして文明から隔絶されている。
この地で誰にも知られる事なくひっそりと暮らしてきた。
そんな誰も知らない一族なのだろう。
「そもそもギラさん達がこの地に来たのも500年ぶりぐらいのお客様です」
「500年!?」
「そんな長い間一族の血を守り続けていたのか」
「大したものねぇ」
だが気になる事が一つある。
あの集落に男の姿は見当たらなかった。
それなのにどうやって子孫を残しているのか。
何か特殊な技術でも持っているのか。
「そういえば女しかいないあの集落でどうやって子作りするんですか」
「ギラ様、それ火の玉ストレートですよ」
「簡単ですよ、里に伝わる秘術による体外受精です」
「マジ?そんな事出来ちゃうわけ?」
里に伝わる秘術による体外受精。
だがそれは男が存在しなければ始まらない。
つまり男の精子がどこかに保存されているという事なのか。
謎は深まるばかりである。
「ちなみに男の精子については秘密ですからね」
「あはは、そう言われると気になっちゃいますよねぇ」
「全くですよ、実は里を作った当初は男もいたとかですかね」
「分からんものだな、体外受精はいいとして男の存在が気になる」
恋夜もそれには興味を示す。
男が存在しない里においてそれは何を意味するのか。
「まあ分かりやすく言えばそのための男達の集落も別にあるんです」
「あ、そういう事ですか」
「納得ですねっ」
「女同士で子作りとか妄想が捗るかと思ったんですがね」
ギラも何を言うのか。
そういうところは引きこもりのオタ的な思考である。
「もう少しですよ」
「あ、はい、では急ぎましょうか」
「そうね、日が落ちそうだけど」
「間に合えばそれでいいさ」
そうして祭壇へと急ぐ。
再生の炎はヨモギを焼く事でそれを得られる。
リックを救うまでもう少しである。