魔王の怒り
戦いに勝利はしたギラ達。
だが最後の最後でリックがその一撃に倒れてしまう。
それを見たギラの顔はとても青ざめていた。
そしてその憎悪が爆発する。
「この女…貴様だけは殺しても生ぬるい…」
「だからなんだ!コントロールなどとっくに失っている!それだけだ!」
「ギラ様!今はそれより!」
「リックを何とかするんだ!このままじゃ本当に死ぬぞ!」
ギラは女に対して吐き捨てる。
そして死にたければ勝手に死ねと言い残しその場から去った。
「リックの容態はどうだい」
「とても深刻です、このままでは本当に」
「何か手はないのか?」
「治癒魔法が効かないならお手上げなんじゃないの?」
それなら例の館長に訊けば何か分かるかもしれない。
メーヌ達にリックを見ていてもらい数人で館長室へ向かう。
「そうですか、そんな事が」
「何か助ける手段はないんですか」
「治癒魔法が効かん、見た感じでは風穴が空いているわけでもないぞ」
「何か手段はないのかしら」
館長の話では江似愚魔は以前話した口外出来ない秘宝を元に作られているという。
つまりそれの力による侵食が進んでいる、という事らしい。
「その侵食を止められるものは何かないのか」
「…あるにはあります、ですが命懸けですよ?」
「なんだろうと私は行きます、命などとっくの昔に捨ててますから」
「ギラ…」
その覚悟に館長は治療法を教えてくれた。
だがそれは理解を遥かに超えた手段でもある。
「再生の火竜と契約し再生の巫女を焼き再生の炎を手に入れよ…何だこれは…」
「そのままですよ、その再生の炎が助ける手段です」
「無茶苦茶すぎるわ、竜だけならともかく巫女を焼く?何なのよそれ」
「いいでしょう、私は行きます、彼は私にとっての初めての人ですから」
館長はその覚悟の強さを察した。
そして再生の火竜が住むと言われる秘境の地を教えてくれる。
「ここがその再生の火竜が住む地です、手に入れたら巫女の居場所をお教えします」
「分かりました」
「今回は全員で行くのは無理そうだな、精鋭で行かねばならんか」
「そうね、リックを見てる人が必要だし」
館長の話では一日で帰れるような甘い場所ではないという。
文字通りの命懸けである。
館長に礼を言いみんなの下に戻る。
そして事情を説明する。
「ならメーヌはついていきます、ソルバードは必要ですから」
「私もですっ、強い魔物相手なら役に立てますっ」
「他には?」
「少なくとも四人ぐらいは残ってもらうが」
その結果ペトラ、ソウ、恋夜の三人が一緒に来る事になった。
ハルミ、テュトス、モレーア、エレネがお留守番だ。
「では明日にでもすぐに飛び立ちます、頼みますよ」
「お任せあれ!」
「お任せですっ」
「この三人はまさにという感じですわね」
そうして館長に教えてもらった再生の火竜が住む地へと向かう。
そこは今までとは比べ物にならないほどの過酷な地。
それでもリックを助けるべくその命を投げ打つのである。
ギラが初めて誰かのためにここまで本気になったのだから。
だが本当に過酷な旅は想像以上となる。