幻竜の炎谷
リックを助けるべくその手段を求めるギラ達。
一部の仲間を残し本人達は再生の火竜を求める。
館長に聞いたその場所は誰も知らないこの世界のどこかにある地。
再生の火竜とその契を結ぶべくギラ達は進む。
「凄い土地ですね」
「なんなんだい、ここは」
「本当にこの世界にある場所とは思えませんわ」
「感覚が狂うな、なんだと言うんだ」
そこは今までに見た事のない秘境中の秘境。
過去に出向いた秘境とは比べ物にならない過酷な地である。
「少しでも油断したら死にそうだ、本当に」
「全くだ、手足の一つぐらい覚悟しておくか」
「そんな覚悟をしなくちゃならないぐらいですか」
「しんどいですねっ」
あのソウですら弱音を吐くような過酷な地。
それこそ本当に手足の一つぐらい覚悟しなくてはならないのか。
「それにしても再生の火竜ってなんなんですかね」
「話からして火竜単体じゃ再生の力はないんじゃないのか?」
「つまり巫女を焼く事で火竜は再生の力を得る、ですの?」
「巫女を焼くっていうのが引っかかりますよね、人を生贄にする、とか?」
救う手段の中にあった巫女を焼くというフレーズ。
その言葉から察するに火竜の炎に再生の力を付加する役割のある人の事か。
「そんな事があるとしたら、火竜に焼かれるために生まれる巫女って事か?」
「でも火竜自体それこそごく限られた人しか知りませんのに?」
「それが必要とされるときに備えて、とかですかね」
「つまりそれに備え子孫を常に残し続ける一族がある、とでも言うのか」
結局詳細は見えないままである。
だがそれがそんな一族の運命だと考えると不思議なものである。
「結局それだけじゃ話が見えませんよ」
「ですわね、それにしてもこれだけ炎があるのに暑くありませんわ」
「そうだな、どう見ても煉獄の釜とでも言うような炎の谷なのに」
「でも、えいっ、きちんと燃えますよ」
メーヌが適当な石を谷に投げ入れると一瞬で灰になる。
だがその炎からは熱を感じないという不思議な谷でもある。
煉獄とも言えるような炎の谷。
だがその炎から熱は一切感じない。
それどころか谷を吹き抜ける風で少し冷えるぐらいだ。
それなのにその風によってその炎はさらに強く燃える。
「まさかこの炎自体幻だとでも言うのか?」
「幻なのに燃えるんですね、すごーい」
「こんなときにふざけられても」
「でも幻でも本物、そんなからくりでもありそうですわね」
幻でも本物、つまり幻炎とでも言うべきか。
その炎も火竜の力なのだろうか。
謎は尽きないままである。
それでもギラ達はその谷を進む。
再生の火竜はこの谷の深いところにいるという。
先は長くなりそうだ。
「まだまだ先は長くなりそうですね、休める場所とかあるといいですけど」
「それなら館長さんからこれを預かってます、てれれれん、結界石~」
「それを使えば休める場所を確保出来るんですの?」
「なら平気かね、少しでも先に進むよ」
そうして谷を先へと進んでいく。
不思議な炎のその谷は容赦なく牙を剥く。
再生の火竜に出会うまでその歩みは止められない。