炎のその奥へ
再生の火竜を求め谷を進むギラ達。
進む事二日目だがその終わりは未だに見えない。
それでもその力を手に入れるべく谷を奥へと進む。
あとどれぐらい歩くのか、終わりはまだ見えない。
「まだ着かないんですかね」
「二日目ですからねぇ」
「結界石で体力は回復出来てるとはいえ辛いもんだね」
「全くですわ、どれだけ進みますのよ」
ペトラも流石にご立腹である。
だがそれでも進むしかないのだ。
「幻の炎とはいえ触れれば焼かれる、恐ろしい谷だ」
「全くだよ、どうなってんだ」
「あの声の主の力ですかねっ」
「だと思いますけど」
なんにしてもひたすらにその谷を進む。
もはや甘えは許されないのである。
「はぁ、帰ろうにも諦めるわけにはいきませんし」
「ギラ様は本気なんですよ」
「その気持ちは伝わる、あのギラが本気で誰かを助けようとしてるんだ」
「今まで他人に無関心だったあのギラがな」
だからこそ進むのだ。
その先にあるものは救うための力。
初めて誰かを救いたいと思った。
無気力で冷酷な魔王にも心変わりがあったのか。
なんにしてもギラはそれだけリックに目をつけている。
それが彼を救いたいという原動力なのだろう。
「にしてもどんだけ歩くんだ」
「丸々二日間歩きっぱなしですね」
「そろそろ三日目突入ですのね」
「流石にしんどいな」
だがその足は休まない。
ギラの本気がそれだけ背中から伝わってくる。
メーヌと翠はそんな変わりゆくギラの背中に何を感じているのか。
変わっても自分達はギラに従い続ける、それだけであると。
「でもギラ様も変わりましたよね」
「ですねっ、ヒキニートだったギラ様はもういません」
「誰がヒキニートですか」
「ははっ、そりゃいいねぇ」
ソウも茶化してくる。
こういうやり取りが出来るうちは安心だと思う。
そうして進んでいくと再び炎の壁が行く手を遮る。
そしてあの声も再び聞こえる。
「あの程度では退かぬか」
「当然ですよ、その顔を拝むまでは体を焼かれようとも死んでやりません」
「ギラ様の宣戦布告ですね」
「喧嘩腰なのはギラスタイルなのかね」
その声は面白そうに笑う。
そして言う、ならば来い、そのさらに先で我は待つと。
「それで、あなたがその火竜さんでいいんですか?」
「ふふ、それは来れば分かるぞ、小娘ども」
「これでもいい大人なんだがねぇ」
「別によろしいのではなくて?」
そうして声は消えた。
それと同時に炎の壁も消え去った。
「誘っていますね、行ってやろうじゃありませんか」
「メーヌも燃えますよ!ふぉいやー!」
「やれやれ、ならどこまでもついていってやるさ」
「ええ、この体が果てるまで」
そうして谷をさらに進む。
歩き続けてその時間は夕暮れになっていた。
「夜になったら休むよ」
「了解しました」
「流石に夜の谷は危険すぎるからな」
「あと何日歩くのやら」
そうしてそれからしばらく歩き夜になる。
夜になったら結界石で休息を取る。
そして再生の火竜を求める道は続く。
果てしない炎の谷をひたすらに進む。
誰かを助けたいと初めて願ったその本気に応えるために。