三日目の谷
再生の火竜を求めるギラ達。
炎の谷を進み始めてついに三日目。
未だに奥に辿り着く気配もなく、その谷を進む。
だがそれでも確実に進めているのである。
「三日目ですか」
「どれだけ進ませるんだろうねぇ」
「進めているとは思うんですが」
「やはり幻に飲まれているのではなくて?」
ペトラの言う事も尤もだ。
だがギラは幻に飲まれていないと確信していた。
「なんにしてももう少しだと思うんですよね」
「なんでさ、分かるのかい」
「ギラ様ですしね、一応」
「そういうものなのか?」
それでも進み続けるギラ達。
その確信の理由は火竜の持つその力の波である。
それを進むにつれ確実に感じ始めているのだ。
つまりもう少し先へ進めば火竜にご対面だとギラは思う。
「とにかく進みますよ」
「ギラさんはなんであんな自信満々なんですの」
「力とかには敏感ですからねっ」
「そういう事なのか」
そうして谷を奥へと進む。
幻の炎は燃え盛り足元を襲う。
熱こそ感じないが、その炎は確実に触れたものを焼き尽くす。
それはギラの腕が証明していた。
再生は大分進んだもののもう少しというところか。
そういうところは恐れを知らないギラらしさなのだろう。
「にしても熱を感じない炎というのは実に興味深いんだがな」
「恋夜らしいねぇ」
「こういうときでもその好奇心を忘れていないと」
「興味が尽きないというのは素敵だと思いますよ」
興味のある対象には徹底的に入れ込むタイプのギラ。
その反面関心のないものには徹底的にドライにもなれる。
それは以前の大地の骨の件でも分かっている。
関心がないなら相手の事を知ろうなどとは思わないからだ。
「流石に炎の採取というのは無理だな、瓶に入れるのも出来ない」
「仮に入れられたとしても瓶が溶けちまうんじゃないのかね」
「一応ギラ様の手を焼いちゃいましたしねぇ」
「というか瓶に炎を入れるなんて出来るんですの?」
火炎瓶は瓶に直接炎を入れているわけではない。
あれはアルコールなどを染み込ませた布などを瓶に入れ火をつけているのだ。
そういう意味でも恋夜の言う事はぶっちゃけ無理である。
瓶に直接炎を入れるというのは無理なのだ。
「またですか」
「炎の壁ですわね」
「となるとあの声がするのか?」
「火竜さーん」
すると声が聞こえた。
それはあの声だった。
「諦めてはいないようだな」
「当たり前ですよ」
「ギラ様は本気なんですからねっ」
「それであなたが火竜でよろしてくて?」
声の主はその正体を隠す必要もないという。
その声の主こそが再生の火竜そのものらしい。
「その本気には敬意を示そう、我はこの奥で待つ、覚悟を持って来るがいい」
「炎の壁が消えた…」
「この先ですか、ならば行ってあげますよ」
「私としてもその力には興味が尽きない、ぜひとも拝ませてもらうぞ」
そうして消えた壁の先へと進む。
そこに再生の火竜は待っているのか。
谷を進み続けて三日、ようやくの到着か。
再生の火竜とは何者なのか、それにご対面である。
リックを救うため、その火竜の炎に焼かれる覚悟を持ち進む。